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スカウト後 竜生


「はあっ⁈」


春馬たちは、修学旅行だが、その知らせは、現代社会には、もうかかせないスマホという超便利なツールを通して、すぐに福岡から、南九州の片田舎にある中学を騒がせた。


後輩たちがSNSやメッセージしてきたからだ。部活絡みや兄弟やたくさんのつながりに、一気に広まってた。


ー俺のスマホは、静かだけど。


興奮した友人たちに、


「神城がお前の弟と、つきあってるって、本当か?」


ってかこまれて、きかれた俺の第一声は、それだった。というか、俺じゃなくても、春馬を知ってたら、誰だって、そうなるんじゃないか?


「春馬が誰と?」


アイツに彼女?まて?アイツに?


ー俺に血のつながりがある弟は、たぶんひとりだよな?


うちの両親どっちか再婚だったか?なんて、あほなことすら、一瞬、頭に思い浮かぶ。そんな俺をよそに机を取り囲んだヤツらは口々に言う。


「だから、神城だよ?神城本人が博多駅でスカウトされて、お前の弟が彼氏だって、宣言したらしい」


「ーその説明で、どうやって、俺に状況を理解しろって、言うんだ?」


それでも、興奮して話す友人たちの話をまとめると、内容がどうにか、わかった。


どうやら、神城が博多駅でスカウトされた時に、春馬を口実に断わろとしたようだ。


「ーよりによって、春馬かよ?最悪な選択をしたな?神城」


俺は小声でぼやく。スカウト断るなら、赤木たちはまずいが、黄原がいたよな?


いや?まてよ?春馬が、いちばん、あってるのか?春馬なら、反論しないよなあ?そもそも春馬の視界に神城は、入ってー、たか?


「ラッシー、か?」


俺の脳裏に、はじめて自転車を練習していたガキのころ以来、二回もスポーツサイクルで、転びかけた日が思い浮かんだ。


たしかに,あの日、神城と春馬に、つながりはあったよな?たしか、あのとき、神城は,春馬を、


ーストーカー。


って言いながら、


ーありがとう。


そう笑ってた。


その神城のはじめてみた微笑みを思い出して、俺の胸がなんかよくわからない感情になる。けど、あのときの神城の笑顔を、その言葉をむけられた春馬は、見なかったはずだ。


ー俺だけ、が、みた笑顔だ。


だけど、あの時、神城を笑わせたのは、春馬だった。俺じゃない、春馬だった。


「いま学校中が大騒ぎだぞ?神城に彼氏がいて、しかも、お前じゃなくて、陰キャラの弟だって」


「春馬は、陰キャラじゃねーよ?」


反射的にいい返す。ちなみに俺は人気はあるらしいが、陽キャラ扱いはされてない。じぃちゃんみたいに、明るい性格はしてない。そういうならじぃちゃんは、自然界のあかりな気もする。


じぃちゃんの陽光につつまれていた、あの頃の春馬は、あんまり話さないけど、目をキラキラさせて、無邪気に笑ってたよな?俺や黄原には、よくわからない遊びに夢中になってたけど。


もともと春馬は、無口なだけだ。そもそも陰キャラっていう時点で、むしろ騒いでる連中より、わけわかんねー存在感は、あるんじゃないか?


ー少なくとも神城には、ほかのヤツらより、春馬の方が存在感があったんだ。


あの笑顔は、春馬が絡んでた。俺じゃなくて、春馬に笑ってたんだ。飴玉だって春馬がもらってた。俺はぎゅっと手を握る。


あの時みた神城は、すごくきれいで、うれしそうで、ただ優しい表情で笑ってた。


春馬は気づいてなかったけど、ほんとうに神城は、笑ってたんだ。


ー俺じゃなく、春馬が笑わせてたんだ。


春馬はラッシーって、言ってたけど。ラッシーは、ストーカーしないぞ?


あの笑顔は,間違いなく、


ー春馬が相手だった。


「つきあってるかは、知らないけど、ふたりが知り合いだったのは、知ってる」


春馬を神城はストーカー扱いだったけど、春馬にも神城にも、その意識は、なかったよな?


ストーカーに礼を言うのか?


俺は女子から、たまにつきまとわれる。相手は集団だから、たち悪いし、いい子だからとりあえずつきあって、とも集団で圧がくる時もある。


とりあえずっなんだよ?


そんなことで、俺の自由が奪われるなんかまっびらだ。そもそも他人通して圧をかけるヤツらなんかに、好印象を抱くわけない。


神城をいじめてたヤツらは、そいつらだけど。残念ながらだったな?村上ちがいだ、ばーか?


って思うけど、


ー俺は知ってたのに、動かなかった。俺が絡んでたのは,たしかだけど、仕方ないだろ?


好きの押し売りだぞ?アイツら。逆にいうと、ヤツらは、自分が好きなら、なんでも、アリ、らしい。


ーそんなわけあるか?


好きなら話をきいてくれよ?俺がつきあわないって,そいつらに言ったら、勝手に神城が俺を振ったことになってた。わけわかんねー、デマが真実化してた。


俺に怒りをぶつけないで、ぶつけられても誰も不思議に思わない相手に怒りを身勝手にぶつけてた。アイツらは神城なら誰もが納得するって勘違いしてた。


いまでもぞっとする。


ーアイツらにとって、俺はなんなんだ?人に自慢できるアイテムか?


俺はべつに、お前らのためにサッカーや勉強をやってるわけじゃない。俺が上手くなりたいし、春馬に負けたら悔しかったから、勉強してる。


勉強については、春馬がたぶん興味もったら、負ける。あいつは、俺の宿題の答えだけを、答えてた。負けず嫌いの俺は何回か殴ってた。


だって、アイツはいきなり答えだけ、を言う。過程は言わない。クイズみたいに答えてた。その瞬間だけ、その問題にだけ、ふと興味がでた、それだけだったは、わかってる。


俺が解いてたのをみて、難しくて俺はつまずくのに、アイツは答えてた。


ー答えて、戸惑ってた。俺に殴られて泣いてた。思いついただけだ。お兄ちゃんが困ってたから考えたんだ。


そう泣いてた。俺だって考えたぞ?答えしかわかんないなら、解いてないだろ?


俺の宿題の邪魔をするな、自分の宿題をやりなさい。母親が毎回春馬を怒ってた。春馬がいまは勉強しないのは、たぶん興味がないだけだ。


ラッシーよりはやく走る春馬は、ふだんは走らない。あの日は走ってたよな。


けど、春馬と神城が?


ありえねー?


いや、


ありえる?


ーどっちだ?


俺はただ騒ぐクラスメイトたちの声をききながら、


「きれいだったよな。神城」


やさしい笑顔を思い出して、


ーあの笑顔は、春馬が作った。


そうむなしかった。


ー俺じゃない。春馬だ。


春馬、だ。


ー俺じゃない、んだ。







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