スカウト後 春馬 ①
「一応、もう一回きくけど、春馬は神城とつきあうのか?」
黄原がきいてきた。
「ー彼氏、だぞ?」
内心、つきあうってなんだ?黄原のゲームや趣味にたまにつきあう、あれか?
そういういみだと、彼氏ってなんだ?柴原にきいたらわかるよな?
柴原は赤木とカップルだったよな?俺は柴原と赤木を思い出して、
ームリだ。あれは素直にムリ。
そもそもさっきの彼氏発言はあっても、神城と俺は相変わらず離れた位置にいる。柴原がうまく話をまわしてるみたいだ。
そもそもなんで黄原じゃダメだったんだ?まあ、あの時に目があったのは、俺だけど。
ーだから俺って、短気すぎないか?
そもそも、もう神城は、こたえてるよな?スカウトに。
ー彼氏がいてもいいのなら。
さっき加納さんが言ったように、もう神城は返事をしてる。神城をあの人なら守れるだろう。
ー守れる力をもつ大人なんだろうな。
俺はバンバンにはれあがったじぃちゃんの手しか握ってなかった。なにひとつ、じぃちゃんにかえせなかった。家に帰ってラッシーと穴を掘って、ただ、願うしかなかった。
ーあれは俺の願いだったのかな?
いまもよくわからないけど、神城のスカウトは、たしかに俺と柴原が仕掛けたゲームだ。
神さまのサイコロ。
たぶん、人生には、たくさん、サイコロがあるんだろう。たくさんの世界があるんだろう。その一個ずつを、流されながらも、結局は、自分の手でつかむんだろう。
いつだって、選択を自分の意思でする。それが大人になることなんだろうか?
ー俺には、わからないけど。柴原は、
明日菜が、神さまのサイコロをとめたよ?
そう笑ったよなあ。柴原が言うなら、とめたのか?神城。だけど、なにを?サイコロをふらないゲームか?
まあ、野球にサイコロはないか?、いや、ベース?けど、柴原は、サッカーだって言ってたよなあ。ゴールポストは四角いけど、正方形じゃないぞ?サッカーボールは、球体だし?
ー?
「おい,春馬、きいてるか?」
黄原が怪訝そうに俺に言う。俺は黄原をみる。もちろん、きいては,いる。けど、
「俺は神城明日菜の彼氏だ」
もう一回そう言った。
「いつから?」
「ーさっき?」
たぶん、さっきだ。黄原がさらにあきれてる。
「お前な、少しは反論しろよ?」
「反論したら、神城がスカウトされない」
それじゃあ、俺と柴原の修学旅行の意味がない。言葉にはしなかったけど、
「柴原が言ってた神様のサイコロって、神城がスカウトされることかよ」
黄原がまたあきれて、柴原をみる。
「おまえら、なにやってんだ?」
「俺は神城の彼氏だ」
「彼氏なら,手を振ってかえせよ?なに、先輩相手みたいに頭軽く下げてるをだ?」
「なんで手をふるんだよ?いまから、集合場所まで一緒にいくぞ?」
これ以上、柴原に迷惑かけるのどうなんだ?そういえばー。
「黄原は行きたい場所なかったのか?ラーメンやアイドルとか?」
赤木たちわりと最初から自由だったよなあ?班の異世界人も。マジメにしおり通りは、黄原と神城か?いや神城もクレープ食いに行ってたよなあ?
ー誰も守ってなくね?しおり。
赤木の修学旅行って、どう思い出になんのかなあ?神城は間違いなく、スカウトの思い出だろうけど。
ーまさかの貰い事故だよなあ。神城、短気すぎるだろ?
どう考えても、俺より黄原がいい男だ。神城が笑ってるの見たことないぞ?
俺が梅ヶ枝餅食えなかったのに。食えなかったのは、俺で神城じゃないよなあ?
黄原は食えたぞ?黄原はいつやつだぞ?将来もずーっと真面目に考えてる。俺はさっぱりわかんねーし?
チラッと視界に戸惑いながら、柴原と話してる神城をみる。あの様子じゃ夏までだよな?
「…真夏の屋上は、避けられる、か」
今年の夏もいちばん嫌なニュースをきくだろう。また暑い夏がやってくる。
ーけど、いまなら、そばで、守れる。
かも?




