真央 ①
ーまちがえた、かなあ?
素直に、村上と明日菜をみて、私は思うけど、
ーもう、いまさらだし?
ー手遅れだし?
ームリだし?
ーむり、だよね?
ぎゅっと明日菜の手を握る。明日菜は不思議そうに、私を見てきたけど。
村上を見るように、私をみない。
ただキレイな黒い瞳がそのまま私をうすつ。
ーカメラみたい。
ありのままを、録画していく、ライブ映像みたいに、明日菜のキレイな黒い瞳に私がうつる。
明日菜は映してるだけ。
けど、その瞳が村上を追う。その瞬間だけは、少しぶれてる。
手ブレ修正はどこまで補正きくのかなあ?
たまに、火事現場や事故、いろんな災害で逃げることより、スマホに夢中になってる映像を見るけど、余裕ある場所は、まあ、大切な記録だなあ?だけど、
ーちゃんと前向いて、にげなよ?カメラ越しだと距離感くるうし、
いまは監視カメラたくさんあるから、無人にまかせれば?
って思うけど。
まあ、あれは、まだわかるけど。
いちばん、わからないのは、火事だ。
ー中で誰かが亡くなったかもしれないのに、よく自分のスマホで、撮りたいとおもうなあ。
だって、亡くなった人いるかも?
事故現場もそうだなあ。
ーみんな怖くないのかな?
モラルより、なにより、いちばんビックリしてる。
し、私は、嫌だと素直に思う。スマホにそんな映像いらない。
私は怯えちゃうけど、まあ、さっきの赤木タイプは、気にしないんだろう。
立派な盗撮だし、デリートしたけど。おかげで、おもしろいシーンを私のスマホは手に入れたけど。
けどさ?
ーやっぱり、失敗したかなあ。
明日菜の視線が、ずーっと村上を追ってる。
村上は、ずーっと、
ーマイペースに、村上だ。
ただ、たまに明日菜の視線に気づいて、ムスッてしてる。
悔しげにポケットさわるから、アレは、もはや梅ヶ枝餅のうらみだよね?
ー学校イチの美少女に対して、花より団子らしい。
まあ、それが村上だし?
ー梅ヶ枝餅よりは、存在を認識したらしい。
村上はともかく、明日菜は、どうだろ?
ー私は、どうしたいんだろ?
いまさら、だよね?
そう自分自身に、言いきかせてみる。
きっと、明日菜の記憶に、私はいないまま、明日菜は、東京にいく。村上も微かに引っかかる記憶くらい?
ーそれでいいのかな?
間違えてた?
って、思うけど。
ーもう、どうしょうもないよ。
私と村上の結論は変わらない。いま、この瞬間だって、明日菜は、明日菜を知らない観光客から、スマホで録画されてる。
外国人のまわすビデオカメラも、明日菜がズームされてる。
から、
ー肖像権。って、あるよね?
強力なプロテクトがいる。
そう思うけど、明日菜の瞳がチラチラ村上を追うから、
ー間違えた、かなあ?
私は、ひとりため息をついていた。




