二日目 春馬 3
ー2回目だぞ?
俺は、さすがに、不機嫌になる。
だって、どう考えても、
ー俺は、無罪だ。
さすがに、神城って、どうよ?
ビックリして、食ってた梅ヶ枝餅落としたぞ?
落とした自覚あるから、拾わないといけないし、アリになんか悪いな?だけど。
おかげで制服のズボンのポケットが、ティッシュでつつんだ梅ヶ枝餅のせいで、
ー生温かい。
微妙な保温だぞ?俺、和菓子好きなのに。
腑に落ちない。しかも、また教師から睨まれて、さすがに黄原と柴原が誤解解いてくれたけど。
ー俺をにらんでくる神城って、どうよ?
いいたろ、羽虫くらい。カメムシじゃないし?毛虫でもないし?
あれたぶん害ないし?
ーせっかくの髪型、ほどかなくてもいいだろ?
羽虫くらいなんだよ?
指摘したくらいでギャアギャアかよ?
ー言わなければ、よかったのか?
そうすれば、平和に梅ヶ枝餅もいまごろ、俺の胃の中か?
羽虫は、どっか飛んで行ったけどさ。神城は髪型を変えてしまった。
ーどうすんだよ?
チラッと神城の髪を櫛でといてる柴原に目をやる。柴原は、
「明日菜、似合ってたのにほどいちゃうの?」
って言うけど、
「だってまた変な虫きたら嫌だもん」
神城は言い切った。
し、
だから、なんで俺をにらんでくるんだよ?
梅ヶ枝餅はちゃんと拾ったぞ?
「髪のリボンが悪いって、村上くんが言ったし」
あっ、そっちか?
…そういえば、原因か?俺?
羽虫くらいで涙目になった神城に、たしかに言ったよなあ?
「白でも黒でも、目立つなら、色あんまり関係なく、よってくるんだな?神城に虫って」
…神城って、すげーだったけど。
だって、無視できないから、目立つんだろ?
虫すら、見逃さない?粘着剤?
ハエトリガミって、むかしきいたような?
あれ、天井からガムテープでいけるのか?いや、両面テープか?
とうめいだよな?両面テープ。
けど、じいちゃんが俺に見せてくれたやつは、たしか、
ー白?
白は虫がよってくるよなあ?虫取り網しろだよなあ?
ーみどりだっけ?
網目しか意識したことなかったな。
わりと水陸空万能な虫取りあみがある。
ハエは、運がいいと手で捕まえるけどな。そういえば、ゴキブリホイホイ見なくなったなあ。
あんのかな?
ー神城は、どんなトラップなら、捕獲できるんだ?
俺や柴原は、トラップ自体に気づかないかも?というか、失敗したしなあ?
神城をさらに、可愛くして、目立たせるつもりが、俺でパーだな?
けど、
ー神城、天敵みたいに、睨んでくるぞ?
マジで、なんでだよ?どう考えても、俺が被害者だろ?
ーカメムシには、たしか、瞬間的に、凍らすタイプの殺虫剤?だったよなあ?
刺激しないなら、あの変なにおいださないしな。あれ、独特だよなあ。
神城、そんなに、虫が嫌いならいるかなあ?カメムシのシーズンっていつだったかな?
ー凍らすタイプの殺虫剤。
、、、いま、俺が凍りつきそう。
違うか?蛇に睨まれたカエルだけど、カエルの大きさによっては、逆だしな?
マジで、天敵かよ?
どっちも口に入るなら、なんでも食いそうだよなあ。
ー神城がドックフードくうの?
俺がカエルなら、神城はたぶん蛇?
ー蛇って何食うんだ?
ネズミ食うよな?
あの日、ラッシーと掘った穴でくるくるまわってたネズミ花火、
ーあのネズミを?
神城はくって、きれいな花火に、かえるのかな?
かえる力があるんだろうか?
ーあの変な味のキャンディを、ラッシーにやるやつが?
神城がキャンディー食うとこは、想像つくけど、
ーネズミもカエルもドックフードも、あんまり想像できないぞ?
となりの芝生なら、そいつら、いるだろうな。
犬も蛇もカエルもいそうだな?芝生。
「明日菜、可愛かったよ?ね?似合ってたよね?村上?」
芝生が、必死に言ってるけど、
「さあ?」
「村上⁈」
だって、はじめて見たから、よくわからない。違う髪型とはわかるし、
「ー虫にも異色?」
「それを言うなら孫にも衣装だろ?」
黄原があきれるけど、
「いや、孫はー」
「ー私、招き猫じゃないよ?」
…えっ?
俺はビックリして、神城をみるけど、やっぱりにらんでくる。
なんで、そんなににらむんだ?いまの時間、逆光には、ならないよなあ?
それに、なんでいま招き猫でたんだ?たしかに孫の手なら、猫の手?
猫の手なら、
ー招き猫?
だったけど。
柴原が驚いた顔で神城をみてる。異世界からきたモンスターすら、驚くなら、
ー超能力か?
そういえば、あれ、ハンドパワーだよな?
…蛇にハンドねえけど、確か体温センサーあったよな?
ネズミとかを捕食するためのセンサー。
ーネズミ、かあ。
ラッシーと掘ったあの穴で、くるくるまわってたネズミ。
さっきみた神城と空。
そういえば、ネズミは人間より、先に宇宙行ったよなあ?
たしか、イヌ、ラット、マウス。
だったか?
イヌはともかく、ラットはドブネズミ。 マウスはハツカネズミ。
ードブネズミ、でかいな。
けど、人間の脳の解明にすごい発見をもたらせてくれてる。
それまでの考えをあれもくつがえした、例か?
けど、あれには、たぶんクレームないよなあ。ただの大発見ですむ話か?
ー大発見かあ。
相変わらず、意味不明に俺を不機嫌に睨みつけてくる神城をみながら、俺は小さく息をはきだした。
ー大発見、って、思うよな?
赤木たちがお守りを買って戻ってくるのが視界に入る。
柴原が少し目線をおとした。
「ー時間、かな?」
俺はプロトレックをみた。
山じゃないけど、ちょうどその方角をさした時計の秒針と、デジタルが、
ーゼロ。
を、カウントしていた。




