二日目 春馬 に
ほんとうにさ?ふとみた神城は、あのバットで、ひとり素振りをしていた日に、遠目に見えただけなのに、
ー寒そうで。
けど、あの日と違って、いまは、目の前にいる。
手を伸ばしたら、とどくよな?しかも、俺の手には、いまできたてホヤホヤの、
ー梅ヶ枝餅がある。
知ってるか?できたては、あついんだ。
専用の鉄板で、また焼くから、あついんだ。
そもそも正式には、この参道で売らないと、梅ヶ枝餅じゃないらしい。
噂なのか、真実かは、調べてないから、わからないけど。
似たような餅が、世の中に、たくさんあるしなあ?
それより興味があるのは、菅原道真って、甘いもの好きなのかなあ?
けど餅には神仏系のなんなあったよなあ。腹一杯に簡単になるけど、年齢だけじゃなく要注意。マジで喉つまる。
けど、うまい。
たしかに、試験勉強や受験勉強してると、兄貴はチョコレートをたべる。
ふだんは、あまり食べてないけど、糖分は、頭にいいんだって、兄貴はいう?いや、疲れにいいのか?
ただ、和菓子は、洋菓子とは、また違う甘さで、こんなふうに熱がある。あたたかいんだ。
たぶん、口にいきなりいれたら、速攻はきだすか、水飲む羽目にはなるけど。
けど、凍えるより、マシだろ?
だから、つい、頬に梅ヶ枝餅をあてたら、神城のやつ、悲鳴をあげて振り払うから、野球部のおれは、反射的におちる梅ヶ枝餅をキャッチして、
ふと見上げたら、神城がいた。
はじめて、直近にみる神城は、へんてこな髪型をしていたけど、
黒髪に、太陽の光が反射したのに、
ーああ、神城だ。
泣いてない。
ビックリはしてるけど、
あの日みた白い煙みたいな、薄い雲の隙間から、空がのぞいていた。
あの日、ラッシーとほった穴で、くるくるまわるネズミ花火。
真っ白な煙がただ、くやしくて、さむくて。
けど、
ビックリした神城が俺を見下ろして、
けど、
変な髪型の神城の髪越しに、
ああ、
ー太陽が、空を照らす。
ー空、色だ。
そんなことを思いながら、砂ついてないか、梅ヶ枝餅をみる。一応、キャッチしたはず?
「悪い、そんなに、あつかったか?柴原ー、じゃないな?おつれさん?」
神城さん、とはいいづらくて、柴原を出して、誤魔化す。そうしたら、すぐ声がした。
「私は、そんな名前じゃないです」
あれ?なんか怒ってないか?なんでだ?梅ヶ枝餅は、汚れてないぞ?
もし汚れたって、俺と黄原、もしくは、柴原あたりがくうぞ?
そう思って、もう一度、しゃがんだまま、上をむいたら、やっぱり、神城がヘンテコな髪型で、俺を見下ろしていた。
しかもなんか、やっぱり、怒ってるか?
意志が強い瞳がはっきりと、俺をうつす。その頭を飾るヘンテコな髪型は、うちの異世界人や柴原はしてない。
もちろん、じいちゃんも、俺より髪が長い兄貴も、親父もしてないけど。
神城の綺麗な髪が、お団子みたいで、
ー俺の手に、いまあるのは、梅ヶ枝餅。
まんまるく結えた神城の髪が空にうつる。まるで、月だ。
月は、明るいから、昼も視認できることが多い。
月でウサギが餅つきしてる。よくガキのころに、異世界人が俺に言って、じいちゃんもふざけて悪ノリして、宇宙服をきたウサギを書いてくれた。
兄貴は冷めた目で、じいちゃんをみていて、俺はそんなでかいウサギか?とビックリした。
月は、たぶん食べれる資源が少ないから、デカい餅がいるんだろう。
餅は、草食でも食うだろうし?そんだけ、デカいウサギなら、食うよなあ?
親父がもらってきたミザールで、じつはビックリした事実。
ー月に、ウサギいない。
サンタクロースより、ショックだった。
ただ、あのミザールや、100きんの手作り望遠を、覗いてて思うんだ。
月は明るいと、実は星の観察には邪魔になる。皆既月食なんかだとわかりやすくなるけど、月が隠れて、はじめてみえる星がある。
たくさんある。それは、百均の手作り望遠鏡でも、あまり変わらない。
あの日、ラッシーと彫った土に、ただネズミ花火かくるくるまわって、最期に音をたて、しろく煙が空にのぼった。
ただ、願ってた。あの日の煙は、どこまでが、限界だったんだろう?
神城のヘンテコなお団子みたいな月の後ろにひろがる、
ー空、
ー宇宙、
に、きっと、いま少し怒ってる?らしい神城は、きっともどるんだろ?
日本最古の物語。
竹取物語、なんかより、もっと、高い場所に。遠くに。
俺の半世紀前のミザールでは、手に届かない場所に。
けど、いまは、まだ午前中で、お団子越しにみえる光景は、
「あっ、空色だ」
って素直に口にでる。だって、晴れてきた。
ら、
「〜○☆△ッ?」
神城がなんかあかい顔で、少し涙目で焦るから、
ヘェ〜、神城ってこんな顔するんだ。
しかも、このアングルって、いま見てるの俺だけだよな?
ミザールないけど、つい口に出た。
「絶景だな?」
きっといま、俺が神城を、独占だぞ?
そう思ったけど、まあ、いま、だよな?
なんか怒ってるみたいだけど、凍えてるより、絶対にいいからさ?
しゃがんだまま、
「はい、頼まれた梅ヶ枝餅」
小さなお餅を差し出したら、
「きゃあああ!」
神城から盛大に悲鳴がでた。
ー教師に俺が、なぜかこっぴどく叱られた。
なんで柴原じゃないんだ?俺が一体、何をした⁈
「ーおまえ、みたの?」
教師に解放されて、赤木と話していた黄原が、俺にきいてきた。
ウンザリした。さんざん怒られたからだ。
「神城さんなら、視界に入ってきやがる」
「きやがるって。おまえ、天敵かよ?」
「さっき、なった」
すげー悲鳴で至近距離だぞ?耳がキンキンしてるぞ?
ぶすくれて、境内脇のベンチで、俺はキャッチした梅ヶ枝餅を一人食う。
甘さが少し怒りをしずめてくれたけど。というか、腑に落ちないだけで、怒りはしてないけど。
ーそんなに怖いなら、参加させない選択肢があったのか?
地面には食べかすが落ちていて、1匹、また1匹と小さなったアリがどこからともなく現れてくる。
仲間が見つけた食糧を、ただ、ひたすら、分け合いきざみ、運んでいく。
ー巣はどこだろ?
アリの速さは割とはやい。というか、虫って、はやいんだよなあ。
あっという間に、運んでく。
もぐもぐ食べながら、俺はスマホをとりだす。
俺が教師に説教受けてる間、班の奴らは、さきに参拝に行っていた。一応、責任を感じた神城だけ、躊躇う仕草を見せたけど、柴原や赤木が押し切って連れて行った。
俺に注意したやつ、女癖悪い教師だしな。火に油。むしろだれもいなければ、解放されるのもはやい。
「ほら、竜生先輩のお守り」
俺の代わりに黄原が異世界人から、頼まれた兄貴用の学業お守りを、買ってきてくれた。
兄貴は、いらないって言ったけど、異世界人が強引に金を俺に握らせた。
ー母さんが、それで落ちつくならいいよ。
ため息を兄貴はついていた。兄貴に祈願いるのかなあ?
境内にあるたくさんの願いを見渡してみる。
「藁にもすがるおもいだよ?自由だよ?」
少なくても、何かに、なれるんじゃないの?っていつのまに柴原がいた。
後ろに隠れてるようにしながら、けど、
ーなんで、睨んでくるんだよ?
俺はスマホでアリの行列をとりながら、チラッと神城をみる。
神城は俺のと目があいそうになると、すぐにそらした。
神業じゃね?
まあ、神業身につくだろうな?いまも境内のあちこちから、視線が集まってくる。
「明日菜?さっき紹介忘れたけど、今日、一緒に自由行動する村上春馬だよ?」
「なんで、呼び捨て?はじめまして?村上くん。神城明日菜です」
小さく神城が息をはきだして、柴原の背後から一歩でた。
まっすぐな黒いきれいな瞳が俺を見たけど、
「ーあっ、虫」
つい、神城のヘンテコな髪型についた羽虫を指差し、
ー本日、2回目の悲鳴にビビってた、俺。
村上春馬、13歳。神城明日菜と、はじめて、会話した日。




