2日 明日菜2
柴原さんに手をひかれて、他の子たちと一緒にべつのクラスが集まる場所にいく。
周囲の視線が私たち、
ーううん、私に集まる。
でも、私には周囲の視線を気にする余裕がない。
だって、心臓がさっきから、すごい勢いでなってる。
柴原さんと、つないだ手も少し震えていた。
ーえっ?私、いま怯えてる?
そう思いついた時、柴原さんが振り返って笑った。
「だいじょうぶだよ?明日菜。赤木はともかく、村上だから」
安心しなよ?
そういうけど、
「ー赤木くん、柴原さんの彼氏だよね?」
「まあ、いまのとこ?」
柴原さんは首を傾げてる。たまに思うけど、柴原さんは、ほんとうに赤木くんが好きなのかな?
ーでも、好きじゃない人相手に、経験なんかできるの?
私には手をつなぐことすら、無理な気がする。
時々、お姉ちゃんが、居間のテレビで、スナック菓子片手に、恋愛ドラマとかを見ているけど、わりとラブシーンあまめで、素直に、
ー女優さんて、すごいなあ?
私は演劇部だけど、演劇部は女子が多いし、私はまだに二年生だし、主役は、三年生の先輩たちだ。
どちらかと言うと音響とか裏方にいるから、演技でも他の人とキスどころか、たぶん手もつなげない。
そもそも、私に恋なんか、ムリだよ?
そう思う。きっと、無理だよ。なのに柴原さんは違うみたいだ。
でも、赤木くんの視線は、好きじゃない。柴原さんもいまは、よくても赤木くんの視線に、きづいたら?
ー私の彼氏を、横取りしないで!
ー誘惑しないでよ!
ー◯◯が可愛そう!
いつだって、耳に残る声がある。知らないよ?そんな人。
そういくら言っても通じないから、もう声にしないけど。
柴原さんも、私から、離れていくのかな?このやさしい手は、私を突き飛ばす手に、かわるのかな?
ー最初から、近よらないで?
彼女が心配してくれてるのは、わかるけど、彼女の大切なものを奪うなら、
ーひとりがよかった。
赤木くんの視線は、きらいだし、赤木くんたちのグループは、同じ班の子達は騒いでたけど、あまり好きじゃない。
どうしたら、いいんだろ?
きっと、今日、動くよね?そうしたら、柴原さんが傷つくんだ。
また、私の存在が、誰かを気づつける。
私は、きゅっと唇をひきむすぶ。
なんでだろ?初夏の福岡で、たくさんの人がいるのに、あの日の屋上みたいな、気分になるんだ。
さっきまで、あんなにドキドキしていた心臓が、こんどは、凍えて、脈拍さえ、ゆっくりになりそうで、
ー人間が、他の人が、動物と違う理由は?
私の脳裏に、またあの冬の屋上のくらい影が、落ちそうになった時、
「あっ、柴原?ちょうど、よかった!」
いきなり、頬にあついものをおしつけられて、ビックリした。
「きゃっ!」
「うわっ!」
慌てて振り落としたそれを、地面スレスレでキャッチする骨ばった私より大きな手。
「悪い、そんなにあつかったか?柴原ー、じゃないな?おつれさん?」
「私は、そんな名前じゃないです」
しかも彼は、地面に話しかけてるし?なんなの?いきなり。
短い坊主頭の子を見下ろしたら、彼が上をむいて、
「あっ、空色だ」
「〜○☆△ッ?」
私の今日はいてる下着は空色で、
「絶景だな?」
って、少し茶色がかったよくみると、端正な顔の男の子が私をみあげた。
しゃがんだまま、
「はい、頼まれた梅ヶ枝餅」
小さなお餅を差し出してきたけど、
「きゃあああ!」
私の口から盛大に悲鳴がでた。
のちに舞台で大活躍の悲鳴だけど、
ー村上春馬。
くん、をはじめてみた。
のは、
ー見られた日だった。




