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ラッシーとジャーキー、


神城の言葉に俺は、ついぼやいていた。


「ストーカーかあ。ナガレタゴカエルは、俺には、ムリだって?」


いや、俺はカエルが苦手だけどさあ。


俺は、神城かクロックスを履いて、ベンチから立ち上がり、歩き出すのをみていた。


歩き方に違和感はないから、怪我なんかは、大丈夫そうで少し安心した、


もしかしたら、ラッシーを、途中で振り返るか?


とも、思ったけど、さすが、神城。


振り返ることなく去っていく。


そして、


ーその背は、誰にも負けない。


というより、


「わふっ!」


って、足元で、ラッシーかほえた。


「ああ。ありがとうな?ラッシー。よくやったな」


俺は、手を伸ばして、ラッシーの頭を、なでてやる。


いつか、じいちゃんが、俺の頭を、こんなふうに、優しくなでてくれたなあ。


あの時、じいちゃんは、なんて、俺に言っていたかな?


あの日、俺にあの箱の作り方を教えてくれた時に。


なあ?じいちゃん。


俺は、振り返ることなく、歩いていく神城をみつめる。


ーなあ?春馬。お前の見えてる世界は、ひとと、ちがうのか?


ああ。そうだ、


あの時に、じいちゃんは、そう言ってた。


俺の頭を、撫でてくれながら、


ーお前の世界に、わしらはどう映る?


そしてー。


続いた言葉の意味は、俺には、よくわからなかった。


ほんとうに、わからなかったから、


ー異世界人。


そう思ったんだ。


その異世界代表の、


ー神城 明日菜。


そして、


「ナガレタゴカエルじゃない俺は、ストーカー⁈」


マジか?


カエルも嫌だけど、ストーカーは、なんか、もっと嫌だそ?


まて、追いかけて。訂正した方がいいのか?


俺は、神城の背中を見るけど、スニーカーは、あと追わない。


ーおえない。


じいちゃんの言葉が、耳によみがえる。


「お前の世界には、いったい誰がうつるんだ?」


ー神城の視界には、誰がうつるんだろう?


まっすぐに、前を見つめて歩く神城は、まっすぐに、前をみて、


ーまっすぐ、前しか、みていない。


まるで、俺のピッチング練習みたいだ。


ただ、ど真ん中になげるだけ。


様々な球種を、ただ、ど真ん中に、なげこむ。


それ、すら、打てないなら、さあ?


ー先輩も後輩にも、神城は、むりなんだろうな?


そもそも兄貴すらー。


いや、兄貴は、振られたわけじゃないのか。


けど、兄貴にもー。


「神城は、無理だよな」


まっすぐど真ん中で、だけど、変化球ばかりじゃダメで、ストレートすら、打てないならさ?


「ー投げなきゃよくね?」


そもそも、誰も、バッターボックスに、いなくね?


「わふ!」


ラッシーの声で我にかえる。


どうでもいいよな?


神城は、異世界人。


しかも、代表。


俺には、まったく関係ない世界たし。


「まあ、いっか。ありがとうな?ラッシー」


俺は、おやつのジャーキーを、人気がないことを確認して、放りなげた。


一応ラッシーが追いかけやすい投球で。


ラッシーが、今度は、


ーわん!


っ元気よくほえて、かけていき、ジャーキーにたどりつきと、伏せをしてお尻だけ高く持ち上げ、尻尾をぶんぶん振っている。


待ては、言ってないから、なんどもジャーキーの周りを、くるくる走って、また伏せして、尻尾をぶんぶん振ってる。


いつもより、ご機嫌だなあ?


ってみていたら、ようやく、ばくりとくわえて、ダッシュする。


公園の片隅にある木の土を掘り始めたから、俺も慌ててダッシュした。


「ラッシー、だめだよ?絶対に忘れるか、他のやつに食べられるから」


ー気持ちはわかるけどさ?


宝物なら、土にうめたいよな?


いま食べずに、もっと腹減って食べたいよな?


だから、土をもう一度かけたいよな?


ーけど、ラッシー?


「お前は、絶対に、忘れるぞ?」


俺はラッシーが掘った穴をうめてから、さっきまで、神城がいたベンチにすわる。


なんとなく、神城の座ってた位置からずれて、座る。


クロックスをいれたビニール袋に、なんか、風で飛ばないように、重石がして置いてあった。


まあるく中が膨らんでる。たしかに、犬の散歩の必需品だよな。


ーだからか⁈


ゴミはゴミ箱に。


ストーカーは、ゴミ箱に?俺をいれとろな?


ラッシーにジャーキーを渡して食べさせる。今度は素直に食べている。


それを見ながら、俺は、ポケットから、小さな箱をとりだした、


もうあの日、じいちゃんが作ってくれたヤツは、ボロボロになって、汚いからと異世界人の母親に捨てられた。


ーなあ、春馬?お前の世界は、もしかしたら、世界は、ひとは、モノクロに、みえてるかもしれない。


そう言いながら、じいちゃんがくれた小さな箱。


ーこの穴から、みてごらん?


言われて、黒に中が塗られた箱をのぞきこんで、


ー俺は、息をのんだんだ。


光をラベルをはいだCDが反射させて、真っ暗な箱に、光のスペクトラムがあらわれた。


手作りの分光器では、4色くらいだけど、はっきりと鮮やかに空気に、いろ、がついていた。


光の色がわかったんだ。


ただ、息をのんだ俺の頭を、じいちゃんは、優しくなでながら、


なあ?春馬、きれいだろ?この世界には、


ー目に見えなくても、きれいな色に、あふれてるんだよ?


そう笑ったじいちゃんの声を、思い出しながら、俺は小さな箱の穴をのぞくんだ。


そして、やっぱり、さ。


「難しいなあ?すべての色をうつすのって」


あれから、ずーっと作っていて、100円ショップで、できれば、かっこいいのを作りたくて。


ー俺はやっぱり、ナガレタゴカエルじゃないらしい。


地味にへこみながら、俺はラッシーがジャーキーを食べ終わるのを待っていた。


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