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春馬


そのまま黙々と、もぐもぐと?夕飯を食べ終わる頃に

めずらしく親父がはやく帰ってきた。


「お?無事に帰ってきたか?おかえり?春馬」


って、俺に言う。


「おかえりなさい。ただいま」


ってかえしたら、やっぱり兄貴と似たよう表情になったけど、


「ああ、ただいま?」


って、右手をのばして、俺の頭を撫でてこようとしたから、反射的によけた。


なんかよけていた。


それをみた異世界人が、


「春馬はもう中学生よ?そりゃそうなるわよ?」


中学生だからかは、わからないが、なんかよけたは、たしかだ。


もしこれが兄貴や神城なら、よけないのかなあ?


って思いながら、手を合わせる。


「ご馳走様でした」


「はい、ありがとう」


ご挨拶は、流れるようにおわる。俺には決まった流れになる。


そのまま食べ終わった皿を洗い、とくに用事はないから2階の自室にいこうとすると、


「修学旅行は、どうだった?」


って親父が言うから、素直にこたえた。


「土産ならそこにある」


「いや、それは竜生が気を遣っただけだろ?お前の旅行の感想だよ?まあ、月並みだけど、楽しかったか?」


楽しかった、か?


そう親父は笑うけど、俺はこの3日を考えて、計画通りなような、だけど、いちばんは、


「ハプニングばっかり?」


「お前が」


「えっ?春馬が?」


って、親父と異世界人が声をあわせた。ついでにお互いの顔に驚きを隠せないらしい。


けど、


「俺にハプニングがあったわけじゃ?」


どっちかと言うと、神城がハプニングだらけでは?


ーあいうえお作文、で会話なる変なやつ。


夏休みには、もうこんな田舎には、いないやつ。


ーもうこの夏さえストーカーできたら、カエルは大人しく冬眠するよ?


少しだけ土に潜って、たまに春間違えたら、凍死しちゃうお間抜けは、俺かもだけど、神城は、もう凍えないだろう?


あの真冬の屋上での神城を、もう俺や柴原はみないですむ。


ーみたくないんだ。


皿を洗った手が水にぬれていたから、タオルでふきながら、俺は前歯で下唇を噛んだ。


口には出さないけど、にぶい痛みがはしる。


ー癖になっちゃうぞ?


って心配そうな黄原が、脳裏に浮んだけど。


大丈夫さ?


だって、夏までだ。


カラカラの天気か、いきなりの集中豪雨が、さっぱりわからない気候が続くけど、カラカラにひからびそうになっても、


洪水に、のみこまれそうになっても、


ーもう、あんな神城をみたくない。みなくてすむなら、


きっと俺は、俺なりのベストをつくすよ?


ただ、俺が、


ーあんな神城をみたくない。


そういう勝手な理由で。


「どうかしたのか?」


って恐る恐る?親父が俺を見るけど、兄貴が言った。


「どう見ても、いつもの春馬だろう?」


って言葉に、異世界人が、


「それもそうよね?疲れたでしょ?2階に上がっていいわよ?」


って、納得していたんだ。


俺の手に梅ヶ枝餅もちわたされ、俺はじいちゃんの仏壇に久しぶりにお供えする。


正座して、目の前で笑うじいちゃんと、じいちゃんよりずいぶん若いばあちゃんをみながら、ばあちゃんはニコリともしてないけど、となりにいるじいちゃんは、はしゃいだ顔を、にやけた顔を抑えきってない。


俺の少し茶色がかった薄めの色素は、異世界人の血筋だ。


じいちゃんもばあちゃんも、黒い。どっちかというと兄貴ににてる。


ー春馬、いつかおまえにも、現れる、かも、しれない。


そう言ってたよなあ?


けど,俺と神城がこんなふうに、なれるとは、思えない。


なあ?春馬。


あの頃のじいちゃんは、たくさんのものをなくして、たくさんなくしすぎて、また何かを手に入れることなんか、怖くてできない臆病者だった。


そんなじいちゃんを、ばあちゃんがうけいれて、くれたんだ。


この世界は、生き抜くのは、たしかにきついし、つらいだろう。


だけど、なあ、春馬。


月並みだけど、ほんとうに、野暮なセリフだけど、


ー生きてれば、いつかは幸せが訪れる、かも、しれない。


あくまで、かも、だけど。


そこがじいちゃんらしいけど、まあ、いっか。


ーじいちゃん、俺に彼女ができました。できるなら、彼女を守れる男になりたいです。


って、口にださずに、そう俺は両手をあわせていたんだ。

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