春馬
ただいま、って元気に言って、兄貴が帰ってきた。
そういえば、小さな頃は、にーに?か、お兄ちゃんって呼んでたんだけど、これも、
ー春馬!にーには、やめろ?兄貴って呼べよ?
って言われて変えたな。黄原がいうには、兄貴呼びの方がなんとなくカッコいい
って言ったし、異世界人は微妙な顔したけど、親父はじいちゃんは爆笑してた。
まわりの年子はわりと名前呼びだけど、俺は竜生って呼び捨てしたことないし、
ーこわっ?
だよなあ。って思いながら、玄関みたら、会話がきこえる。
異世界人が玄関までわざわざ出迎えに行ってる。
「おかえり。春馬のと一緒に洗濯したいから、先にお風呂でいい?」
「うん、わかった。春馬は?」
「先にお風呂入って、いまご飯中よ?ごめんね?お腹がすいたなら、先にご飯でもいいけど?」
「いや、いいにおいだけど、汗でベタベタだから、先にお風呂入ってくる」
「ありがとう竜生」
って会話ききながら、実にスムーズだよなあ。
なんで兄貴はスムーズなんだろ?俺と兄貴は傍目に血のつながりわかるくらい、似てるみたいだけど。
ーおまえと竜生先輩じゃ、まとう雰囲気がまったく違うからかあ。
ものすごく違うって、黄原が不思議がるけど。顔立ちは似てるらしいから、雰囲気なのかな?
べつに兄貴みたいに人気者になりたいわけでもなく、神城みたいに目立ちたいもないし、誰かの特別になりたいもないか?
じいちゃんはよくばあちゃんの話をしていた。
ーいつかおまえにも、あらわれたら、いいな?
って頭を撫でてくれるじいちゃんの手からは、頭をよけたことない。
ーなんでだろ?
べつに異世界人からなにかされたわけじゃない、と思うけど。
異世界。
ほんとうにそう思ってしまう。同じ世界にじゃあ、じいちゃんがいたかと言うと、それも違うしなあ。
ー他人は自分と違う思考をする。なのに、なぜか認められない圧倒的な自己中心性。
あれはお互いに?
というか、異世界代表みたいな神城は、うちの異世界人より短気だよなあ。
まあ、あいうえお作文で、会話?なるからいいけど。楽だし?
いちいち考えて会話しないですんだな。柴原もだけど。ただ兄貴と異世界人の会話が俺にできるかときかれたら?
ー?
には、なるけど。
兄貴がダイニングに顔を出して、
「お帰り、春馬」
「ただいま。お帰りなさい」
「…ただいま、だけど、なんだよ?おまえ、会話する気ないだろ?まったく、よくそれでー。まあ、俺には関係ないか」
ため息をついたあと、チラッと土産の袋をみて、またあきれたように、けど微妙な顔で、
「ほんとうに素直だな?」
ってあきれたように、笑った。




