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竜生


「あっ、2年のバスがついたぞ?」


俺の席は窓側で、俺より2個前に座ってるヤツがそう言った。


授業中だけど、その声にクラス中の視線が窓に向かう。たんに声に反応したのと、教師の口調が淡々としていて退屈気味だったのと、


ー春馬と神城の噂だよな?


いや、あれは噂レベルじゃないよなあ。なんというか、神城が自分から言ってて、春馬も否定しないらしいし?


ーまあ、アイツは否定しないだろうけど。


そもそもつきあうって意味をわかってるのか、謎だよなあ。春馬の場合。


って思う。


「なあ?竜生、おまえ、本当に弟からなんもきいてないのか?お前の弟を変だって言ったら、めちゃくちゃ怒るくらい仲良いよな?」


「はあ?そんなに仲良くねーよ?」


…特別に仲悪いわけでもないけど。俺より両親より、春馬はじいちゃんとラッシーになついてだけど。


ーアイツの視界に俺いるのかなあ?


たまにふとよぎる想いに複雑になる。


ー神城レベルでも無理じゃね?


黄原あたりが神城の話はしてそうだったし、黄原はなんのリアクションもしてなくて、


ーなら、やっぱり噂は本当か?黄原のノーアクションで思ってはいるけど。


噂なら黄原が気を遣って、俺に教えてくるよな?って一晩考えて、いまだに黄原から届かないメッセージにそう思いはする。


ーようは学校にきて、あまりに周囲からきかれて、頭が冷えた。わりと街中の雑踏で、頭が冷えるのと同じだよな?


人酔いして、ウンザリして、離れた時に輪の外から、ふと見える景色に冷静になるは、あるよなあ。


いまだにピンと来ないし、噂によると神城はスカウトにこたえたらしいし?


ー夏にはいなくなる?


そんな不毛な恋愛、ごっこ、なら春馬は適任だよな?


アイツほど、適任はいないよな?


神城に遊ばれたですむし、春馬本人もノーダメージだろうしなあ。


俺は初恋まだだから、わかんねーけど。


ーチラッとあの日、春馬に微笑んでた神城の優しい顔が浮かんだけど。


あれは、俺じゃなく春馬にむけた笑顔だ。


演劇部で笑った神城の写真は、男子たちの間で好評だ。いちぶ女子にも…。


芸能人か?


ってあきれたけど、そのまま神城は夏休み明けには、その世界に足をつっこむんだろうなあ。


スマホで神城みるのかな?


こんなふうに、窓ガラス越しでみるみたいに?


「ーあっ、神城だ」


また2個前の席のやつが言って、


「ええっ⁈マジで竜生の弟と帰ってくじゃん⁈」


「ほんとだ!」


「うそー?神城明日菜って、村上くん狙いじゃないの?」


「バカ、あいつも「村上」だ?」


「えっ?「村上」違いって事⁈」


「噂の定番みたいなこと⁈」


「なんだよ?定番って?」


「いや、噂のトリック種明かし?」


…さらにわかんなくして、どうすんだよ?


ここにも春馬みたいなヤツいるな?いや、あれ、ひとクラスに数人はいるんだっけ?


目立つか目立たないかは、別にして。発言したやつは天然で相殺されてクラスのムードメーカーだし?


ふつうに社会的なコミニケーションは、とれてるな?なんかマニアックな趣味に没頭してるけど、春馬もこいつもいきなりキレるとかないしなあ。


ーむしろ、そいつより他の連中の方がキレてるよな?春馬がキレたとこ見たことないぞ?


小さな頃はギャァギャァだったけど、自分でできるようになったら、


ー他人を必要としない、は、あるのかもなあ。


実際に、神城の荷物とか春馬は無視してる。体格的に同じ身長だけど、春馬の方がどう見ても神城より力ありそうだけど。


ー飴玉がりがり食ってたしな。


待て、ができない時のラッシーみたいだな?たまに俺がおやつやる時、からかい半分で待てを続けたけど、ラッシーは食う。


春馬やじいちゃんは待てをそんなに長くさせなかった。


ーラッシーには、ある程度でいいんだよ?


あぶなくない範囲でいいって言ってたし、当然、春馬の方にラッシーは懐いてる。


神城はラッシー越えんのか?


ー神城なら、春馬の視界にはいるのか?


ー春馬なら、神城の視界に入り込めたのか?


窓ガラスに陽射しが反射して、俺のノートに小さな虹を作り出す。


春馬が最近よく作ってるあの箱の中みたいない景色だな?不思議なのは、アイツは夜空は見るくせに、天気にはあまり興味をもたなかったなあ。


風には反応してるけど、雲には反応してなかったよなあ。


たまにラジオで山の天気図書いてるけど。その山周辺の一部だけだしなあ。


春馬の成績は俺よりずーっと悪い。


…いける高校あるのか?


大学へは行かなさそうだしな。親父も、


ー働いて家でて自立さえしてくれたら、いい。春馬の人生だからな。


むしろ金的にラッキーだって言って、母さんから、


ーいまの時代は大学までいかないと!


いつまで教育ローン払う気だ⁈


って親父が言ってたなあ。まあ、そのあとに、


ーなりたい夢は追いかけていいけどな?冗談だから、気にするな?竜生。


って、親父は言ってたけど、


ーいや、本音だよな?


って思ったけど、中学のいま、将来の夢を具体的に描いてるは、あまりいない。

 

ふと昨夜みた親父と母さんのことを思い出すけど。


ーどうかしたの?竜生。


相変わらず、変なことで鋭いなあ?だけど、春馬の変化に気づくのか?


ー懐かない一方通行な片想いは、いつまで続くんだろ?


あの交通費を母さんは、春馬にやったままだろうな。


交通費かわり。


って言ったら、アイツそのまま、


ー交通費まちじゃね?


って思いながら、校門でて視界から消える直線で春馬が神城の荷物に手を伸ばしてた。


ー体力無さそうだしな。


神城。


ふたりの姿に俺の胸がザワザワしてたけど、無視した。部活と受験で腹一杯だ。


って思うけど、


ーそのうち自然と腹はへるよな?だ?


なんかつくる?竜生?


そう言った母さんの声をふと思い出した。





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