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北熊本 明日菜 ②


とりあえず混んでるけど、女子トイレにむかう。サービスエリアでも、すれ違う人や遠目に視線を感じる。


さすがにスマホは、


…たぶん、ないよね?


繊細な子だと公共のトイレにトラウマなりそうな盗撮とかあるらしいけど。


サービスエリアのトイレは、使用頻度のわりに、きれいだと思う。


ランプついてる場所もあるし、なんか、


ー駐車場みたい。


都会に行けば行くほど、サービスエリアの人混みも規模も大きくなるのかなあ?


「ー東京かあ」


つぶやいてみたけど、ピンとこない。帰ったら、お母さんたちと、スカウトのことを話し合わないといけない。


ー反対するかなあ?


お姉ちゃんは、どうするんだろ?


演劇部の先輩に私を紹介したのは、お姉ちゃんだけど。


ーお姉ちゃんも、真央と同じでよくわからないからなあ?


って手を洗いながら思う。


鏡に映る自分の顔は、あたりまえに見慣れた私の顔だから、不思議になる。


ーそんなに目立つ方じゃないよね?


昨日は真央が髪型をアレンジしてくれたけど、いまの私はいつも通りだ。


ーだって、まったく、効果なかった。


ポケモンだっけ?子供達がスーパーや本屋にあるゲームコーナーで夢中になってる、メザスタ。


ダダダ!ってボタン連打して、


効果バツグン!


ってあるけど、たまにお姉ちゃんがやってた。私は出てくるタグのかわいいのをもらってたりする。


ただ、ボタン連打しても、私がもしもスターでも、村上くんには、あれれー?の方だよね?


隣で前髪を手櫛でなおす私に気づいて、真央がニヤッと笑う。


「めずらしく明日菜が鏡みてるね?やっぱり、村上がいるから?」


「関係ないよ?だって、絶対、私の髪型なんか気にしてないもん、村上くん」


「あははは。まあ、そうだね。けど、明日菜の容姿もふくめて、村上は明日菜を見てきたと思うけどな」


「真央の方をよく見てるよ?村上くん」


「それは、明日菜がムダに村上を睨んでるからでしょ?昨日なんか、はじめから、怒ってたよね?」


「あんなことされて、怒らないのは、真央くらいじゃないの?」


いきなり頬に梅ヶ枝餅をあてられて、ビックリしたら、しゃがみこんで、スカートの中見られるとか、あまりないよね?


…文字にしたら、完璧にあぶない人だよね?


「せっかく真央が髪を可愛くしてくれたのに、それも虫がとまったとか言うし」


「そんな村上に告白したのは?」


「…私だよ?」


まわりの視線に私は不貞腐れ気味にこたえた。ここで否定できないのを知ってて真央は、イタズラしてくる。


「私だけじゃなく、怒らない女子はたくさんいると思うけど?そもそも村上に対して、抱いてる感情が違うから、比べようがないよね?」


真央が肩をすくめて、私たちは出口にむかう。


「飲み物、なんか買う?」


「ううん、私はまだあるかー、きゃっ!」


いきなり頬に冷たいペットボトルがおしあてられてビックリする。


「サラダばかりだと身体壊すぞ?」


って声がして、私の心臓が大きく鼓動をうつ。振り返ると村上くんがいた。


「む、村上くん?」


「む?無防備だな?毎回、神城さん。いや、無双か?炭酸おとすと、大惨事だぞ?」


「横にしてしばらく転がしても、わりとシュワシュワなるよね?」


「結果的に、キャップをちょっとだけ開け閉めして、泡が出ないギリギリ狙う羽目になるよな」


「わかるわかる。失敗したら、わりとめげるよね?」


真央が頷いてるけど、私はあまり炭酸を飲まないから、わからないし、そんなチャレンジしない。


「ーどうして?」


まわりの視線が私たちに集まってるけど、村上くんはまるで気にしてないみたい。


どこまでもマイペースだ。私はひとつ息をついた。


「いや、黄原に、帰り神城さんを送って行くようにいわれたから、確認に?家族が迎えなら、必要ないかな?と」


「…私と一緒に帰りたいのか、帰りたくないのか、わからない質問のしかただね?」


「さすが村上、ぶれないね?」


真央があきれて、村上くんの手から炭酸ジュースを手に取ろうとしたから、私は慌てた。


「真央、それは私にくれたんだよ?」


「だって明日菜、炭酸飲まないでしょ?」


「あっ、そうなんだ。なら、柴原飲むか?」


って、あっさり村上くんは真央の手に炭酸を渡して、


「俺が飲もうと思ってたヤツだけど、いる?」


って、ミネラルウォーターを、また自然に私に差し出すから、ついうけとる。


「熊本といえば阿蘇だろ?阿蘇の水だぞ?そういえば、九州に熊はいないけど、くまモンはいる。職業 地方公務員。 体型 メタボ。初登場からしばらくは痩せていて、熊本の美味しいものを食べ過ぎて、メタボ体型になったらしい。そして、多趣味だぞ?日本さかな検定3級、将棋アマチュア初段、温泉ソムリエetc。すごいよな?」


おまけに、こっちが声かけたら、同じセリフを言って動くぬいぐるみまである。って不思議そうにしてるけど。


「ーって、あれ欲しいの?」


「ラッシーの隣にいたら、遊ぶかな?」


「怖がるんじゃない?」


あの子、おっとりしてみえたし?っていうか、あきれてる私のとなりで、


「サッカー検定6級ってなんだろ?人吉球磨検定3級って、なんだろ?」


って真央がスマホをみてる。村上くんが首を傾げる。


「球磨川急流下りとか?」


「ああ、あれかあ。涼しいのか、暑いのか?よくわからない系の遊び?」


「さあ?俺たちの地元よりは涼しいんじゃないか?福岡とは、やっぱり陽射しが違うよなあ?あっ、そろそろ戻らないと。神城さん、帰りどうする?」


「えっ?」


「家族は、迎えにくる?」


「ううん。村上くんと一緒に帰るよ?」


「わかった。なら、解散したら、迎え行くから」


って、村上くんは、なぜかまた、頭をべこんって下げて、走ってく。その先には黄原くんがいて、村上くんにペットボトルを渡していた。


真央がクスクス笑う。


「さあ、私たちもバスに戻ろう。明日菜、忘れずにお母さんに迎えいらないって連絡しときなよ?山のトンネル区間は、電波厳しいと思うから」


って私に言った。


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