3日目 明日菜
他の同室の子たちと一緒に朝ごはんに行った。部屋からてだ時も、食堂でも、視線がたくさんあるけど、昨日の朝とは少し違う。
「明日菜、ざんねんだね?村上たちいないみたいだよ?」
「待ち合わせしてなかったの?」
班の子たちが言うけど、私たちはそういう関係じゃないよ?
って、内心で思いながら、
「あまり目立ちたくないから」
って、言ったら、ひとりがあきれた顔になる。
「明日菜と付き合ってて、目立ちたくないって、ムリじゃない?」
「明日菜が告白した時に、もうわかるよね?」
「告白、明日菜からだったよね?」
って首をみんなが傾げてる。
「告白したけど、村上くんは私をあまり知らないみたいだし?」
…違う私を見つけてくれたし。私にとって、
ーカエル。
お姉ちゃんが名前つけた。ストーカー。
あとから村上くんや真央がナガレタゴカエルを教えてくれたけど。
まさか、十数年後からずーっと牛カエルに話しかける生活になるとは、思わなかったけど。
「えー?明日菜を知らないとかあるの?」
「けど、あの村上だし?」
班の子たちが顔を見合わせてる。
「そういえばさ、昨日年子の妹にきいたんだけど、村上って、一年に人気あるんだって」
「えっ?竜生先輩じゃなくて?」
「うん、下手くそだけど、一生懸命練習してる姿がかわいいって、人気でてるみたいだよ?」
「まあ、明日菜のおかげで私も興味わいてみたけど、たしかに、顔だけならいいよね?」
「あっ、それ、私も思った。やっぱり兄弟だよね?村上は髪型かえたら、目立つよね?」
「無口だし、黄原以外に友達いなさそうだけど」
って、好き勝手に言い出した。
ーいちおう、私、彼女のはずだよ?
って、なんかモヤモヤする。
ー人気あるの⁈
私だけでいいのに?
「明日菜、顔がこわいよ?」
隣で真央がニヤニヤしてる。
ーし、
「いや、明日菜?」
「ただ、私は妹からの話だけでさ?」
「ほめたんだよ?いちおう?」
って、みんなが顔をこわばらせてる。
「村上くんが、どうしたの?」
って、我ながら、少し低い声が出た。
ー自分でも、ひくレベル。
私ってこんな声がでるの?
って内心で思うけど、
ー彼女なら、いいよね?
漫画やドラマやネットの見過ぎかなあ?って思ってたけど、
ーほんとにでるんだ。
って思う自分もいる。
「まあまあ、明日菜、落ち着いてよ?この子たちに悪気ないし?」
「悪気なくても、きいてて面白くないけど?」
「だから、悪気ないから、気づかないだけだよ?」
「ーそうだけど」
そりゃあ、そうだけど。
ー知ってる誰かを話題にされて、少しでも好意があれば、悪く思わない相手のことを、言われたら、面白くはないよね?
って思うけど。私は私を守ろうとしてくれた真央や村上くんを悪く言われたら、反論するけど、
ー自分のことは、あきらめてるのかなあ?
って、村上くんや真央と似てるかもしれない。真央が変わらず笑ってるから、少しだけおちついた気分になる。
「それに、私も赤木と顔あわせたくなかったし?赤木が止めたんじゃない?」
「あ、そっか」
「そうだよね?村上と赤木って同じ班だったね?」
「ごめんね?真央」
って班の子たちがあやまった。
ーそうだよね、真央が言う通りに悪気はないんだよね?
ーネットみたい。
って思う。うちはネットみながら、お姉ちゃんがぶつぶつ言っても、お兄ちゃんが首をかしげながら、お姉ちゃんの感想をもう一回、口に出してるけど。
ーよくわからないから、明日菜は見ない方がいいよ?よくわからないから。
って、お姉ちゃんも見なくなってたけど。首を傾げながらお兄ちゃんはみてた。
ー就活の参考になるかも?
って言ってて、お姉ちゃんがまた首を傾げてた。
ーこんな意見が参考になるの?
ーわからないから、みてる。いろんな人いるな?
何人かは、本気で言ってるよなあ?
って首を傾げてた。ただもう見ない人が多くなる機能に発展していくだろうけど。
ー悪気はないんだよね?
って、思う。たぶん、なんも考えずに感想を言ってるだけで、
ーそれくらい身近になったツールなだけ、だよね?
って思う。
ー手のひらサイズにすごいなあ。
お兄ちゃんがたまに見てた昔のアニメではテレホンカード式のみどり色の電話が映ってた。
私はテレホンカードをもう知らないから不思議だった。折りたたみ式の携帯も不思議だけど。
ーかんたんに写真とれなければ、自由なのに。
でも、便利だし?
でも、
ーいつも追いかけられて、追いかけてる、気分にもなるんだ。
昔の携帯はカシャって音がわざとなるタイプだったらしい。
いまもたぶん同じ機能はあるだろうけど、それをなくす機能もありだろうし?
どっちが便利かでいえば圧倒的に後者だろうし?
ーイケメンファイル作ったよ?
いや、女子でも盗撮ですけど⁈
って、お兄ちゃんがあきれて、
ーあれがいいなら、俺もいい?
ーもうお兄ちゃん扱いしたくないから?
ー妹が冷たい。
ーうっとうしい!はやく梅雨明けしなよ?
って言ってたな。あの時、お兄ちゃんははじめての連休ではじめて帰省したんだっけ?
ーこんなにホームシックになるとは。
って苦笑いしてたお兄ちゃんも、あまり最近は、連絡こないって、お母さんがぼやいてた。
「まあ、赤木はもういいや。ほら、冷めないうちにはやく食べよ?明日菜」
って真央が笑ったから、私もうなずいた。班の子たちもホッとしたように笑った。




