3日目 朝 春馬
ーよくねた。
モヤモヤしたわりに、相変わらず、俺は爆睡した。よくわからないけど、よくねた。
起きたら、まだみんな布団だった。赤木たちはいなかっが、部屋にいた中では、いちばん早く起きたらしい。時計をみたら、二度寝したら、起きるのが中途半端になりそうな時間だった。
窓からは、福岡の朝の日差しが少し入ってる。
ーそういや、福岡は、南九州の片田舎より、少し日の出がはやいんだっけ?
似たようなことを、三連水車でも思ったかなあ。水車に通る小さな水路。
あの日の俺の目には、なだらかにみえる地形だけど、下から上に通す力。
ー時代を救った力。
ひとりだけじゃない、たくさんの願いが託されたプロジェクト、かあ。
ー神城の場合、俺と柴原の身勝手なプロジェクトだよな?
なんか違う経過なってるけど。
ーなんでだ?
俺が必要な役割は、長くて夏休みまでだろけど。
ー夏には、水車はもっと力強い勢いで、上に水流を押し上げていくのかなあ?
そして、
ーあの場所にも、ホタルがいるのかな?
夏に神城とホタルみるのかな?
ーそんな時間に、神城を連れ出すわけにいかないだろ?そもそも、虫除けが虫をみせてどうすんだ?
だって、ホタルって光らないと、わりと…。
ー神城って、虫に悲鳴あげたよな?
なんか理不尽だけど、わりと昨日は、神城のせいで散々だった気がする。
ーってか、俺って、なんで教師から、注意されなくちゃいけなかったんだ?
なぞだ。
ーだけど、神城は、ホタルを見たことあるのかなあ?
ホタルは、ほんとうに、きれいで、不思議なんだ。
一年に、ほんとうに、わずかな時間しか見れない、
ータケノコみたいだ。
美味しいよな?タケノコ。
じぃちゃんが友人の山に行くのに、一緒によく行ってた。足で探した記憶がある。
タケノコは、あまり子供の口にはあわなかったけど。つくしもよもぎも、ふきのとうも、とるのは、大好きだけど、苦手だったような?
ー神城って、サラダ食うなら、タケノコも好きなのかなあ?
いや、だけど、タケノコ掘りに、付き合ってくれるのって、ラッシーじゃね?
ーラッシーは、違う場所掘りそう。
やっぱり、ラッシーに逢いたい。ラッシーとなら、ホタルを見にいけるよなあ。
ラッシーは、神城を覚えてるのかなあ?そういや、神城にあの変な味の飴玉は、ラッシーには食べれないって、教えないとなあ。
ーバカだろ?おまえ。
って、なんか兄貴に、言われた気もするけど。
ー変な味のくせに、いや、変な味だからか?くせになる味だ。
飴とは違うけど、辛いの苦手な俺がいる。テレビとかで、うちの異世界人が見てるけど、毎回、
ーダイエットに、いいのかしら?
って言うけど、それだけ辛いのくったら、倍くらい甘いの食いたくならねーの?って思うヤツだ。
うちの異世界人は、そこまで辛いヤツを食べてない。辛いの食べるのは、親父や兄貴か?
俺は見ただけで、なんか変な汗出そう。ガマ油気分になりそう。
いや、サウナか?
とにかく辛いのは苦手な俺だ。神城は好きなのか?サラダって、ドレッシング色々あるし、野菜自体が辛いのあるよな?
ピーマンだと思って、油断して食ったら、
ー青唐辛子。
いや、たしかに⁈
だよなあ。ちなみにじぃちゃんが家庭菜園でとれたヤツを、例によりイタズラしたから、
ー食べ物で遊ばないように、親父。
ー食ってるぞ⁈
熱い舌を氷、たっぷりの水をがぶ飲みして、冷やしながら、じぃちゃんとくって、
ーお腹痛くなった。
二度と家庭菜園でピーマン自体を、異世界人が作らなくなった。
ーお義父さんが、春馬に何をさせるかわからないから。
って親父に言って、親父は苦笑いしてたなあ。謝ってはなかった気がするし、異世界人も苦笑いしていたような?
ー春馬、ピーマンは甘いよな?
ってじぃちゃんが幼い俺の頭を撫でてくれたけど、
たしかに?
だったけど、
ーピーマンが苦手感は消えなかった。というか、増したんじゃね?
最近、あまいピーマンもあるらしいけど、ピーマンはピーマンだよな?
って苦手な俺は思いながら、毎回、完食してる。ちなみにじいちゃんがイタズラしたのは、獅子唐だ。
毎回、辛い!って叫ぶわりに毎年栽培してた理由は、栽培が比較的しやすいかららしい。
菜の花は、いろんな虫が、よってくるだろうしな?
ー南九州の片田舎ですら、守れなかったガキだぞ?俺も柴原も。
もはや、神城については、柴原もワンセットだよな?
ー俺だけ責任変だし?アイツは俺と違って、神城が東京行ったあとも関係が続くだろうし?
ーその経過を俺は知れないし?
俺が女だったら、違ってたのか?
…想像しようとして、やめた。
ー女の子がいたら、少しは違うのかしら?
って、異世界人は、たまに俺を見ながらいうけど、一度も、
ー春馬が女の子だったら。
とは、言われたことがない。だから、あまり想像がつかない。
じいちゃんと親父の、
ーお前はほんとうに、俺の子か?できがよすぎやしないか?
ーおふくろの墓参りに行くか?親父。
ー許してください。
までがワンセットの寸劇の影響もあるのかなあ。ただ俺と兄貴をじいちゃんは、いつも優しく頭を撫でてくれた。
ーじいちゃんがいたら、無敵だって信じてた。
東京に行ったら、あの人なら、
ー私なら守れる。
その言葉が、強さがー。
俺は前歯で下唇を無意識に噛んで、
「ー痛っ」
うすく血の味がしたんだ。




