シジミの味
昨日、俺は作戦を実行した。
作戦とは篠宮美咲にお隣さんは自分のファンだと
知ってもらうためだった。
それだけでよかった・・・・
なのに・・・
「あのー五十嵐さん、起きてくださいよもう昼前ですよ。」
彼女は俺のベットで酒を飲んだからかぐっすりと寝ていた。
こんな無防備な状態をさらけ出してもいいのだろうか、わからない。本当にわからない。
「えーー?んんーー」
やっと起きてくれた。すごく眠たそうな小さな声だが反応はしてくれた。
「味噌汁作っといたんで食べてくださいね。」
「はぁああい、わかった・・・て、ええええ???」
彼女はいきなりベットから飛び起きた。
そりゃそうかどうせ寝る前の記憶なんて消し飛んでいるだろう。
「ええっと、なんで私ここにいるの?もしかして変なこと・・・・」
「してません。」
彼女は真っ先に俺がやらしいことをしてないか聞いてきた。
もちろん俺はそんなことは一つもしていない。どちらかというとできっこない。
俺の推しのアイドルを俺のスティックで汚すわけにはいかない。
「もちろん俺はそんなやらしいマネなんてできないし。
五十嵐さんが俺のカレー食べてからお酒飲んで盛り上がってたんですよ。」
「まぁ体に異常はなさそうだし、何もしてないのは本当ぽいわね。
このことは絶対にほかの人には喋ったらだめだからね。
バレちゃうと私のアイドル人生が終わっちゃうからね。誤解されて、しかもファンの家に
そんなマスコミが大好物そうな内容がバレちゃら本当にやばいからね。」
かなり彼女はまじめに話してきた。本当に何度も言うが彼女にそんなことをする勇気はない。
せいぜい俺は一人でしかできない身なんだからさ・・・・
こんなことを思ってたら自分のことが本当に情けなく見えてくる。
「そんじゃぁさっさと味噌汁飲んで元気になってくださいね。
あ、シジミって駄目だったりしますか?だめだったら俺が飲みますよ?」
「大丈夫よ、こんなのしっかり飲めるから。」
こんなのとはどういうこんなのだろうか。
俺の簡易料理がこんなのだろうか、それともシジミがこんなのだろうか。
分からねぇわ、人間の発言ってさ。
「はーーっ美味しかった。」
彼女はアサリの味噌汁を早々と口に運んでいた。
器はもう空になっておりお替りのような目でこちらを見てきた。
「ちなみに、お替りはありませんからね。」
「え、バレてたか・・・あはは・・」
目の前にいる俺の推しアイドル篠宮美咲はアイドルのアすら見つからない態度?だった。
なんかそうだな、友達と話してるような感じがする。
一応夜は一緒に寝たしな・・・
↑
(同じ部屋で寝ただけであって別の布団で寝てました。)
「ほんで?美咲ちゃんはいつ帰るのかな?」
「は?ちょっと今はその呼び方やめなさいよ。仕事以外で男性に言われるの慣れてないからさ。」
彼女は照れくさそうな顔をしていた。やっぱりいきなり言ってみたがさすがに無理だった。
「それじゃぁ帰るとしますかって・・・気持ち悪・・・・・・・」
二日酔いのせいだろう。立って歩いていくのも間にならない。
このまま部屋に置いて行ってもいいのだが自分の部屋に人一人おいていくのは
それはそれで凄く気持ちがワイル。
「どうします?ここでもう少し寝とくか自分の家で寝るのか?」
彼女はどちらかの選択は絶対だろうが体のしんどさ的にも前者を選ぶだろう。
「ちょっと・・・今は・・むり・・・かなぁ・・」
しんどそうに声をあげながら必死に俺に伝えてくれた。
「わかりました。それならさっさとベットに入って寝てください。
俺は野菜とか買い出しに行きますんで、何かあったら連絡してください・・・
ていうかメアド教えてくれますか?」
メアドを持ってなかったくせに何かあったら連絡してくださいって間違えた。
でもアイドルのメールがもらえるなんてファンとしては最高のご褒美かもしれない。
「OKっと。ほんじゃ買い出し行ってきます。」
えーっとまずはスーパーで野菜とうどん麺だな。
「やさい、やさい、キャベツ、レタス、キュウリ、あったナス!!」
探し求めていたナスがついに見つかったぞ。
あとは、
「うどん、うどん、うどん、うどん。」
麺類はたくさんあるのにうどんがない。
もしかしてうどんだけ売り切れてしまったのだろうか。
そんなことあり得るか?うどんだぞ?どこにもいる庶民の味方の。
↑
(うどん愛好家の方申し訳ございません)
仕方ない、べつのスーパー回るか・・・・
――夕方――
「ただいま戻りましたー。美咲ちゃん具合どう?」
「えっとまずその名前で呼ばないで。あと結構回復してきたかな。」
彼女は立って喋れるほどに回復していた。
「そんなに元気なら帰れますよね?ほんじゃぁさいならー」
推しのアイドルにそんな仕打ちするなんて・・・・
なんてファン状態の俺は思っていそうだが、今となっちゃ少しめんどくさい奴だ。
俺はあんな奴の大ファンだったのか、なんか気分悪くなったからパット酒飲んで忘れるとするかな。
今日は朝から本当に大変だった。
あんな奴が隣人というすごいことはどんな風に展開が偏るのだろうか。