スイカの大切さ
俺はバレてもバレなくても生活はしんどい。
中途半端で振り回されるならば向こうから気が付いてほしい。
俺の作戦はこうだ!
握手会に行って気が付くか気が付かないのかを確認する。
【彼女がもし気が付いたのならば仲良くなって・・うん・・仲良くなる。】
【彼女が気が付かなかったら仲のいい隣人となる。】
だいぶ適当な作戦かもしれない。でも息苦しいよりは気が付いてほしいかもしれない。
なので俺はこの作戦を実行しようと思う。
まず握手会上に行くことだな。填のことだから絶対行くというだろう。
まずは連絡を取ってみるか・・・
『填―今度の握手会に行こうと思うんだけど来るか?』
俺の予想はYESだろうが、もしあいつが来ないのならそれでもいい。
ただ一人で行ってしまうとなんで誘ってくれなかったって怒ってしまうからだ。
『YESに決まってるだろ。まぁ集合は寝屋駅な』
相変わらず返信と計画が早い。
俺のほうも計画は今のところ順調だが少し怖がっている俺がいる。
もし気が付かれて引っ越してしまったりしてしまったら・・・
そんなことは考えても仕方ないか。
いつもの握手会に行く準備をしておいてまた今週の土曜日まで
填を俺の部屋に連れてこないようにする簡単な作業だ。
――大学にて――
「宗司ー。土曜日のことなんだけどさ、予算お前いくらある?」
いきなりあってから質問が俺に飛んできた。
お金のことを聞くのだから少し金欠なのかもしれない。
「まぁ絶対必要なチケットはもう購入済みだから7000円ほどになるな。」
正直この値段は俺でもだいぶ少ないほうだと思う。でも今回はグッズを買うことは
ないので別に問題はないだろう。しかし填のやつはグッズを買うつもりだろうか。
「お前もしかして金がないとか言わねえよな。」
「あっバレた?」
やっぱりそうだった。お金のことを聞いてきたときはいつも金欠だ。
「別に今回はグッズ買うとかないから別に貸すことはできるぞ。」
「え?神様、仏様、宗司様?」
「今回は特別だからな。」
今回の目的は握手会でもグッズでもない。
気が付くか付かないかだ。
「また給料入ったら返せよ?」
「はいはいわかってますよーだ。」
「―――」
心配で仕方がない。まぁでもこいつなら返してくれるだろう。
絶対、多分、うん・・
「そういえばお前昨日できてなかったレポート終わらせたのか?明後日の期限だぞ?」
「お前俺だぜ?もちろんおわっ」
「終わってないんだよな?」
「おいおい人が喋ってるときに被せてくるのはやめてくれよ。本当だけどさ。」
やっぱりこいつは終わらせてなかった。
案の定というかなんというか。
予想はできてたところだな。
「ほんでレポートは終わりそうにあるのか?」
「あっそこは心配しなくてもいいぜ。あともう少しで完成ってとこだからさ。」
「・・・だったらいいんだけどな。」
ため息をつきながら俺は言った。
こいつの言葉には信憑性が一つもないからだ。
「お前俺のこと信じてないだろう??」
「ああ、そのとおりだ。あたってるぜーーー」
「うれしくないな(笑)」
――授業が終わり帰ってきた――
今日は正直楽しいことがあんまりなかったな・・・
「宮田さーん」
ドアをノックする音が聞こえた。
透き通るような綺麗な声をしていた。
こんなきれいな声の持ち主はこの近くで一人しかいない。
「はいはい、どうしました?」
案の定五十嵐さんだった。
彼女の腕には大きな段ボールを持っていた。
「これ宮田さんの家に配達が来たんですけど
ちょうど帰ってきたときに出くわしたので受け取っておきました。
勝手なことしてすいませんね・・・」
「いやいやいや、本当にありがとうございます。助かりました、疲れているでしょうに
本当にありがとうございました。」
段ボールに入っていたのは綺麗な形をしていたスイカだった。
中で崩れないようにしっかりと衝撃吸収材も入っていた。
そうだ!これをおすそ分けということで五十嵐さんの家に渡そうか。
ちょうど受け取ってくれていたしお礼としてなら受け取ってくれそうだしな。
「五十嵐さーん」
「はーい、どうしました?」
「あっこのスイカ実家から送られてきたんですけどおすそ分けです。」
彼女はスイカが好きなのだろうか。果物だとイチゴが好きなことはもうわかっている。
しかしスイカのことなんて聞いたことないからな・・少し心配だが受け取ってくれるだろうか。
「えー、いいんですか?こんな大きなスイカなんて。」
彼女はとても嬉しそうに反応してくれた。こちらもそのような態度を受けて
とてもうれしかった。
「全然食べてください。もしスイカが無理だったら大丈夫ですよ?」
冗談交じりの会話をしながら少しの時間だったが楽しい時間を過ごせた。
これでしっかり顔を覚えてくれただろう。
また握手会で会うなんて予想にもしないだろうな・・・
楽しみだ。