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第3話:ミッション後の説明フェイズ

さて、安全な場所に移動したので、現状を確認しよう。もうなんとなく分かっているが、これは夢でもVRゲームでもない。


「なぁ、ナビの人。なんで俺はここにいるんだ?」


--私はナビゲーションユニット 個体名:ハルです。質問の意味が不明です。


ですよねぇ。


というか、ハルさんかぁ。名前あんのか。

立体映像のサイズは手の平に乗るくらい。よく見れば光るラインが印象的なSFっぽい全身タイツを着ている。

声や体型は中性的で、まるでゲームに出てくる妖精のようだ。


「ハルさんや、俺が誰か分かる?」

--サグラ家の長男ゼッケ様です。


「そっちじゃなくて、もう1人の俺は分かる?」

--不明です。

ですが、過去の記録では、魔攻核シェル搭乗中に過去の人格が甦ったと言われる事象が数件確認されています。ゼッケ様の状態から同じ現象の可能性が非常に高いと判断しました。


「そういえば記憶を統合とかなんとか言ってなかった?」

--はい、魔攻核シェルには搭乗者の身体/記憶をすべて保護する機能が用意されています。これは、戦闘時のダメージから搭乗者を保護するためです。


先ほどはゼッケ様の記憶がリセットされて別の人格に置換されたのを確認したため、記憶の統合を行いました。

通常は指示なく記憶の処理を行うことはありませんが、戦闘かつ敵機による破壊の可能性が高い状況から判断し、緊急措置として強制的に記憶をロードしております。


「俺は狩谷武って言うんだ。俺の記憶がどこから来たのか分かるか?」

--不明です。

過去の事例でも原因は判明しておりません。


んぁ〜正直なにも分からないことが分かっただけだな。でも、過去にも同じ事例があったらしいことは救いだろう。調査の方法はおいおい考えるとして、この後の現実的な動きを考えるか。


まずはゼッケ君の記憶だが、だんだんと意識が馴染んできて自然に自分ごととして捉えられるようになった。昨日の思い出が2つあるという不気味な状態ではあるが、彼の記憶も自分のものとして認識できているのは間違いない。

武でありゼッケである混ざり合った状態というのが適切だろう。


戦っている時は、まだコーヒーとミルクが混ざりきっていない中途半端な状態だったが、今では均一なコーヒー牛乳になったようなイメージだ。


そう言えば、ナビの言葉もそのまま認識していたけど、日本語ではないよな。英語に近い気もするが武の知識では理解できない言語だ。覚醒直後は脳内に直接意味が響いてきていたが、今は耳からも聞き取れるようになっている。


イカン、考えが飛び過ぎる。

とにかく戦闘から生き残るために、まずは魔攻核シェルの機能確認だ。


ゼッケの認識では、この機体は剣が使えるだけの軽装タイプだったはずだ。何がどうやったらアーマード・シェルの初期機体になったのかを調べねばなるまい。

もちろん、修復や換装、弾薬の補給についてもだ。



ハルさんに根掘り葉掘り聞きながら動作テストを進めると、やっと仕様が分かってきた。

通常であれば魔攻核シェルは最初の魔導書ディスク登録時に、タイプを決めて実体化させる。リセットすれば初期シェルから再登録も可能だが、その時はまた最初から儀式が必要なようだ。普通は育てた魔攻核シェルを大切にするため、姿が大きく変わることはない。敵の核を吸収して成長する場合は、徐々に鎧や武装が変わったり体格ががっしりするなどの形で強化されていくだけのようだ。


これは魔攻核シェルを初期に構成するイメージが、あくまで「鎧の騎士」だったことが原因のようだ。ロボットという概念がない世界の人々には、人間が強くなるイメージしかなかっため、手足のパーツを交換するという発想自体がなかったのだろう。


俺の機体は換装が前提のモデルなので、イメージさえできればいくらでもパーツが変えられる。実際には、アーマード・シェルをイメージしたおかげで吸収した魔力をコストのように支払ってパーツを作る形になるようだ。



便利に使われる「魔力」という摩訶不思議パワーだが、この世界では物理法則に乗っ取ったエネルギーで、キチンと学問として研究されている。

だが、残念ながら仕組みはまでは解明されていないそうだ。ハルさんからも説明はなかった。

ま、異世界転生なんて、そんなもんさ。


理解した範囲で整理すると、こんな感じだ。


まず、搭乗者の魔力は生み出す力だ。

操縦、攻撃、魔法など、すべての動きは人の魔力がベースとなっている。

人の魔力が尽きると、魔攻核シェルも動けなくなるのだ。


次に魔攻核シェルの魔力は増幅の力だ。

核には魔導炉というタンクのような機能があり、人が使った力を増幅してくれる。巨体を動かすのも、魔法を撃つのもこの増幅機能があればこそだ。搭乗者とリンクしているので、他人が機体を動かすことはないらしい。倒した敵の核を使って自機を強化できるのは、魔力を吸収してタンクを増量しているようイメージだろう。


そして、大気に存在する魔力は、すべての根源だ。人の魔力も核の魔力も、大気から取り込んだものを使っている。

魔力が多いパワースポットに行けば、魔力回復量があがり、使える魔力も増える。薄い場所に行けば、魔力の回復が遅くなりまともに動けなくなることもある。まるで酸素みたいなものだ。


いまいち納得が行かない気もするが、そういうモノだと理解して付き合うしかないだろう。



気になる弾薬系の消耗品だが、これも魔力で解決した。この世界に実弾という概念はなかったが、矢を使う狩人型の機体は存在している。このタイプは魔力消費で矢筒を満タンにしているそうだ。俺の機体も魔力を込めて「リロード」と念じるだけで、マガジンがフルになるのを確認できた。とりあえず、今の俺の魔力があれば、初期装備は撃ち放題と思って良さそうだ。

今後強力な兵装を使えるようになった時は、ある程度の制限がかかるのでは、というのがハルさんの予測だ。


最後にお待ちかねの改造タイム。今回吸収した核の魔力を使って、まずはレーダーを強化する。マッピング機能や広範囲の索敵ができるのは、地味だが重要な改造ポイントなのだ。低価格でほどほどの性能を持ったレーダーユニットを選ぶと、左肩後方にいかにもなアンテナが付いたユニットが増設される。安さの代償にハードポイントをひとつ塞いでしまうのが難点だが、まずは情報入手を優先しよう。


次にライフルの弾丸をオプションで徹甲弾に変更できるようにする。これがあれば逃した盾持ちにも有効打が放てるだろう。現実には徹甲弾といっても様々な種類があるはずだが、ゲーム的には装甲貫通力がアップするだけの仕様だったので詳細は不明だ。特別な表記もないので硬くて重くて魔力消費が少し大きい弾丸という認識でいいのだろう。



さぁ、装備も記憶も落ち着いたところで、味方との合流を検討しようか。


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