馬鹿には見えない眼鏡
「こちら、馬鹿には見えない眼鏡で御座います。」
「馬鹿には見えない?」
「左様で御座います。」
「これが?」
「はっはっは、お客様にはちゃんと見えているようですね。」
「え?そういう話?」
「いえいえ、ただの洒落でございますよ。」
「じゃあ、どういう意味で馬鹿には見えないの?」
「それは、お客様が実際にお使いくださればお分かりになりますでしょう。」
「えぇ~、なんじゃそりゃ。どういうのか言ってくんなきゃ買う気になれないよ。」
「まあまあ、そう言わず物は試しですよ。一週間以内なら返金も受け付けておりますので…」
「そう?…いざ返金って時にごねないでよ?」
その眼鏡は全体的に細身に作られており、度が入って無いため視界に影響はなかった。
実際に着けて色々と見て回ってみたが、裸眼の時となにも変わらない。
もちろん、その眼鏡自体を色々な人に見せたが、どんな馬鹿っぽい人でもちゃんと視認していた。
ただ、周りからこう言われるようになった。
「お、眼鏡かけ出したのか。なんか頭良く見えるな。」
「眼鏡かけるとなんだかインテリっぽくなりますね。」
「似合ってるよ。前は馬鹿っぽい顔だと思ってたけど眼鏡のおかげでキリっとして見える。」
馬鹿には見えない眼鏡、その商品名は確かに間違いではなかったようだ。だが、こう言わずにはいられない。
「馬鹿馬鹿しい…」