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二度目のタイムスリップは平安時代〜がんばって料理でみんなを幸せにします!〜⑤

前回の続きです。

 結局凛桜自身はあまりこだわりはなかったので、瑞貴に着物を選んでもらってしまった。しかも、彼女が他のものを見ている間に勝手に買ってしまったので、まだどういうものなのかを見ていない。

(まさか、本人の許可なしで買うとは思わなかった…)

 うんうんと一人でうなずいていると、店主に金を払い終えたらしい瑞貴が、着物の入った風呂敷を持って戻ってきた。

「あ、ありがとうございました。持ちますね」

 言いながらその風呂敷を受け取ろうとしたら、彼はひょいとそれを交わした。

「え、なんで避けるんですか。何もしませんよ」

 少し不満そうに口を尖らせていう凛桜に、瑞貴は肩を竦める。

「阿呆め。女に荷物を持たせる男などいないだろう」

 予想外の発言に、彼女は目を瞬かせる。

「えぇ、そういうもんなんですか?私、昔からあまり男性と関わりがなかったのでわからないんですけど…」

「そういうものだ。こういう時、黙って男に華を持たせてやるといい」

 したり顔で言われてしまったので、凛桜は少し納得のいかなかったもののうなずく。

「よし。それで、次は調味料などを見たいと言っていたな?」

「あ、はい。あと食材もどういうものがあるのか知りたいです」

 平安時代には、現代に当然のようにあったものは果たしてどれくらいあるのか。もしかしたら、逆に現代にはない珍しい食材や調味料が、この時代にはあるかもしれない。

 そんなことを考えて、凛桜はこっそりと胸を躍らせたのだった。



 数時間後。凛桜は珍しい調味料や食材、既に知ってるそれらを見つけ、購入することができてとても満足していた。

 ほくほくと頬を桃色に染めている凛桜とは対照的に、瑞貴はげんなりと大量の荷物を持って眉間にシワを寄せていた。

(この女、確かに男に華を持たせろとは言ったがこの短時間で普通こんな量買うか?実は本物の阿呆なのかもしれない)

 瑞貴が失礼なことを考えているとはつゆほども思わず、凛桜は真上にある太陽を見上げる。

「そろそろ帰りましょうか」

「あ、ああ」

 その言葉に、彼は心の底からほっとしたのだった。



 屋敷に戻り、凛桜は瑞貴から受け取った調味料や食材を厨に置いていく。そこで、問題点があった。

 この時代、当たり前なのかもしれないが冷蔵庫がないのだ。瑞貴に聞けば良いのだが、彼は生憎つい先ほど出仕してしまって、今屋敷にはいないのだ。

「さぁてどうしようかな。明らかに要冷蔵のものもそこそこあるし、今日中に使い切れるわけもなし。うーん…」

 おそらく冷蔵庫の代わりになるものはちゃんとあるのだろうが、それがどれだか凛桜にはわからないのだ。

 顎に手を添えて悩んでいると、後ろから声をかけられた。

「どうかしましたか?」

「わぁ!」

 後ろに人がいると思っていなかったので、驚いて思わず声をあげてしまった。

「驚かせてしまってごめんなさい。何か困っている様子でしたので」

 声をかけてきたのは若菜だった。それに、凛桜は慌てて首を横に振る。

「大丈夫です!むしろちょうどよかった。あの、買ってきた食材などを冷やしておきたいのですが、そのような道具や場所はありますか?」

「それなら、氷室がありますよ。少し離れた場所にあるので、私が案内しましょう」

 朗らかな笑みを浮かべて言う若菜に、彼女は嬉しそうに笑った。

「はい、ありがとうございます」

 それにうなずいて、厨を出て行く若菜の背を凛桜は追っていった。



 屋敷の隣に、小ぶりの蔵のようなものがあることは知っていた。まさか、ここが現代でいうところの冷蔵庫だとは思っていなかった。

 若菜は用事があるとのことで、先ほど別れたばかりだ。

 いつまでも見上げていても仕方がないので、力を入れて氷室を開ける。

 鈍い音を立てて開いた隙間から、ひんやりとした冷気が漏れてくる。

「おぉ、すごい…ちゃんと冷蔵庫だ」

 感心している場合ではない。今日は暖かいので、春とはいえすぐに食材がダメになってしまう。

 早速持ってきた食材を氷室の中に運び、空いている場所に並べて行く。

 全て並び終えて、肌寒さを感じたのですぐに氷室を出る。

 と、扉を閉めたところでか細い声が屋敷から聞こえた気がして、隣を見る。

 美月が打ち掛けを羽織った姿で、廊下に出ていた。

「こんにちは、美月様」

「こんにちは、凛桜さん。今日は市に参ったのでしょう。良いものは買えましたか?」

 天気がいいからか血色の良い美月に安心しながら、彼女はうなずく。

「はい、おかげさまで。またおいしいものをお作りしますので、楽しみにしていてくださいね」

 朗らかに微笑む凛桜に、美月はとても嬉しそうに笑った。

「楽しみにしています。凛桜さんのお料理、私とっても好きなんです。それと…お願いがあるのですが」

 少し恥ずかしそうに口元に袂を持っていく美月を可愛いなぁ、と思いながら、凛桜はうなずく。

「なんでしょう?」

「私のことを、様付けで呼ぶのはおやめくださいな。凛桜さんとは、お友達になりたいのです」

 それに、彼女は目を瞬かせる。

(なにこの可愛い生き物。本当に同じ人間なんだろうか)

 思わず真面目に天使が目の前にいる、などと馬鹿げたことを考えて、答えのないことにより不安そうな顔をしている美月に気づき、彼女は大きくうなずいた。

「も、もちろんです!私で良ければ、美月さんのお友達になりたいです」

「ふふっ、嬉しい。ありがとうございます」

「ゔっ、可愛い」

 あまりにもその笑顔が輝いているので、直視できずに腕をかざす凛桜を、美月は不思議そうに見つめたのだった。



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