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二度目のタイムスリップは平安時代〜頑張って料理でみんなを幸せにします!〜④

前回の続きです。ようやく二章入りました〜

 第二品 椿餅〜桜の塩漬け風味〜

 瑞貴と別れた凛桜は与えられた部屋に入り、布団を敷いてそこにダイブした。

「っはぁぁー、つっかれた!」

 深いため息と共にごろんと仰向けになる。とりあえず、今後の住処と働き口は決まったのでなんとか一安心である。

 だが、卵のように平安時代には普段凛桜が料理によく使っている食材がなかったりするのだ。一応一通りの食材のの調理法は心得ているつもりだが、それでも作れないものや要望に応えられないものもいつかきっと出てきてしまう。その時、どうするのかが問題だ。

「うーん、そもそも平安時代ってどんな調味料があるんだろ。山とかがたくさんあるから、山菜とかには困らないだろうけど」

 むむ、と眉間にシワを寄せて、凛桜はすぐ横にある灯籠を見つめる。

 この時代には、電気がないのだ。当然、あかりも陽の光や月の光、火などに頼るしかない。調理もそうなので、洋菓子などは作ることはできないだろう。せいぜい作れて和菓子だ。

「まぁ、この時代に洋菓子の存在をする人なんていないだろうから、心配はないけど」

 小さなあくびをして、彼女は右腕を枕にして体を傾ける。

「明日、瑞貴さんに聞いてみなきゃな…色々と」

 そう呟いたのを最後に、凛桜はゆったりと意識を手放した。



 障子からとても暖かな光が漏れてきた。朝が来たのだ。

「ふぁぁ〜…って、寒っ!」

 おそらく今の季節は春だ。早朝はまだ寒い。

「…問題点、まだあった。私、着替え持ってない。というか、自分の荷物一切ない。どうしよ」

 少し考えればすぐに気づくことのはずだが、気づかなかったのはそれほど疲れていたのか、はたまた純粋に忘れていたのか。

「うわぁ、ていうかお風呂とかどうすればいいんだろ?平安時代ってお風呂あるのかな」

 いいながら、必死に辛うじて現代で習った古典の授業を思い出す。確か、平安時代は風呂という存在はなく、代わりに湯あみというものならあったはずだ。

 それができないか、瑞貴に交渉してみよう。

 そう考え、彼女はまだ少し眠りを発する体に鞭を打ち、自分の部屋を出た。

「あ、瑞貴の部屋知らないや…歩いてれば着くかな?」

 肝心の瑞貴の部屋の場所を知らないことに気づいて、彼女はため息をつき肩を落としながらも廊下を歩いた。

 


 廊下を歩いていると、バシャバシャとわりと勢いの良い水音が聞こえてきたので、首を傾げながら音の方へと足を向ける。

 水音の正体は井戸で顔を洗っていた瑞貴だった。

「あ、いた。おはようございます」

 手拭いで濡れた顔を拭きながら、瑞貴はうなずく。

「おはよう。早いな」

「そうですか?今日は天気がいいので、日光が眩しくて目が覚めちゃったんですよね」

「なるほどな。それで、俺に何か用か?」

 それに、彼女は一つうなずき、口を開いた。

「あの、着替えとかってどうすればいいでしょうか?私、本当に身一つでここにきてしまったので、できれば用意していただけると嬉しいのですが…」

 流石に申し訳なく思って徐々に声の音量を下げていく凛桜に、彼は目を瞬かせたあと、吹き出す。

「お前、変なところで気を使うな。料理をしている時はなんの遠慮もせずに台盤所を使っていた上に、俺のことをこき使ったくせに」

 くっくっと喉の奥でおかしそうに笑う瑞貴に、彼女は徐々に顔に熱が集まっていくのを感じた。

「すみませんでしたね、こきつかって!ていうか、あれは私が指示したんじゃなくてご自分で持ってきたんじゃないですか。勝手に人のせいにしないでください。おかげで助かりましたけど!」

 その返答に、彼はにやりと口の端を上げる。

「確かにな。まぁ役に立ったならよかったじゃないか。それで、着替えの件だが、朝餉の後、市で着物を買いに行こう。それまでは悪いがそのままでいてくれ。母上か美月のものでは少し大きいからな」

 凛桜は、はっきりいって小柄だった。瑞貴と並べば頭一個分とさらにすこし差がある。また、彼女は自分の背が低いことをそこそこまぁまぁ気にしていた。悪気はないのだろうが、自分の気にしているところを指摘されて、すこしふてくされる凛桜である。

 若干しかめっ面になった相手に、彼は不思議そうに首を傾ける。

「どうした?」

「…いえ、なんでもありません。ありがとうございます」

 まぁ、それはおいておくとして。とにかく、今日市に行けるというのは嬉しいことだ。この時代にある食材や調味料を知ることができる絶好の機会である。

 そう考えて機嫌を直し、一つうなずく凛桜を見て、瑞貴はさらに不思議そうな顔をしたのだった。



 朝餉を済ませた後、瑞貴と凛桜は市に足を運んでいた。

 ちなみに、朝餉は凛桜が用意した。瑞貴と若菜、自分の分は通常の和食を作り、美月には体に良い蕎麦湯を使ったおかゆを用意したのだが、とても絶賛されて他の二人に羨ましがられていた。

 さて。

 改めて、凛桜は市を全体的に観察する。思っていたよりも賑わいがあり、繁盛していた。案外、貴族たちの食事の材料などを買い求めに、料理人や家人たちが足を運んでいるのかもしれない。

「まずはお前の着物を見るか。衣類を扱っているのはあそこら辺だな」

 物珍しそうに市を観察する凛桜に苦笑しながら、瑞貴がいくつかの店が固まっている場所を指差す。確かにそこには色とりどりの服や小物が並べられていた。

(ていうか、今更だけど着物とかって高いんじゃ…普通に美月さんと若菜さんのお下がりかなんかもらえればそれで十分なんだけど)

 そう思って、彼女が口を開きかけたところで瑞貴がさっさとその店を目指して歩いて行ってしまう。

 それに、彼女は嘆息混じりにその背を追った。

 追いついて、並べられている着物を物色する瑞貴に、凛桜は口を開く。

「あの、やっぱり買うのは勿体無いと思うので、美月さんや若菜さんのお下がりとかで十分ですよ」

 それに一泊置いて、瑞貴が口を開いた。

「いや、お前は見た目にそぐわず大人びた顔立ちと雰囲気をしている。あの二人のお下がりだと少々似つかわしくないから、新しいものを買った方がいいだろう。それに我が屋敷で働くからには、それ相応の格好をしてもらわねば困るからな」

 すこし言い方が癇に障ったところもあるが、一応褒められているようなので凛桜は口をつぐむ。家の家長であろう瑞貴にこう言われてしまえば、彼女に言い返すことは出ない。

「じゃあお言葉に甘えます。そんなに高いものじゃなくていいですからね」

 一応念を押しておいたが、なんの反応も返ってこなかったのでおそらく聞いていないだろう。

 諦めたように嘆息して、凛桜もまた並べられた着物たちを物色し始めた。

 



 

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