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秘書達に笑顔で見送られ、再び手を掴まれ、連行。
「何を食べに行くんですか?」
エレベーターで2人っきりになると、わたしは秘書としての顔を止めた。
「お前の秘書課移動祝いだ。何が食いたい?」
と言うことは、社長のオゴリで、わたしの好きなのを選んで良いってことか。
「お寿司が良いです! マグロが美味しいところの」
なら遠慮なく、奢られよう!
「分かった。マグロが美味い寿司屋だな」
社長の優しい微笑みは、上司として浮かべる顔ではない。
彼も今だけは、社長の顔を止めている。
彼もまた、わたしを妹のように感じてくれているんだろうか?
それならば、素直に嬉しい。
わたしは一人っ子で、人見知りするタイプだった。
だから甘えられる人は、なかなかできなかった。
彼のような存在は、どこか安心できる。頼りになるからだろうか?




