24/40
24
イギリス人とのハーフなだけに、アンティークドールのように美しい人だ。
本当に生きて、動いているのが不思議なぐらい、キレイな人。
…この人がわたしの上司なのか。ちょっと気が重いな。
帰る準備をしていると、社長室から社長が出てきた。
「お帰りですか? 社長」
平の秘書達(わたしも含め)が頭を下げる中、課長が前に出て社長に尋ねる。
「ああ、ゆかり。お前も仕事終わったんだろう?」
「引き継ぎは何とか…」
いきなりの人事異動だったから、細々としたことがまだ残っていた。
多分、1ヶ月は事務と秘書を行ったり来たりになる。
「そうか。なら食事に付き合え」
「…はい?」
えっと、もう定時は過ぎていて、わたしは自由の身のはず…。
「社長としての命令だ。付き合え」
がはっ!? けっ権力を盾にするとは卑怯なりっ!
「…分かりました。お付き合いいたします」
…しかしわたしは権力に弱い小市民だった。




