いつも楽しくて、いつも会いたい。
初めてなので、誤字脱字、文がおかしいところがあると思いますが、お許しください。
まだストーリーは全然進んでいません。
「先生、今日は家事の当番なので、帰ってもいいですか?」
「お家の手伝い?偉いわね。でも、まだ午後の授業がありますよ。」
「でも、あと少しで帰ってくるんですよ。」
「まさかお母さんが?」
「いいえ、幼馴染と親友が。」
「あら、そうなの!なら仕方ないわね。柳さんたちによろしくね。」
「はい。…あっそうだ!みんな今度先生にお会いしたいと言っていました。機会があれば、いつでも声をかけてください。」
突然の二人の会話にクラスメイトは固まった。自分たちの担任と、生徒の一人である水川夏海はクラスの静かさをわかっていないのか、話をどんどん進めていく。空気は教卓の一番前の席だけ華やかで、それ以外は教卓を見ていて唖然としていた。
頭の良さそうな学級委員も、完璧主義者の風紀委員も、どこかのイケメンも、クラスのムードメーカーも。
そのあとも、何分か水川たちは話していたが、それが終わったのか水川は帰る準備をしていた。新入生特有のピカピカのバックに午前までの授業の教科書を入れていく。
雰囲気はなんだかいつもより明るかった。
「えっ、待ってよ夏海。なんで帰るの?」
クラスで一番仲の良い、陸上部の女の子が聞いていた。水川は少し笑って言った。
「久しぶりなの、4人揃うのは。また明日ね!」
「ちょ、夏海?!」
そう言って、水川は、最後に先生に一礼してから教室をあとにした。その顔は清々しくて、キレイで、明るかった。黒くて長い髪が完全に廊下から消えると、クラスメイトは一気に喋り始める。
「先生!今のはなんですか?!なんで水川だけ先に帰ってるんですか?!」
どこかのイケメンは、少し大きな声で先生とみんなに同意を求めている。みんなは同じことを思っていたので首を縦にふった。
「さっきの夏海、ちょー可愛かったんだけど。写真取ったけど誰かいる?」
水川と仲の良い女の子はスマホを片手に言う。
「親友って私のことじゃないのー?あー、でも夏海ちゃんたしか甘路中から一人なんだっけ?」
ぶりっ子の可愛い子は、隣の男子に問いかけた。
「みんな、落ち着いて。今、わかると思うけど、水川さんは家の都合で帰りました。オッケー?」
先生はウィンクして言うが、生徒たちにはいまいち伝わっていない。そんなことを言われても、今のもやもやは解決しない。それに先生がそのことを隠そうとしているから、さらにみんなの謎は増えるばかりだ。当の先生は最近の子はわかってないわね、とババ臭いことを言って授業を始めようとする。チャイムが鳴ると、
「学級委員、お願いします。」
と、頭の良さそうな学級委員に目線を向け、号令をするよう促した。学級委員は、先生の行動を不思議に思いながら号令をかける。クラスメイトは納得なんかしていないけど、授業についていくため、教科書とノートを開いた。
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「あ!夏海ちゃん!!いらっしゃい!」
私は商店街で買い物をしていた。私の古びた自転車が空気をなくしていたので、スーパーまで行けれなかったけど、商店街にもいいのはいっぱいある。行くのは久々だ。今日、学校は違うけど、一緒に住んでる幼馴染と親友が帰ってくる。最近はテストやら部活やらその他のことで帰ってももう寝ていたり、逆に私が寝ていることがあって、まともに顔を合わせていなかった。今日はたまたまみんなの都合があうから、集まろうとラインが来た。私は見凪先生が優しいから頼み込んだんだけどね…。しかも今日は当番ときた。毎週金曜だけ私が担当だ。みんな私に遠慮して家事を押し付けてこない。だからこそ、週一回のこの日だけは、家事を完璧にこなす。
「夏海!やっぱり金曜はいつも機嫌がいいね!!兄ちゃんサービスしてあげる!」
商店街を歩いていたら、横から話しかけられた。あの甘ったるい声とここの店の位置は…。
「あー。お久しぶりです、クソ男…ゲフンゲフン、新次郎さん。」
この人はクソ男もとい魚屋の新次郎さん。前ナンパされて追い返してから知り合った。まぁ、あつきが吹っ飛ばしてそれは解決したけど。
「あのときはお世話になりました。」
「君の幼馴染にふっとばされたけどね!」
あのときの傷がまだ顔に残ってたけど、新次郎さんはそこまで気にしてなさそうだった。そういえば、少し前に男の勲章だ!とか言って、近くのおばちゃんに話してたけど。
「そういえば、伝言を預かっています。今度したら大人だろうとただじゃおかない、ですって。」
「そう、やっぱ愛されてるね〜。持ってる人は違うなぁ〜。」
「何言ってるんですか。今度こそしばいてもらいましょうか?」
「おっかない、おっかない。はい、八百屋からもらったりんごあげる。」
そう言って新次郎さんは紙袋に入った何個かのりんごを渡してくれた。多分全員分のをくれたのだろう。
「…魚屋のプライドないんですか?」
「なんか八百屋のねーちゃん俺のこと狙ってるっぽいから、サービスできるんだよ♡」
「クズですね。黙ってればモテるんじゃないんですか?」
わざと『黙ってれば』を強調したけど、それを聞いていなかったのように話し出す。
「俺は、君みたいな強くてきれいな女性に愛されたいけどね!」
「それ、八百屋の人に言ってあげましょうか?」
「またまたー。そんなこと言っちゃってかわいー。」
「黙ってください。………りんご、ありがとうございました。」
「ツンデレ超かわい!!!」
ドゴッ 「ゲフッ!」
新次郎さんが私に近寄ってきたとき、横から拳が出てきた。それは今まで考えていた人物の一人だった。
「…あつき、やりすぎだよ。」
「これぐらいやんねぇとまた繰り返してくるだろ。」
「でも、新次郎さんは別に悪くないじゃない?」
「…なんかムカつく。」
「大雑把。」
「お前に言われたくねぇ。」
それがあつき。小泉あつきだ。部活の帰りなのか、サッカーボールとユニフォームの入ったバックを持っていた。サッカー部員の本気のパンチは痛かったんだろう。新次郎さんは魚屋の前で倒れていた。それを近所のおばちゃんたちは笑う。もちろんからかっているわけではなく、またやっているな、の方。あつきは何人かのおばちゃんに話しかけられていた。
「あつきちゃん、久々だねぇ。今日は夏海ちゃんとデートかい?」
おばちゃんはあつきをちゃん付けしていて、それが面白くて笑ってしまった。あつきは『デート』のフリーズを聞いて一瞬固まったが、すぐにいつもの顔に戻っておばちゃんに返事をした。
「いえ、たまたま会っただけです。今から帰ります。」
「見ないうちに男前になったねぇ。前はあんなに小さかったのに。」
「…人は成長するものですよ。しょうがないんです。」
「そうだねぇ。また今度遊びにおいで。」
「はい。」
あつきは人の良さそうな笑みを浮かべる。その笑顔は嘘か本当かはわからないけど、楽しそうだから別にいい。
「おい、帰るぞ。」
「はいはい。」
「はいは一回だ。」
「はいはい。」
また繰り返しやがって…みたいな顔をしてあつきはこっちを睨んできた。ハァ…とため息をついて買い物袋の中を見ながらつぶやく。
「……今日、飯は?」
「夏海さん特性のオムライスだよ〜、好きでしょ?」
「あぁ。」
その答えに私はびっくりした。その場に立ち止まってよく回る頭で考える。こいつは私のオムライスが好きといったのか?この私に対して超クールな野郎が?
「……やけに素直ね。」
「お前のその顔が見たかったからな。」
「はっ?どういう意味…?」
「アホヅラ。」
そう言うと、あつきは私のおでこにデコピンしてから、買い物の袋を持って先に歩いてしまった。一瞬呆けてしまったけど、すぐに我に返って後を追う。
「…やっぱり、みんな黙ってればモテるものね。」
「そうだな。」
少し無言で歩いていると、小学生が何人か横を通り過ぎた。トンボを追って、女の子と男の子が走っている。なんとなく学校のことを思い出して、話を切り出した。
「…学校はどう?毎日楽しい?」
「俺のほうが聞きたいわ。甘路中の天才様は、名門校でどんな状況なのかね。」
私の通っていた甘路中。その中でここらの中でトップ。日本でも五本指に入るくらいの高校に私は通っている。そこでは自分のやりたい勉強ができるのでとても充実している。でも、天才様という言葉はそこまで好きじゃなかった。天才という一言だけで、多くの努力が消えてなくなるから。
「…あんまりそういうこと言わないで。私は運が良かっただけだよ。」
「あいつらには無かったと?」
「あんまりからかわないでくれる?怒るよ。」
「すいませんよ。ま、さっきのお返しとでも考えてくれ。」
「悪趣味ね。」
「それほどでも。」
あつきはニヤニヤしてこっちを見る。その顔にいらついて足でとりあえず蹴った。
「…そうだ、見凪先生がまた会いたいって言ってたわ。好かれてるのね。」
見凪先生のあの顔を思い出す。私は見凪先生が好きだ。甘路中にいたときも、私達のことを一番心配してくれて私達を支えてくれた。それが嬉しくて、休み時間は4人で見凪先生と話していた。その時から、だんだん私達の『得意』が強く出てきて、クラスメイトに煙たがられたときも、自体が悪化しないようにしてくれた。そんなこんなで、高校に行ってからも、みんな個別で先生に会っていた。
「好かれてんのはお前もだろ。ま、見凪先生には感謝してもしきれないしな。あいつらも会いたがってた。」
「私は好かれているかはわからない。でも、あんたたちが会いたがってたのは知ってる。だから、今度みんなで会わない?」
「都合が合えばな。」
「そんなの言ったら無理じゃない。みんな忙しいんだから。」
「お前も忙しいだろ。」
「私が忙しいのはあなたたちのおかげよ。いつもありがとね。」
「やっぱみんな都合が合うのは難しいんじゃないか?」
じゃあだめじゃない。私は5人で集まりたいの。そんな話をしているとき、私はあつきが持っているカバンを見て思った。
「あつき、今日商店街を通ったのはたまたまじゃないわね?だって部活帰りにしても靴が汚れてなさすぎる。屋内シューズを持っているってことは体育館での試合?だったらこのあたりはないはずよ。ど田舎だもん。わかりやすすぎるのよ、あんた。」
そう言うと、あつきは驚いた顔をしたけどいつもの余裕顔に戻って、どっかの主人公が良いそうなセリフを吐く。
「迷子の姫さん迎えに来てやったんだよ。」
「迷子になんかなってないわよ。白馬の王子?」
「昔はノリこんなに良かったっけ?お前もうちょっとミステリアスっぽかったけど?」
「あんたたちについていくためよ。」
「どういう意味だよ。」
「一緒にいて楽しくて、ずっとそこにいたくて、幸せを手放したくないから、私自身も変われるのよ。」
「お前の本体どこにあんの?」
「私の本体はここにあるじゃない。」
今度はあつきがその場に立ち止まった。私は後ろを振り向いてあつきを見た。あつきの瞳に写っているのは私。私を借りた私。そして夕日を背につぶやく。
「前から聞きたかったけど、もし俺らと自分の命が消されるとしたらどちらを選ぶ?」
「もちろんあんたたちよ。私、頭良いから人数的にあんたたちを助けるのが当たり前でしょ?」
「…なんで即答なんだよ。」
「あんたがなんでそんな顔をしているかわからないわ。」
ずっと歩いていると、空がだんだん暗くなってきた。あつきと私は日が沈む瞬間を見て、上を見て、一番星を見つけた。
「早く帰りましょ。運動したんならお腹空いたでしょ?」
「…昔はなんでも言えたよな。」
「人は成長するものよ。しょうがない。」
「真似すんな。」
「私の意見よ。」
あつきは、一拍おいて、つぶやいた。
「そうかならいい。」
あつきは今日見せた中で一番の笑顔で言った。その顔がとても嬉しそうで、偽物ではないことがわかった。なんでこんな笑顔なのかわからないけど。
「久々に勝負しない?体がなまってるの。」
「1回も勝ったことないくせに。」
「えぇ。だから、あんたはその荷物を崩したらそこで負けよ!お先!」
「ずるっ!さすが天才。」
「ありがとう♡」
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そこは大きな家。一人の女子高生が帰ってくるが、家族がいるにしても、少し手に余る家だった。田舎にポツリと建っている豪邸。近くから噂もされていた。女子高生はすでに電気のついていた家の中に入り、ソファに座っていた人物のところにカバンを投げつけ、向かいのソファに座った。
「おーなーかーすーいーたぁ!!!!!」
「黙れ、太るぞ。」
「あぁん?せっかくみんな集まれるんだから嬉しい顔しろよ。」
女子高生は向かいに座っている男子高校生に話しかけるが、男子高校生は本を見ながら返事した。それで返されたのと、悪態をつけられたのにムカついた。せめて邪魔してやろうとテレビをつけて音を大きくした。男子高校生は困ったように前を向いて本を閉じ、ため息をついた。かまってくれなくて、すねている子供のようにイライラしている女子高生に話しかけた。
「別にお前とはいつでも会えるだろ。玲奈。」
「……そりゃあそうだけどさぁ?学校じゃあんま話さないじゃん。優弥とさ。それにみんな最近仕事忙しいし。」
「…そうだな。最近歌い手の仕事はどうだ?」
「なめてもらっちゃ困りますねぇ〜。ま、あの二人は疎いから知らないと思うけど、これでも超有名なんだけどなー。」
「あぁ。今度は何万寄付したんだ?」
「あんたは知ってるでしょ。五千万だよ。いつも決まった値段じゃん。」
「その金をぽんと払えるのがすごいな。顔出しNGのアイドル。」
「うるさいなー。お腹空いたんだけど。」
「もうすぐ夏海が帰ってくるだろ。待てや。」
「優弥くんたらぁ〜、夏海のことがそんなに恋しいの?」
「お前の頭おかしいよな。」
「うるせーよ。恋しいのはこっちだバーカ。」
「勝手に弱みを暴露するな、調子狂う。」
ガチャリ。扉が開く音が聞こえると、玲奈は嬉しそうな顔をして玄関に向かった。そこには汗をかいている二人の姿。驚いたが、負けず嫌いの夏海が勝負したんだろうと思って、あつきの荷物を持ってあげた。
それを、。
あとからのそのそ出てきた優弥に渡す。優弥は玲奈を膝蹴りして荷物を受け取る。まだ息が切れている二人を引っ張って、部屋の中へ入れた。
「「おかえり。」」
「「ただいま。」」
「おなた空いたー!!ご飯作ってー!!」
玲奈はお腹を鳴らして言った。玲奈はいつも、金曜日だけは親友の作るご飯を美味しく食べたいがため、昼飯を少なめにしている。そのことに優弥は気づいているが、特に知る必要がないだろうと二人には話していない。
それでも、親友のために自分を犠牲にできる精神は尊敬していた。ちゃんと調節もできているし、こっちに迷惑をかけないよう考慮している。
「今日オムライスだよー。あとりんごもらったからお風呂上がりに食べよ!」
夏海は紙袋を探り、赤いりんごを出した。優弥はどうせ新次郎とかいうやつだろうな、と思い、あつきに目線を合わせおつかれさまと口パクで言った。あつきは玲奈に渡されたタオルを首にかけ、お前もなと口パクで言った。
その間に女性陣はキッチンへ向かっていた。玲奈も手伝っているのか二人の鼻歌が聞こえてくる。
あつきと優弥は大急ぎで電卓とノートを引っ張り出した。
家計簿ノートと書かれた大きな一冊のノートにここ何日かの出費を計算していく。
男性陣は事務仕事を基本的にしなければならないことになっている。それはもちろん理由がある。
まず、玲奈に任せるといつまで経ってもノートを書かず、放ったらかしにして、結局優弥がすべて覚えていなければならない。夏海の場合は仕事こそちゃんとするが、深く考えすぎていつまで経っても終わらない。徹夜までするので、あつきが止めた。
だからといって、女性陣がいる前ですると、玲奈は拗ねるわ。夏海は自己嫌悪に入るわでめんどくさい。
だから結果的にこういうときぐらいしか集中して記録できない。
お互い苦労しているな、と相棒に声をかけ、二人は計算を続けるのだった。
「ご飯できたよー!!!」
「食べよ?」
あつきと優弥はサッとノートを隠してリビングへ向かった。
「ね!すごくない!これ、たんぽぽオムライスっていうんだって!」
「夏海にこんなもの作れる脳があったんだな。」
「殴ろうか?あつき。」
「玲奈、お前は女子力のカケラもないと思っていたが、たんぽぽオムライスの存在を知っていたんだな。」
「黙れ、クソ優弥。」
少し変かもしれないけれど、これが私たちの普通だ。母親と父親の代わりに最愛の友が家で待っている。
自給自足の毎日で、顔は合わないことが多いけど、これでも十分うまくやっている。
いつも明るく照らしてくれてありがとう。あなたがいつも私たちのこと思っていてくれる事知ってるわ。私みたいなのでも、生きる価値をくれてありがとう。玲奈。
いつも迎えに来てくれてありがとう。新次郎さんは悪い人じゃないけど、守ってくれてありがとう。本当に白馬の王子様みたいだよね。いつも支えになってくれてありがとう。いつもかっこいいよ。あつき。
頭いいよね。いつも私たちをどこかで止めてくれるよね。あなたはたしかに受験に失敗したけれど、努力も、涙も、すべて知ってる。それでもあなたのそばにいられるのはあなたがすごく偉大な人と知っているからだよ。優弥。
読んでくださってありがとうございました。