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社長来襲とスクロール

スクロール


それはダンジョンのモンスターからドロップするアイテムの一種だ。

スクロールは大きく分けて二種類に分類される。


使用型と習得型


使用型はそれ自体強力だが1回限りで消滅してしまう消費型アイテムである。


それに対して習得型は同じように1回限りで消滅してしまうが、そこに書かれているスキルを習得することが出来るアイテムである。


スキルを習得する場合、レベルアップ以外で習得するのはスクロールからしか今のところ見つかっていない。

そして、レベルアップではいくつかの前提スキルを覚えないと習得できないスキルもスクロールからならば習得可能である。

その上、スクロールからしか習得できないスキルも存在する。


それが呪文等の術式スキルである。


ネットによると、スクロールの違いは“持てば明らかに判る”と書かれていた。

実際にドロップした三本は明らかに違っていた。

触った時に何かが流れ込むようなそんな感じがするのだ。


(これが習得型か。)


ダンジョン協会の受付にその感じを確かめながら鑑定を依頼する。


「スクロール三本と短剣二本、盾一枚の合計五点の鑑定ですね。

鑑定金額は合計で五万円いただきます。」

「はい、鑑定金額はこの銀鉱石の下取りからお願いします。」


ダンジョンが出現するまで、銀の価格は70円/g程度だった。

だが、ダンジョンから良質の銀(ドロップされる塊が純度100%である)が手に入るにしたがって、根は暴落し今では5円/gである。

ドロップ品の銀は約15kg、手数料を引かれて買取価格7万円と言ったところだ。


金の場合はそれほどではなく(でも下がっている)3千円/gである。



現場事務所に戻ると社長が来ていた。

この時間に来るとは嫌な予感しかしない。


「いやー、和泉君おかえり、お疲れだったね。」

社長はニコニコと話しかけてくる。


「で、今回のドロップはどうだった?」


「・・・スクロールが三本と短剣が二本、盾が一枚、鉄鉱石が9つ、銅鉱石が5つ、銀鉱石が1つですね。」

後々、文句を言われない様に正直に話す。


「銀鉱石!」

社長は獲物を見つけたかのような声を上げる。


(嫌な予感が的中か・・・。)


「和泉君。仕事の時に得た収入は会社の物では無いかと思うのだがね?」


(社長には悪い癖だ・・・。)

事前の取り決めで、ダンジョンの収入は俺の物になることになっている。

製品のテストが仕事内容だからだ。

だが、社長はドロップ品が収入になることをどこかで知ったのだろう。

利益を得ようと無駄な行動をする。


「社長、ドロップ品は私の収入になることになっていましたよね?」

「だけど仕事の時に得た収入じゃないか・・・。」

あくまで利益を得ようとする、だが、


「それと、銀鉱石の収入は物品の鑑定料で消えましたよ。

何なら鑑定料も出していただけるのですか?

五万円ですが・・・。」

「五万円・・・そんなにするのか?もうちょっとまけてもらえば・・・。」

「社長。法人格である協会が割引なんかしてくれるはずが無いでしょう。」

「うむうう。しかし五万円・・・。」


この社長は利益を得ようと無駄な努力はするが、自分が現金を出すとなると極端に出し渋る。

(ま、だから金持ちになっているのかもね。)


「仕方がない。だが、次は考えてくれよ。」


「だめです。」

きっぱり断る。

この社長、迂闊に返事をしたり、スルーしたりすると、勝手に解釈をして、収入を得られるものと考える。

心証を悪くするが、ここは断るしかないのだ。


俺が断ると、これ以上は無理だと悟ったのか、社長は帰っていった。

一体何しに来たのだろう?



「和泉さん。大丈夫ですかね?」

心配そうに兵庫が聞いてくる。

「大丈夫だろう??」

「いや、スクロールとかですよ。」

「あ、そうか!」


スクロール自体、世間の流通は少ない。

従って、取引価格は物によっては結構な値段になっている。


「よし。社長が来る前に使ってしまおう!」

「それが良いと思いますよ。短剣や盾は問題が無いと思いますが・・・。」



その五日後、ダンジョン協会から鑑定終了のメールが入った。

このメールは会社には送られていないので今から引き取りに行けば問題は無いだろう。

俺は慌てて、ダンジョン協会の窓口に急ぐのだった。




「で、和泉さん。スクロールは何だったのですか?」

現場事務所に帰ると兵庫が訊ねてくる。


物品探査ロケートオブジェクト


身体強化フィジカルエンハンス


分光粉塵プリズマティックダスト



「・・・何か、微妙ですね。」


身体強化フィジカルエンハンス以外、微妙なのだ。


物品探査ロケートオブジェクトは探査と言っても、よく知っている物しか探査できない。

分光粉塵プリズマティックダストに至っては色々な粉が(少し魔力を帯びている)出るだけだった。



「まったく微妙な呪文だ。」


次はこの微妙な呪文の使い方を考えてみるか・・・。


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