期待すると裏切られるのはいつもの通り
和泉はワクワクしていた。
狂戦士のあの装備はちょっとしたあこがれがある。
クロスボウのレバーを回すだけで無数の矢が次々に飛び出し魔物を倒してゆく。
それが再現できると思うと足取りも軽くなると言う物である。
「今日はご機嫌ですね和泉さん。」
すっかり顔なじみになったダンジョン協会の受付嬢が声をかけて来る。
「いやぁ。会社の方から新たな試作品が届いてね。」
「それは楽しみですね。頑張ってください。」
どうやら顔に出ていたらしい。
普段ダンジョンに向かう時は難しい顔をしているのにニコニコしながら向かっていたらしい。
「今回は間違いのなさそうな製品だな。」
いそいそとクロスボウをバックパックから取り出す。
(うん。この重厚感、やはり狂戦士さんのクロスボウだな!)
取り出したクロスボウをしばらく眺めた後、左腕に固定する。
クロスボウはベルトで左腕に固定され、ちょっとの事ではズレない。
(うん、いい出来だ。)
まだ弾倉?は付けていないがレバーを回すことでクロスボウの弦を自動的に引くを事が確認できた。
その状態で構えてみる。
少し振られる感じがするが使えそうだ。
(さて、最初の目標は・・・お!)
クロスボウの最初の犠牲者は向こうからやって来るゴブリンが良さそうだ。
おあつらえ向きに三匹いる。
ゴブリンを倒すためにクロスボウに弾倉を装填する。
い?!
重い。
左手がすごく重い。
何とか持ち上がるが、レバーを回す余力なんてない。
狂戦士さんは鉄の塊の様な大剣“ドラゴンバスター”を振り回せるほのの人間である。
その力を基準に作ったとすれば、一介のサラリーマンに扱えるはずはないのである。
幸い、ゴブリンはこちらに気付いていない。
今のうちに次の装備に替えるか・・・。
そうして取り出したのは、何時もの弓と新型の矢である。
新型の矢の先の方には乾電池ほどの大きさの物が突き抜けている。
(説明によると弓を打つ時に矢についている紐の輪を抑える事とゴーグルを掛けろと言われたな。)
俺は言われた通りにゴーグルを掛け、ゴブリンに狙いを引き絞る。
その際、紐の輪を抑える事を忘れない
シュパッ!
鋭い音共に矢が飛んで行く。
それと同時に
ジャッ!!
と音が聞こえたと思えば、矢から火が噴きだした。
矢は火の粉をまき散らしながら飛んで行く。
あちあちあち
手や顔に火の粉がかかりとても熱い。
(これゴーグルが無いと火の粉を直に被るじゃないか。)
矢は通常の矢より少し早いぐらいの速度でゴブリンの一匹に刺さった。
ん?何も噴出さないぞ?
もう一度、熱い目に会いながら矢を撃つ。
やはり少し早いぐらいの速度で当たるが何も噴出さない。
・・・・・
どうやら噴き出すのを間違えているらしい。
威力も若干上がっている様だが、
これではただ単に早いだけの矢である。
火薬で加速しても重くなった為、速度はあまり上がっていない。
(・・・役に立たねぇ)
接近するゴブリンをいつもの様に槍で始末しつつ、今日の報告を考えるのであった。
後日、補助輪の様な物が付いたクロスボウが届けられた。
コレジャナイ。