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油断大敵

現場事務所に戻りドアを開けると兵庫が声をかけてくる。

「和泉さんお帰りなさい。早かったですね。」

「ああ、ちょっとアイデアが浮かんだんでね。」

細井は相変わらずブラウザーゲームの様だ。

邪魔さえしなければ気にしない事にしておこう。


席に着くとPCを起動しデザインソフトを立ち上げる。


1センチぐらいの大きさの高分子吸収剤は水分を吸収すると野球ボールぐらいの大きさになる。

それを乾燥させ元の大きさに戻すのだが、携帯性を考えるとバックパックの横に取り付けれる形が良いだろう。

と、長方形のバックパックの横に細長く携帯乾燥機を書いてみる。

バックパックを背負った場合の腕の可動域を考慮してもらう為に腕が当たらない事と注釈をつける。


「よし、こんな形でいいだろう。寸法とかは向こうで調整してもらうとして、兵庫君どう思う?」

出来た概略図を兵庫に見せてみる。

「うーん。携帯用乾燥機ですか。いるんですか?」

「スライムには高分子吸収剤を使うだろう。」

「ああ、そうかそれを乾燥するために、良いんじゃないですか。持ち運びには小さい方が良いし。」


現在、ダンジョンでゴミを捨てることは禁止されている。

と言うのも、ダンジョン内で残されたゴミが宝箱に入っていることがあったからなのだ。

これはダンジョンで全滅したパーティの装備品が時折り宝箱から発見されるのと同じ理由だと考えられている。

流石に価値が低いためか浅い階層にしか出ないが、それで生活している者にとって深刻な事態になる。

その為、ダンジョンではゴミを捨てることが禁止されたのだ。


「よし、この案でFAXしよう。工場の森さんなら今週中に試作するだろう。」

工場の森さんは六十歳を超えたベテランの職人で、大抵のものは三日ぐらいで作ってしまう。

会社にFAXを送りながら時計を確認する。

「お、もうこんな時間か。兵庫君、帰りに飯でもどうだ?」

「いいですね。今日はラーメンでもどうです?」

「いいねぇ。豚骨系をガッツリ食べに行くか。」



次の日もダンジョンにこもってアイデアを探す。

兵庫と細井は探検者免許を取る為の講習を受けに行っている。

やはり人数不足は否めない。

今は良いがそのうち人手不足になる予感がする。



そして一週間が過ぎた頃のある日、机の上にビールサーバ―が置かれていた。


「・・・・・」

「どうだね。チミのりくえすと通りに乾燥機を作って来たぞ。」

「えーっと。FAXではテニスボールの缶ぐらいの大きさだったと思いますが・・・。」

あまりの大きさに訊ねてみる。

すると社長は

「うん?あれじゃ小さすぎるから大きくしたよ。大は小を兼ねると言うから大丈夫だろう。」


社長は説明を始める。

「ほら、この後ろには背負えるようにベルトをつけたよ。」

「・・・・・」

「ベルトは前で止める様になっているから簡単には外れないよ。」

「・・・社長。バックパックはどうやって背負えば?」

「そんなもの横に引っ掛けとけばよかろう。」


頭が痛くなってきた。

「うむ、感動で声も出んか。では早速これを試しに“だんじょん”へ向かってくれ。」

社長はビールサーバーの様な乾燥機を俺に押し付け帰っていった。


「和泉さん。ご愁傷さまです。」

「くそ!油断した。社長が間に入ると何故こんなことになるのだ??!」

「運命だな。」

そう呟く細井を睨むと

「おっと行けない俺は仕事が・・・。」

と言ってブラゲーを始めた。


森さんには途中経過を確認すべきだった。

だが、いまさら言っても始まらない。


「仕方ない。これバックパックに入るかな?」

試すと何とか収納できたが、その分の収納が減った。

これは冒険者にとって死活問題だろう。


収納が減る=収入が減る


(収納を増やすための乾燥機が収納を減らしてどうするんだ。)


考え込んでも仕方がない。

ダンジョンで試すとするか社長が手を加えたと言っても基本は変わらないから問題は無いだろう。


と、この時はそう思っていた。



「そろそろ高分子吸収剤がいっぱいになって来たな。」

元々、レベルが低いので収納量はそう多くない。

その上、ビールサーバーじゃなく乾燥機を入れているからそれほど多く収納できるわけではない。

大きくなった高分子吸収剤を乾燥機入れスイッチを押す。


乾燥機を背負い、バックパックをその横に括りつける。

「槍の動きの邪魔にはなってないな。」

気を取り直して先に進む。

そろそろこの階層ではなく下の階層へ行くべきか?

確か五階層に居るのボスは“ボブゴブリン”だったな。

複数のゴブリンなら何とかなる範囲だが、ホブゴブリンになると話は変わってくる。


ホブゴブリン自体、大したことは無いのだが必ず複数であるのと、多数のゴブリンを支配している。

実際、単独でゴブリンの集団と戦うことになるのだ。

(やはり厳しいな。最低、回復役と前衛が必要だな。)

事前の情報でボスが出現する部屋は400平方メートル、テニスコート二面分ぐらいの広さがあることが判っている。

その広さがあれば槍ならばゴブリン程度、槍で薙ぎ払い攪拌することが可能だ。


と考えている間にゴブリンが三体やって来るようだ。

早速、弓を取り出し先頭の一匹を狙う。


(弓を引き絞ると二の腕が少し当たるな)


放たれた矢は寸分たがわずゴブリンの頭を貫き絶命させる。

先頭のゴブリンが倒されることで、こちらに気付いたようだ。

だが、他の二頭が接敵するまでにはまだ時間はある。

もう、一射してゴブリンを攻撃する。

残念ながら倒すことは出来なかったが足に当たったため移動が遅くなった。


この隙に槍に持ち替えゴブリンが近づくのを待つ。

粗末な剣を持つゴブリンが突撃したのに合わせて槍を突き立てる。


ザッ、ザッ!


素早く二度突きゴブリンを倒し、次のゴブリンに対し構えを取る。

仲間がいなくなったことで逃げようとする。が、逃がすつもりはない。


素早く移動し・・・い?

熱い、何故か尻のあたりがものすごく熱い。

一瞬動きが止まった隙にゴブリンは逃げてしまった。


俺は慌てて確認する。

見ると乾燥機からの排水が後ろにかかっている。

水と言っても乾燥機から出る水は熱湯である。


乾燥機を下ろし確認する。

ズボンの後ろが中までベッタリと濡れている。

ドレンパイプが塩ビらしく熱湯で変形している。

(中も確認した方が良いな)


カパっ


中を開けるとモウモウと蒸気が立ち上がる。

「うひゃぁ。高分子吸収剤が中で固まっているな」

これも報告事項だ。

やれやれひどい目にあった。

これ以上の探索は無理だな。


俺は急いでダンジョンを脱出した。


拾得物の提出の為ダンジョン協会の窓口に足を運ぶが何やら先ほどから指をさされる気がする・・・。

何故だ?


「拾得物は、ゴブリンの剣が1本、鉄鉱石が4つ、銅鉱石が1つ、犬皮が2枚。

以上、買取を行いますか?」

「ああ、それで頼む。」

「承知いたしました。この度は大変だったのですか?」

「?いやいつも通りだが?」

「でも、スボンの方が・・・」


ズボンの濡れたシミが恥ずかしいシミに見えるらしい。

とんだ濡れ衣だ。


俺はそそくさと現場事務所に戻り、乾燥機の欠陥を報告する。

(ついでに小型化もお願いする)


だが、1週間後、消火器の様な乾燥機が届いたのは言うまでもない。


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