特化(ダンジョン)小隊がやって来た
「六階層だと!」
協会職員の声が大きく響く。
無理もない。
低レベルの探検者が、動けない状況(生きているが脱出できない)にあるのは間違いなく“フレームリザード”に追い込まれているからだろう。
“フレームリザード”と呼ばれる“フィールドボス”は十階層のボス、“オークキング”よりも強い。
生半可なパーティーはその吐炎で全滅する。
討伐にはそれだけの実力を持ったパーティが必要なのだ。
「協会所属の探検者ではあれに対抗できるのは・・・。」
職員さん達も対応できそうな人間を懸命に探している。
「課長。やはり自衛隊の人達に要請するほかは・・・。」
協会職員の一人が上司に訊ねている。
(さっきから新聞を読んでいる変な爺が上司だったのか・・・。)
その変なジジ、上司は持っていた新聞を机に叩きつけると、
「何を言っとるんだ君は!あんな暴力装置を認めるのかね!!」
「・・・」
「だいたい、警察で何とか出来るだろう、警察で。」
「警察は本来、町の治安維持のために・・・。」
「ダンジョンは町では無いのかね!市民が困っているのに助けるのは当たり前だろう!」
(うわー、でた。協会の赤い寄生虫。)
震災の時もそうだったが、ダンジョンが大量に出現(?)した時も頑なに自衛隊の出動を拒み、被害を深刻化させた奴がいた。
政治的信条の為に人命を犠牲にする。
そちらがその考えならばこちらは別の手を使うまで。
俺はその場所を離れ会社に電話を掛ける。
「はい。石元工作所です。」
「和泉だけど、社長はいてる?」
しばらくすると社長に電話が切り替わった。
「なんだね?和泉君。何かいいアイデアでも?」
「大変です社長!!兵庫君と西宮君がダンジョンで遭難しました。」
「なんだって!!!」
当初、ダンジョンで開発を目論む会社がいなかったわけではない。
その為にダンジョンに潜り色々試していたのだが、命の危険がある(それもかなりの)と判ると潮が引くがようにいなくなった。
会社にとって社員が死ぬのは致命的なのだ。
「で?で?で?彼らは無事なのかね?」
「物品の反応は消えていないので今の所は無事だと思います。」
「物品の反応?まあいい。じゃあ、何故助けないのだ?」
「それが、彼らのいるのが六階らしくて」
「?」
「ボスモンスターに阻まれ、助けに行けないのです。」
「レスキューは?警察は?」
「武装が弱くてレスキューや警察では対処できないのです。」
「じゃ、じゃあ、自衛隊、そうだ、自衛隊だ!」
「それが出動を依頼する協会の方が出動を拒否しているのです。」
「なんだと!人の会社の社員を何だと思っているんだ!」
「自衛隊は暴力装置だとかなんとか言って・・・」
「あれか、ア○か!!」
社長は共産系の人間が大嫌いである。
と言うのも昔、共産系の人間が会社に入ってきて社内をかき回した挙句、慰謝料と称して大金をむしり取られた経験があるのだ。
経験上、共産主義を主張する連中は思慮が足りない。(だから共産主義なんか信じていると思われる)
人の迷惑を鑑みないし、通勤の通路上で平気でビラを配り邪魔をする。
「判った。わしが知事さんに話してみる。」
中小企業の社長とは言え、地域防災の担当を担っていたこともあり、一応、知事や市長と話ができるのだ。
俺はそのルートから手を回してもらうことにしたのだ。
(まぁ、あの系統と話をしても無意味だしね。)
一時間後
「陸上自衛隊、第三十七普通科連隊、普通科中隊、特化小隊所属 第一班、紀州 新之助 以下 六名 着任しました!!」
駆け付けた自衛隊員の掛け声が響き渡る。
「では、要救助者の情報をお聞かせ願いますか?」
紀州と名のる自衛官は矢継ぎ早に情報を求めてきた。
確かに自体は一刻を争う。
ぐずぐずしている暇はないのだ。
「はい。私が探査した所、彼らは六階にいる様なのです。」
「探査?生物探査のスキルでしょうか?」
副官だろうか、一人の自衛官が疑問を投げかける。
「まて、市十郎。その疑問は置いておけ。」
「いえ、私が使ったのは物品探査で対象はこれの片割れなのです。」
と言うと、物品探査で使用したプレートを取り出す
「微弱ながら魔力がある。これと繋がっていたものなら探査は可能か・・・。」
市十郎と言われた男はそのプレートを見ながら、
「通常ダンジョンに落としたものは十時間ぐらいで消えて無くなる、その反応があるという事はまだ生きているという事か!」
それからの行動は更に素早かった。
戦術の確認、補給、点検と物の数分で行ってしまった。
「・・・早えええ・・・・」
俺が驚いていると、一人の自衛官が俺に話しかけてきた。
「いえいえ、ここに来る前に、車の中で戦術などは確認してきましたので、あれは最終確認ですよ。」
それでも早いことは早いのだが・・・。
自衛隊員の様子を眺めていると紀州隊長が
「救援に当たって要請があるのですが?」
「何でしょう?私にできる事なら。」
「ありがとうございます。早速ですが、わが隊と一緒にダンジョンへ降りてくれませんか?」
話を聞いてみると、彼らの隊には物品探査のスキルを持った者がいないそうだ。
救助者の位置を正しく知る為にも俺に同行してほしいのだそうだ。
「判りました。同行しましょう。」
「ありがとうございます。同行感謝いたします。
ではこれより要救助者、救護に向かいます。」
こうして俺は今考える限り最適の人員でダンジョンに向かったのだ。




