新人研修
兵庫と西宮さんを連れてダンジョンに行く。
二人とも本格的なダンジョンは初めての様なので今日は一階だけにしておこう。
と、その前に
「まず君たちにやってもらうことがある。」
ダンジョンの入り口を前にして今日の目標を言う。
「君たちには最低レベルを一つ上げてもらう。
なお、レベルが1つ上がるまで1階での探検になる。」
「はーい。和泉先生!」
「なんだね。兵庫君。」
「何故、レベルを一つ上げるまで二階へ行ってはいけないのでしょうか?」
「ふむ、いい質問だね・・・と言うか、おい!」
「それは探検者教習所で教えられることだろう?」
と西宮さんを横目で見ながら言う。
「はい!和泉先生。それは“アイテムボックス化”のスキルを取る為ですね。」
「残念、それでは不正解です。
その辺りは冒険者の基本である“アイテムボックス化”取ることで生存の可能性を上げる為なんだよ。」
「「生存の可能性?」」
どうもその辺りの詳しい話は教習所では行わない様だ。
「“アイテムボックス化”によって一度に運べる量が増える。
その事で薬品や食料などの物資の運搬が増える、つまり生存の可能性が上がる。」
「あと、運べる量が増えるという事はドロップアイテムの運搬量も増えるという事だから、探検者の基本スキル、Lv1で絶対取るスキルと言われているわけだ。」
と、西宮さんや兵庫に説明して感動している俺がいた。
冴えない中年であるこの俺が現役女子大生、しかも可愛となれば楽しくないはずはないのだ。
(よくやった。兵庫よ。)
「では、ダンジョンに向けて出発!」
戦闘は盾を持つ兵庫、その後ろに西宮さん、そこからさらに下がって俺。
「和泉さ~ん。なんで俺が前なのですか?」
先頭になった兵庫がおびえながら尋ねてくる。
「盾を持ってるからね。」
「それじゃ、和泉さんが持ってくださいよ。」
「俺が持ってどうするんだ。それじゃあ、指導が出来ないだろう。」
通常、三人パーティの場合、1-1-1か2-1、1-2の隊列を組む。
だが今日は指導である為、西宮さんと兵庫で1-1の隊列を組みそれを後ろから指導する形にしている。
「おっと、止まれ!敵が来るぞ。」
レベルアップの特典でモンスター感知の技能を取ったためモンスターの位置がほぼ判るようになった。
“ほぼ”と言うのは隠れているモンスター、低階層ならジャイアントアメーバーなどは感知できない事がある。
ただ、感知技能は使い続けているとそのレベルを上げることが可能だ。
その場合、隠れているモンスターも感知できるようになる。
「この感じ、アタックドックか・・・一匹だな。好都合だ。」
初心者パーティには丁度良い。
「兵庫!盾を構えろ。アタックドックだ!」
「は、はい!!」
兵庫は俺の命令ですかさず盾を構える。
アタックドックは名前の通り、攻撃的だ。
だがその攻撃は低階層らしく単調で初心者向きと言えた。
ドカッン!
アタックドックが兵庫の構えた盾に突撃する音が響く。
「ひええええ。和泉さん、この後どうするんですか?」
「アタックドックの突撃に合わせ、盾を押し込め!」
「はい!!」
兵庫は二度三度盾での押し込みを繰り返す。
四回目の攻撃でタイミングがあったのか、アタックドックが弾かれてたたらを踏む。
「今だ!短剣で突き攻撃!二回!」
「はい!!」
ザスッ!ザスッ!
不格好な体勢だがその一つがアタックドックの急所を突いたのか、
「グャフン!」
と悲鳴を上げ倒れる。
しばらくすると、アタックドックは光となって消えて行き、その場には鉄鉱石が残された。
「やった!やりましたよ!和泉さん!」
「よし、盾の押し込みは今のタイミングだ。忘れない様に。」
「はい!」
アタックドックを倒せて気分が高揚している様だ。
「よし、次は西宮に盾を渡して交代だ。」
高揚した精神状態だと事故につながりやすい。
それを覚ます意味でも、西宮さんに交代させた。
その後、一戦闘ごとに西宮さんと兵庫を交代させながらレベルアップを図った。
そうしてダンジョンを出る頃(退社時刻)には両者ともレベルが一つ上がっていた。




