焼き付けと社長来襲リターンズ
今日はいつもの現場事務所ではなく、本社工場に来ていた。
「おはようございます。」
「うっす。来たな。で、何だ今日は?」
工場長の森さんには電話で今日訪れることを伝えていた。
「あるスキルで出来た物を何かに使えないかと思いまして・・・。」
「スキルねぇ。
何処にあるんだそれは?」
「今から出します。」
そう言うと俺は8個のビンを取り出し、スキル“分光粉塵”を使いカラフルな粉塵を出す。
出す範囲はコントロールして一つのビンの中を指定する。
「えらくキラキラした粉だな。」
森さんはキラキラした粉をしばらく眺めると
「これ色は分けれないのか?」
「わりました。」
そう俺は言うと、別のビンにそれぞれ赤、橙、黄、緑、水色、青、紫と七色を出す。
「これだけ色があると、いろいろ出来そうだな・・・。」
森さんが言ったところで最初のビンの粉塵が徐々に消えていった。
「ん?これはすぐ消えるのか?」
「ええ、およそ五分くらいで消えるみたいなんです。」
「理由は判っているのか?」
「魔力の拡散でしょうか?」
「拡散か・・・。」
そう言う森さんはしばらく考え込んだ後、
「何なら焼き付とコーティングを試すか?」
「焼き付け?コーティング?」
「板の上に簡単な模様を付けてガラスで挟み熱を加えるんだ。」
「五分じゃ厳しくないですか?」
「そこは時間との勝負だな、お前も時間を延ばせる方法を探ってくれ。」
結論から言うと、分光粉塵の効果時間は伸ばせた。
何の事は無い、妨害を目的としない、ただ魔力を込めただけの粉塵だと時間が1時間ほどになったのだ。
当然、この状態では視界を阻害することは出来ない。
「で、焼き付けたのがこのプレートと?」
現場事務所に戻って来た時に兵庫が居たので焼き付けの結果を見せた。
ガラスで挟まれたプレートに七色の色が棒状に焼き付けられ今でも色は落ちていない。
試しに上下半分にしてみたが、間から粉塵が抜けることもない。
粉塵自体は板に焼き付いている様だ。
この場合、ガラスは表面の防護処理と言ったところだろうか?
「へぇ、結構綺麗ですね。これ。」
兵庫はしげしげと眺めている。
「何なら持って行くか?」
「いいんですか?」
「ああ、取り敢えず安定化させる方法は判ったからもう必要ない。
後はこれの利用方法だな。」
そう言った時、現場事務所委の外に車が一台やって来た。
社長の車だ。
「い、和泉君!!」
現場事務所に入るなり社長は声を張り上げた。
「ひどいじゃないか、スクロールについて調べてみたら高額で取引されているじゃないか!!」
実際、身体強化や分光粉塵は高額で取引されていた。
身体強化は当然としても、分光粉塵は何でももっと下層で出現する幻獣の中に透明になったり分身を行ったりするのを調べるのに使えるらしい。
両方とも百万円を下らない金額で取引されていた。
物品探査はダンジョン協会の買取価格で一万円、スクロール最低価格だ。
何処かで、価格を知った社長がその内のいくらかを寄こせと言いに来たのだろう。
無駄なのに懲りない人である。
「社長、どのスクロールも下層を探索する上では欠かせないほどの物だから高いのですよ。」
「うむむむむ。では物品探査のスクロールは?」
「あれはオークションでも値が付かないし、買取価格は一万円ですよ。」
「それなら、わしが使ってもいいじゃないか。物を探すのは便利だし。」
あくまでも食い下がる社長。
「社長。探索者でない者がスクロールを使ってはいけないのは知っていますよね?」
この国ではスクロールの使用は探索者免許がある者のみにしか許されていない。
身体強化の様なスクロールが暴力団やテロリストに渡った時のリスクを考えれば当然の規制だろう。
「それと、スクロールの鑑定はダンジョン協会を通しているので、私が持っていることは協会が知っています。」
「・・・」
「その私が使わずに社長に使わせた場合、どんな罰則があるか知っていますか?」
「・・・どんな罰則だね?」
少し間をおいて俺は言った。
「探索者免許の永久剥奪です。」
「こっそりやれば判らないのじゃないのか?」
「ダンジョン協会で鑑定されたスクロールには封印がしています。
この封印を破ってスクロールを使うのですが使った後はダンジョン協会に届けなくてはなりません。」
「その際、誰が使用したのか報告する必要がありますし、使っていない場合は一年に一回、封印が破られていないことを証明する義務があります。」
「こっそり使って封印だけ返せばわからないんじゃ?」
「三年に一度の免許更新時にばれますよ。」
探索者免許は三年に一度更新する。
協会の鑑定者が所持スキルや身体能力を調べるのだ。
その時、スクロールを使って習得したスキルが無かった場合どうなるか?
想像に難くない。
それを聞くと、社長は黙って帰っていった。
スクロールを使いたければ最低限免許を取ればいいんだけど、それは気付いて無い様だった。




