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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

三人称練習シリーズ

積もる雪と恋心

作者: 秋雨そのは

3人称、第2弾です! なかなか難しい……。

それでは、お楽しみください

文を修正しました。

 降り積もる雪は、黒い空から降り注いでいた。

 多くの車の走る音や人が歩く音が聞こえる……少年の目は閉じていて、ある電柱に寄りかかりながら、かじかんだ手を擦っていた。


「僕が生きててもいいのかな……」


 体に降り積もった雪を払わずに、少年は上を見上げ呟いたが、誰も反応しない……。

 横にある交差点から、キコキコと音がして……その少年に近づく人がいた。


「外にいては、風邪を引きますよ?」


「この声は、望?」


「はい、貴方の望です」


 少年は声がする方に歩いていき、望と呼ばれた少女は手を……少年の手を握った。

 少し頬を染めながらも少女はクスッと笑って少年に言う。


「去年は……逆だったのに」


「そうだったっけ?」


「そうですよ」


 と少女は自信満々に言った後、「店に入ってお喋りしましょう?」と声をかけた。

 少年と少女は、外よりも暖かい近くの店に入って……1年前の出来事を喋り始めた。


――――――――――――――


 ある家庭、タバコの吸い殻や空の酒瓶が転がる中……怒鳴り合っている2人が居た。

 男は、酒瓶持って顔を赤くしていた。

 そこにある雰囲気は、ピリピリとした殺気の混じった怖いものだった。


「うるせぇ! 早く酒持って来いって行ってんだよ!」


「だから無いって! もうそんな金も無いんだよ!」


 怒鳴り散らす、父親だろうか……その方向の先にいる少年は、叫んでいた。

 父親は、少年の胸倉を掴んでは「お前が貯めてる金あったろ! それ使え!」と怒鳴り散らしては突き飛ばした。

 その衝撃で少年は、そこにあったタンスに強打して……その衝撃で酒瓶が転がっていった。


 父親は少年に近づこうと、歩いて行き……父親が少年に踏み込もうとした瞬間、酒瓶に足を滑らせた。

 その衝撃で、父親がタンスに頭が直撃しようする瞬間……少年が庇う、までは良かった。


 父親の手に持った酒瓶は割れ、何とかずらした父親の体は重く……体格を支えきれない少年は仰向けに倒れてしまった。

 その瞬間酒瓶の破片が、目に狙ったかの様に突き刺さってしまった。


「――――!?」


 少年は言葉にならない声を上げては、重い父親の体で目を覆うことすら出来なかった。

 父親は気が付いたのか、体を持ち上げると息子の惨状に驚き……家を飛び出して、出ていってしまった。


 少年は、目から血を流しながらもタンスに背を預けた。


 その時、何処からか車が止まる音が聞こえた。

 少年は関係無いとばかりに、動き出さない……傷みで動けないのかもしれない。


「先程の男は……」


 メイド服を着た女性が、外を見ながら家の中に入ってきた。少年の方に目を向けた瞬間に、目を見開く。

 女性はスマホを取り出して電話をかけているようだ。


「至急! 病院の手配を! 目がやられてる! 早く!」


 スマホの連絡は終わったのか、仕舞い……少年に近づく。


「大丈夫!? 生きてるなら、返事をしなさい!」


「……お父さんは……?」


 少年は、父親の心配をしていた。それが自分の事を見捨てて逃げたとしても。

 メイド服の女性は……「逃げたわ……走って逃げる程、元気にね」と言うと少年は笑った「良かった」と。


 女性は、悲しい顔をしながら「馬鹿! 本当に馬鹿!」と叫び、何故かその顔は凄く……少年に似ていた。


 急いで肩を貸して……車に仰向けに寝かせては、車を走り出す。

 車は雪で視界の悪い道を進んでは、混む道のりを走り……街灯の明かりだけを頼りだが、それすらも少ない道のりが多かった……。

 運転手は「道が……!」と歯を噛み締めながら言い、女性は「早く行かないと……!」と言っている。


 少し進んだ所に、救急車が止まっていた。

 それは、ここに来るように頼んだように……静かに止まっていた。


 運転手は隣に止め……それを確認したのか、救急車から多くの人がやってきては少年を中に入れて、女性もその中に入っていった。

 救急車と共に、先程乗っていた車も一緒に走っていく。

 救急車の中は、大変な事になっていた……目の応急処置と言っても時間が立ちすぎていて、深夜帯である為、道も見づらく急ごうにも急げなかった。


 なんとか、病院に辿り着いて……少年はすぐに、集中治療室に入れられていった。

 中に入っていく少年を女性が見て「お願い、助かって!」と呟いていた。


――数時間後


 白い病院の中は電気を使わなくてもいい程、時間が経っていた。

 治療室からベットに横になり、運ばれて出てきた少年は、両目を包帯に包まれていて、女性は一緒に病室に入っていった。

 少年が意識を取り戻すのを待ち望み、長い時間待っていたのだろう……目にはクマが出来ていた。


「うぅ……ん」


「……!」


 少年は意識を取り戻したようだが、目が見えないのが不安なのか……見渡そうとして頭を左右に向けるが「ここは何処?」としか声に出せていなかった。

 医師が「ここは病院です」と言うと少年は「病院……お父さんはどうなったんですか!?」と方向も定まらない視界で叫んでいた。


「……」


「何処ですか!?」


 と叫びながら、体を持ち上げる少年に、そこに居た医師は言葉を失っていた。

 医師は女性に顔を向けるが、顔を横に振って女性は「何処にいるか分からない、だけど少なくとも貴方よりは無事」と言った。


「そうですか……」


 と言って少年は、安堵していた。


 その時、病室の扉が開かれ……入ってきたのは、車椅子の少女だった。

 女性は「お嬢様……!」と呟いては立ち上がっていた。

 今は早朝と言ってもいい時間で、来るとは思ってなかったのだろう……女性にお嬢様と呼ばれている為、雇い主だといえる。


「私が来てはダメ? メイドの心配をしない雇い主だと言うんですか?」


「ですが……!」


 女性は言葉を続けようとするが、それを無視して少女は中に入り……少年の方に目を向けた。

 少女は「貴方が……」と呟き……メイドの女性を見る目と似ていた。


「誰?」


「私は、奈月 望です。お初にお目にかかります」


 そう言った望という女性は、微笑んだ。

 だけど、少年は暗い表情をして……「なんで助けたの?」と言った。


「どうして?」


「お父さんはいないし……もう僕なんて生きていてもしょうがないんだ……」


「そう、それで?」


 少年は「え?」と望の方に……声を頼りに顔を向けていた、望は「それだけじゃ、死んでいい理由にはならないはずです」と言った。

 望の少年を見る顔は、力強く……そして優しい表情をしていた。

 彼女は、車椅子で体だけ起こしている少年の顔に両手を当てると……。


「大丈夫、見つかりますよ……生きてる意味なんて」


「どういう、事?」


「そうね、私も……似たような気持ちだったんですから」


 望は……少年に「貴方の名前を教えて?」と聞きながら、微笑んだ。


「僕の名前は、希波……羽澤 希波」


 少年は、戸惑いながらも口にする……希波と。


「そう……いい名前ですね」


「そうかな?」


 望は……「だって、そうじゃないですか」と言って、望は伝える……名前を与えられたという事は、生きても良いということなんだと。

 人は必ず名前を貰い、だからこそ……生きなきゃいけないんだと。

 そこに死んでもいい命なんて1つも無いということを。


「今から練習しましょう? 生きる意味を見つける為に……前を向いて歩く為に」


 そう言って、再び……望は、少年に……希波に微笑んだ。


――2週間後


 あれから、希波はリハビリを続け……最初は苦労し、倒れ込んだり見えない不安で押しつぶされそうになった時もあった。

 しかし、その気持ちを押さえ込んでくれる人がいた。

 それは……望だった。


 彼女はリハビリ時間になっては、何時も……絶え間なく来ていた。

 微笑んでは、雑談を交わし……不安になる心を聞いてくれた。

 そんな彼女の事を……少年は、いつしか思う様になった。


 好きだと。


 だけど少年は、自分が言って迷惑でないか……ずっと、看護師に聞いていた。

 その答えも、しっくり来ていないようだった。


――1週間後


 やっとの思いで、外出を許可されるようになった。

 希波は、外出が出来たら何時がいいかを聞いていた、そしてその答えが。


「クリスマスに外で会いたいです」


 と少年に微笑みながら言っていた。そして今日は丁度その日だった、少年は急いでいた……それは、予定の時間より遅れてしまっていたからだ。

 外にでると、何時もメイド服を着ている女性が希波の手を引き……「さぁ乗りましょう、お嬢様がお待ちです」と言い、希波はそれに「うん」と答えると……静かに乗り込んだ。


 緩やかな風が吹き、クリスマスの夜にはまだ少し早い時間だ。

 だけど、それがいいと望が言った。


「着きました、ではお嬢様が待っていますので……歩いて曲がった先にいます」


「ありがとう」


 そう言って、両目を閉じている希波は杖を頼りに……望がいる方に歩いて行く。

 すると、望がこちらに気づき……キコキコという車椅子の音を出して、居場所を伝えた。


「お待たせ」


「遅いですよ! でも、嬉しいです」


 と望は言いながら、笑顔を見せていた。そして、望の言葉に誘導されながら、希波は車椅子を押して歩く。

 様々な人が歩き、星やサンタが飾ってあるイルミネーションの通りを車椅子を押されている望が大きな木を指差して「クリスマスツリーです!」と言って、はしゃいでいた。


 その声に希波は微笑んで……。


「望さん……」


「はい?」


「貴女が好きです」


 と言った。その言葉に不安を感じているのか……希波は静かに待っていた。

 望も笑顔で……頬を染めながら。


「私も……あの時出会ってから好きでした!」


 そう言って、2人はクリスマスの日に……恋人同士になった。


――――――――――――――


 話し終えると、望がうんうんとうなずきながら。

 明るく暖かい店が、2人の空間だけは少し温度が高いようだった。


「あれは、不意打ちだったけど私は好きだったんです……今日も言ってくださいね?」


「恥ずかしいから、勘弁して欲しいな」


「むぅ……乙女心が分からない人ですね」


 頬を膨らませながら、彼女は言う……それが愛らしい言葉だったのか、そんな表情を想像したのか……少し希波は笑った。


「大変な事ばかりだけど……」


「そうですね……」


「生きる意味をちゃんと見つけられたよ」


 そう言って、閉じたままの両目で、車椅子の彼女に……口づけをした。

お読み頂けてありがとうございます。

誤字や表現が違う所あれば修正しますので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前作よりかなり良くなっています。 表現などは良い作品を読んで覚えるか、ひたすら頭の中で情景を浮かべ言葉を探しましょう。 >黒い空から降り注いでいた 「夜空」の代わりに「黒い空」と色を使っ…
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