お米
ある日沢山の米俵が山のように与太郎の家に送られてきた。
どうしようかと悩んでいると、インターフォンが鳴る。そこにはダンボールを乗っけた台車と緒花の姿があった。
「いらっしゃい緒花」
「ご機嫌よう、与太郎くん。ああ、ちゃんと届いてますね」
「もしかしてこの米俵は緒花が?」
「はい、いろんなのところから頂いたのでお裾分けです。せっかくですから試食会でもしましょう」
そう言うと緒花はダンボールの中から炊飯ジャーを取り出す。
どうやら幾つか種類があるようで、それらは別々に炊き始める。小一時間もすると、甘い香りがしてくる。
「それじゃあいただきましょう」
緒花はとあるジャーからお米を茶碗によそい、与太郎に差し出す。それを食べてみると。途端に与太郎は目が眩んだ。どうやら腰が光っているようだ。
「これは…… コシヒカリッ!?」
「食事をすると名前が反映されるように世界になってしまったようです。お米の品種版」
「世界一変しすぎだろッ?」
「次は何でしょうね〜?」
緒花は別の炊飯ジャーからお米をよそい食べる。だがこれと言って変化は無い。
「それは?」
「私が食べたのは“あきたこまち”ですね。どうですか? 綺麗になりました?」
「いや、元が美人だからあんまり変化ないな」
「……もう、それじゃあ今度はこれです。いろんな品種を混ぜ合わせたブレンド米ですよ」
緒花が差し出した茶碗を受け取った与太郎は、少し警戒しながらも口にした。すると身体はムクムクと大きくなる。姿見を見ると、毛むくじゃらの怪獣がそこにいた。
「何を混ぜたの?」
「“森の熊さん”“龍の瞳”“亀の尾”“強力”“ひとめぼれ”“タカナリ”です。ちゃんと存在する品種ですよ」
「もはや野獣か妖怪なのでは?」
「大丈夫です、安心して下さい。私はワイルドなのもアリです」
緒花は気にせず、また別の茶碗に箸をつけた。だがやはりこれと言った変化はない。胸を張って澄ました彼女は少しアホっぽい。
「今食べたのは“ミルキープリンセス”“白雪姫”“つや姫”のブレンド米です。どうですか? 姫っぽいですか?」
「いやだから、元が美人だからあんまり変わらん」
すると、緒花は上目遣いでモジモジとし始める。
「美女と野獣が狭い部屋で二人きり、何も起こらないはずはなく…… ですよね? “ひとめぼれ”も混ぜましたよ? チラッチラッ」
「え? ああうん、ガンバ」
「その、べべ、別に私は与太郎くんさえ良ければ…… あれ、与太郎くん?」
「じゃあ俺はちょっと出かけてくるから」
そう言って与太郎は野獣じみた身体を揺らし家から出て行った。
緒花しばらくポカンとしていたが、ハッと我に帰り、与太郎に食べさせたお米の品種を確認する。
「“コシヒカリBL”ッ?! 与太郎くんッダメぇ〜!! BLってそういうコトじゃないから〜!!」