メロス
与太郎と緒花がある日の休日、街を歩いていると、駅前の広場で人が張り付けにされていた。
「見つけてしまいましたね」
「見て見ぬフリしたいよ?」
「それだと話が進みません」
「……それで? 一体何かな?」
「あの人は…… セリヌンティウスです」
「誰だよ」
「知りません? メロスが妹の結婚式に行っている間に人質になっていた人です。今この世界は唐突にセリヌンティウスが現れるようです。ほら王様も居ます」
すると確かに、豪華な椅子に座った、髭を蓄えた
オッさんがセリヌンティウスを眺める位置にいた。
「どうやら今、文学のキャラクターが現れる世界に一変しているようです。メロス版」
「世界一変しすぎだろッ!」
「見てください。メロ、キャッ!」
緒花は与太郎の背中に隠れる。メロスの着ている服はボロボロになっていて半裸、というより、ほぼ全裸だ。
「ああ、そんな設定あったな、あの話」
メロスは猛烈な勢いで広場に走りこんでくる。が、もう少しというところで、警察官に取り押さえられる。
「あんな格好で駅前走ればねえ。あ、パトカーに押し込まれた」
「実際、街中全裸ダッシュとか、当時でも捕まったんじゃないですか?」