野球
なんやかんやあって、与太郎は緒花に誘われて野球を観戦しに球場まで来ていた。
試合は九回裏、無死満塁、点差は四点だ。
「それにしても、よくのチケット取れたね」
「ツテがあって、ほらバッターが出てきましたよ」
「次は誰だっけ……なっ!!」
バッターボックスには日本刀を持った武人が八相の構えで立っていた。
「緒花?!」
「あれは…… 北の侍です」
「どういうことッ?!」
「どうやら今、異名が具現化する世界に一変してしまったようです」
「世界一変しすぎだろッ!」
武人は日本刀振るが上手くボールをはじき返すことは出来ずにライトフライになる。
「ガッツが足りませんね」
「タッチアップだ」
「あら? 確かあそこの人って……」
ライトは難なくボールをキャッチすると、三塁走者はホームに向かって走る。
ライトは助走をつけてボールを投げると、ピカッと一筋の光線が走者に直撃した。
「レーザービームね」
「なんかまっ黒焦げになってる。死んだんじゃ……」
「あッ! ベンチから選手が出て来ますよ」
大魔神、韋駄天、鉄人、猛牛、黒豹、魔術師、牛若丸。その他もろもろ、ヘンテコな集団が両ベンチから飛び出してくる。
すると彼らはマウンドの上で取っ組み合いの大乱闘が始める。
「野球だもの、乱闘も起こります」
「そんな冷静でいられても、なんとかしないと」
「大丈夫、安心して下さい」
しばらくすると、彼らはいつもの姿に戻ってベンチに引っ込んでしまった。
「これは…… 退場!?」
「そう、乱闘の後に退場あり。球場の外にいる野球選手なんて全員ただのおっさんですよ」
「…………」
「あら? 今のが今回のオチですよ?」
「それはいいけど、今後スポーツネタで退場オチはダメだよ?」
「それは……」
緒花は急に立ち上がって素振りをする素振りをすると猛ダッシュで走り出す。
「振り逃げ?!」