熱暴走
与太郎はその日いつものようにノートパソコンでエッチなサイトを巡っていた。
旧式のパソコンは中々にレスポンスが悪く、イライラとしながら、写し出されるエッチな動画にムラムラしていた。
「ふう」
それは一息ついた時だった。
突然、ノートパソコンがドタバタと部屋中を動き回る。
「ぎゃああ!!」
与太郎が頭を抱え、その場でうずくまっていると、いきなり窓がガラッと開き緒花が現れる。
「起こってしまいましたね」
「緒花ッ?! いつからそこにッ!」
「与太郎くんがベルトをガチャガチャを弄りだした頃から。あっ、これお土産」
そう言ってバナナを一房差し出す。
「意味深すぎません?」
「偶然です、私も与太郎くんのアレがあんな事になってるなんて思わないもの、ぽっ」
緒花は顔を真っ赤にして俯く。
自分のしていた事を思い出し、与太郎も顔が真っ赤になる。
居ても立ってもいられず、その場から逃げ出そうと身体を上げると、ノートパソコンは頭に直撃する。
「イッッッてええ!!! そんな事より何これ?」
「これは“熱暴走”。熱を持ったモノが暴れ走るようになってしまったのです」
「世界一変しすぎだろ…… どうにかならない?」
「大丈夫、ちょっと待って下さい」
緒花はそう言ったが、特に何もせず、身を低くしているだけだ。
すると、暴れ回っていたノートパソコンは急に動きを止めた。恐る恐る触ってみると氷のように冷たくなっていた。
「熱暴走だもの、フリーズするのは自明です」
「なるほど…… それで緒花、今日は何の用で来たの?」
「用と言うほどの事は無いのですけど、まあ私も暴走中という事で」
「はあ…… じゃあ時間が経てば、冷めるのか?」
「向こう百年は覚めませんよ」