帰宅部
与太郎は帰宅部である。放課後することも無いのでさっさと帰ろうとしていると、学校の校庭には沢山の人だかり。よく見ると全員違う制服を着て、その上にゼッケンを着けている。
すると緒花が現れ、与太郎の制服の袖をつかみ、その人だかりに連れて行く。
「巻き込まれてしまいましたね」
「巻き込んだのは緒花なのでは?」
「今、この街では帰宅部の全国大会が開催されているのです」
「世界一変しすぎだろ」
「全国の強者たちが、誇りを賭けて帰宅をする大会です、道中では様々な困難もあるでしょう。与太郎は我が校代表となりました、お家目指して頑張って下さい。私もお供しますよ」
「まあ帰るけどね」
朝礼台の上のオッさんがピストルを空に向けるとパァンと音が鳴り、選手は蜘蛛の子を散らすように帰宅の途につく。
「ほら帰りましょう」
「ああ、うん」
与太郎はいつも通りの道を歩く、すると街中ではゼッケンを着た選手が苦戦を強いられていた。
OLにカラオケに誘われる選手、ゲーセンのロケテストの看板に釘付けの選手、不良にカツアゲにあっている選手。しかし彼らは断腸の思いで振り切って足を動かすのだった。
「流石全国大会、ハイレベルですね」
「帰宅部だけどな」
「この道は危険です。他の道にしましょう」
緒花は与太郎の腕を掴んで引っ張るので、仕方なくいつもと違う道を行く。
すると閑静な住宅街に行き着く。妨害する要素も無い。
「ところがドッコイ、最後の関門があるのです」
そう言うと緒花はある邸宅の門に引き込む。
「緒花、どうしたの? 勝手に入っちゃマズイって」
「大丈夫です、ここは私のお家なので」
与太郎はその御宅をよく観察する。
年季の入った日本家屋であるが古臭さは感じられない、大きな庭もあり盆栽が飾ってある。門の外からでもかなりの豪邸であることが伺える。
「緒花って良いトコのお嬢さん?」
「はい、気づきませんでした?」
緒花は万力で固定したかの如く与太郎の腕を掴んで離さない。
彼女の瞳は鬼気迫るものがあった。
何かに取り憑かれたように緒花は早口になる。
「与太郎くん折角ですからお茶でも飲んでいって下さい出来れば夕飯も食べていって下さいついでに両親に挨拶していって下さい是非泊まっていって下さい …………帰宅出来ると思うなよ」
「怖ッ!」




