遊園地
与太郎は緒花に誘われて、新しくできた遊園地のプレオープンに遊びに行く事になった。
「良くチケット手に入ったね」
「ツテがありまして。まずは何に乗りましょうか?」
「そうだな…… なんか香ばしい香りが」
「あれですよ。ほら」
緒花が指差した先には巨大なカップがあり、中身はちゃんとコーヒーが入っている。
その中に客は浸かり、グルグルと回転している。
「緒花、これは」
「はい、今遊園地は、ガチなアトラクションになるよう一変したようですッ」
「世界一変しすぎたろッ!」
出てきた客は頭からつま先までビチャビチャで茶色に染まっていた。
「深入りコーヒー…… ですね?」
「あれはやめよう。風邪ひきそうだ」
「じゃあ…… あれは何でしょう?」
緒花が指差した先にはメリーゴーランドがあった。
ちょうど動き出したところで、馬ではなく、四つん這いになった人間の上に客が乗っている。
「メリーって人名ってことッ?」
「いやでも、お馬さんより関連性ありますよ。むしろ説得力が出ましたよ」
「……乗りたい?」
「いえ、私は遠慮しておきます」
お化け屋敷、フリーフォール、ジェットコースター、バイキングなど絶叫系のアトラクションは、最早断末魔の叫びと化しているのでスルー。
「残ったのは?」
「か、観覧車です」
緒花が指差した先には普通に観覧車があった。
「おお、珍しく名は体を表してるっぽい」
「……乗りましょうか」
二人はゴンドラに乗り込み、面と向かって座席に腰掛ける。
ドアが閉じられるとゆっくり上昇する。
「何も起こりませんね?」
「正直ホッとする。おお、やっぱりちゃんと観覧車してる。遊園地が一望でき……」
窓から下を覗き込んだが、絶叫系のアトラクションの周辺に血だまりが出来ているので見るに堪えない。
見なかったことにして窓から顔を離すと、真正面に座る緒花は人形のように澄ましてこちらを見ている。
長く艶やかな黒髪、吸い込まれそうな深いブラウンの瞳、陶器のように白く透き通った肌にしなやかな手足、白いワンピースの下から主張をする胸元と柳腰、形良く引き締まったお尻。
彼女が美人だと知っていたが、照れ恥ずかしかったので今までジックリとした事はなかった。だが、一度見始めると目が離せなくなった。
恥ずかしそうに頬を赤らめた緒花は首を傾げて、
「もう、なんですか? 人の事をジロジロと」
「うん、ほら、良い機会だからちゃんと見ておこうと思って」
「しょうがないなぁ、良いですよ」
ゴンドラの中は二人の息遣いだけが聞こえる。
二人の視線は繋がったまま離れない。
「与太郎くぅん……」
潤んだ瞳の思って緒花が腰を浮かせ与太郎の方に飛び込もうとする。
「動くなよッ、今良いところなんだから」
「ええッ?!」
「ここは観覧車だぞッ、“観覧”意外する気ねえよッ!!」
「ええええぇぇ…… 良いムードだったじゃないですかぁ…… まあ良いか、どうぞごゆっくり」
緒花は再び腰掛け澄ましてみせた。




