表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

恋の落とし穴

 世界は一変した。

 とある科学者の実験がなんやかんや失敗して、それが世界の物理法則になんやかんや影響して、世界は不可思議な出来事が起こっては消える。不安定な状態に成ってしまった。

 だが、多くの人類は世界が一変した事を認識できない。認識出来るのは極々わずかな人類のみだ。

 そんな一握りの一人、与太郎は高校二年生である。学校に向かって朝の街を歩いていると道端に大きな穴が空いていた。

 人々はそれを避けるように歩いて行く。


「なんだこれ?」

「見つかってしまいましたね」


 穴の中から女の子の声がする。

 恐る恐る覗き込むと、深さは三メートルくらい、中は薄暗く、構造はよく分からないが、底には一人の女の子が体育座りをしていた。

 彼女は俯き下を向いたまま話を続ける。


「これは“恋の落とし穴”です」

「は?」

「穴の中にいる状態で、誰かと視線を交わすとその人の事を好きになってしまう。そう言うモノ」

「ああだから、下を向いたままなのか…… 世界一変しすぎだろッ!!」

 とりあえずツッコミをいれた後、与太郎は地面に横になって、穴の中に手を伸ばす。


「そのままってわけにはいかないだろう。ホラ、捕まって」

「ダメです、このままじゃ貴方の事好きになってしまいます」

「女の子をこんなところに放って置けないよ、目が合わなければいいんだろ?」

 与太郎は眼をぎゅうッと瞑る。


「……それじゃあ」


 ひんやりと冷たい、スベスベとした細い指が絡まると、に力を込めグッと引っぱる。

 穴の壁には取っ掛かりが無いようで、彼女は上手く踏ん張れず、バタバタと脚を動かしながら、与太郎の身体しがみつく。

 やっとこさ彼女を引き上げると、二人はゼィゼィ肩で息をしていた。

 彼女はボサボサになった長い黒髪を手櫛で整える。運動したせいか顔は真っ赤になっていた。見覚えのあるブレザーは、与太郎の通う高校と同じの物だ。


「……ありがとう御座います、私の名前は緒花(おはな)、あなたは?」

「俺は与太郎。でも良かった、助けられて。恋の落とし穴なんて変なモンのせいで誰かを好きになったら、可哀想すぎる」

「いいえ、恋の落とし穴の影響は確かにありました」

「え?」

 緒花がニコリと微笑むと、口元にえくぼができた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ