主人公の出発
バタバタガヤガヤ....。
「ぅ....ぅーん....あ、なんだ?」
ギルドで迎えた朝は想像以上に騒がしかった。下で男達の叫び声が聞こえてくる。
騒音でしかないな....。
眠気眼を擦りながら起きて椅子に腰を掛けた。
「ふぅー」
と肺にたまった息を吐き出した。少し日差しの光に目が慣れたので部屋の窓から景色を見渡す。そこには俺が住んでいた世界とは違う....見渡す限り神秘的な自然が広がっていた。
「うわぁー、これは絶景だな....。」と心を打たれた。
森だけじゃない町の人だってみんな生き生きしてる....。
これだけの人数なら町と言うより街かな....。
こんなに幸せそうに仕事をしている人は初めて見た....。
思えば初日は散々だったな....
疲れてそのまま寝たから風呂に入ってないし、夕食も食べてないから腹が減っている。
まぁ、しょうがないと言えばしょうがないか....
そういえば昨日、おっさんは用があるならスタッフを呼べって言ってたな....。
ガチャッ
俺は部屋の扉を開いた。すると、扉のすぐ隣に若い男性が座って寝ていた。
....ん~。これは、あれか....
俺の監視をしてた的な感じかな?だけど寝ちゃってるし。おまけにヨダレまで垂らしてるし。
よい夢を見ているのか顔が幸せそうだ。うーんどう起こせばいいものか....。
「あのー?」
声を掛けたものの案の定起きないので、体を揺すってみた。
「あの~」ユサユサ
すると、男性は気のせいかさっきより顔がにやけている。あ、逆効果だ....。
しょうがないな、これだけは使いたくなかったが....。
「あぁ、借金が増えていく....。親に捨てられ、彼女にも捨てられ....俺はどうしたらいいのか....あぁ....ひもじぃ....ひもじぃよぉ....」
と男性の耳元で囁いた。
すると彼はどんどん顔を歪ませ唸り声をあげはじめた、そしてついに耐えきれなくなったのか目を開けた
「ぷはぁっ!!!!はぁはぁ....。」
彼は顔色が優れていないみたいだ。ちょっとやり過ぎたかな?苦笑
俺は優しく声を掛けた。
「あのー大丈夫ですか?」
すると彼は凄い勢いでこちらを向いた。」
「ヒ....ナト....様?」
「あ、うんそうだけど?」
彼は慌てて、飛び起きるようにすぐさま立ち敬礼をした。
「申し訳ございません!!
私はアルと申します!!
ギルドマスターのご命令により今回同行させていただきます!!よろしくお願いします!!」
「あ、こちらこそよろしくお願いします。」
「ヒナト様!!敬語なんて使わないでください!!私は平民上がりの下級騎士ですからなんなりとご命令ください!!」
と彼は慌てて手を胸に当てひざまついた....。
「いや、顔をあげてください!!敬語は使いませんからどうかアルさんも敬語じゃなくて普通に接してくれませんか?」
慣れないので変な気持ちだ。
「そんなことできません!!身分階級は絶対ですから!!」
「あ、うん分かったから ....顔近いって....。」
ずいっと顔を近づけてきたので俺は迫力に圧倒されてやむなく了承した。
それからしばらくたち、アルが料理を持ってきてくれるということなので部屋に待機した。ある程度アルとは打ち解けた感じにはなったかな苦笑
さあさて異世界の料理ってなんだろう?美味しいかな?と楽しみにしていると扉をノックしアルが入ってきた。
「失礼します。お待たせしました。こちらが朝食になります。朝なので軽めのメニューになっております。」
出されたのはサンドイッチのようなものとサラダとスープだった。
「これはなに?」
とサンドイッチ(仮)を指差しアルに聞いてみた。
「これはカパッチョといいます。コルという実を磨り潰して粉状にして水を加えると生地になります。具はグリースという魔物の肉を挟んでいます。カロネの郷土料理です。」
「魔物って食べれるの?」
「あ、はい!!食べれる魔物と食べれる魔物がいますが....。」
なるほど....魔物は食べれるか....。これはいい情報だ。
「いただきます!!」
最初に俺はカパッチョにかぶり付いた。
もぐもぐ....ふんふん
「うまいな、これ!!」
「ありがとうございます。」
これは、照り焼きチキンの味に似てるな。外はパリッとしてて中は柔らかくこれは美味い!!
続いてサラダにスープと食していくがどれもこれも美味しく俺の胃袋を満たしてくれた....。
「ふぅー、ご馳走さま」と手を合掌してから、俺はアルに声を掛けた
「行く前にシャワー借りていい?」
するとアルはこちらです....と案内をしてくれた。
「あぁ、ありがと」
と礼を軽く言い、シャワーを浴びる、あぁ生き返る....と幸せに浸っているとアルが声を掛けてきた。
「ヒナト様、着替えとバスタオルはここに置いておきますのでお使いください。」
「おぉ、悪いな」
「いえいえ、これも仕事の一環ですから」
とアルはすぐに下がり外に控えた。
俺は待ってるアルに申し訳なささを感じ早めに風呂を切り上げた。
「お待たせ!!」
「はい、お待たせしました。上がるのが早いですね。」
まぁアルのためとは言えないな。
「俺、いつも早いんだよ」
「そうなんですか」
と納得してくれたようだ。
「ではヒナト様、行きますよ」
「うん、分かった」
アルとギルドを出ると馬車が用意してあった。
何もこんな街のど真ん中に用意しなくても....人の視線を感じるんですけど....。そう思いながら重い足を進める。
「ではお入りください、今から大体20分ほどでグリンガム魔法学院に着きますのでそれまでごゆっくりしていてください。」
アルはそういうと馬車の扉を閉めた。
さぁ、楽しみだ....魔法学院....俺を楽しませてくれ....。