主人公の授業
七部
俺の魔力制御のオーラに唖然としている....
「あの、どうかしましたか?」
と声を掛けると同時に我に返ったようにヒソヒソと生徒が話をしだした。講師は腰を抜かしたようで、尻餅をついている姿勢から慌てて立ち上がった。
「ひ、雛斗君!!今のは!?太古の....「ストップ!!」」
講師の話を止め、耳打ちした。
「その話は学院長から聞いてください。今は授業を進行してください。」
講師の目には明らかに恐怖の色が浮かび上がっていた。
やばい....これはやばい....気を付けるようにと言われたがここまでオーラが出るとは....しかも指輪付きで軽くだぞ?どうなってるんだ!?
と頭を抱えているとシロアに後ろから声を掛けられた。
「雛斗くん、すごーい!!なんでそんなに魔力を出せるの?」
と俺の近くに寄ってきた。
「俺もわかんないだ。」
「綺麗だったよ!!」
頬を少し赤く染めているその表情はとても可愛らしい。
一般の男子....男性からしたらそれは好意のある異性に対しての照れと分かるだろう。
しかし雛斗はまるでそれに疎い。幼少から多くの異性に囲まれていたため異性と言う存在を認識していない。それは仕方ないのか自分が悪いのかそれは分からない。
そんな会話をごく平然としているシロアを見ていた生徒達が段々と話しかけてきた。
「雛斗、お前すごいな!!」
「びっくりしたぁー!!」
「驚いたよ。」
その目にはまだ少し恐怖の色があったが今は俺の事が気になることの方が恐怖を上回っているみたいだ。
数分ガヤガヤと話しているとやっと落ち着いたのか講師がこちらに来た。
「すまないね、雛斗君....ちょっと取り乱してしまって。私自身まだ未熟なところがあるようだね。
皆もこんな大人にならないようにね!!」
講師が軽いジョークを言うと生徒達は笑い合う。
「では、残りは次の授業でやりましょう。」
そう言うと講師は俺にチラッと目線を寄越してから先頭の生徒を引き連れ教室に戻る。
「なるほどねぇ、ある程度理解できてきたよ。あの男....。」
キーンコーンカーンコーン
授業の終了のチャイムが鳴り講師が教室を去ると女子が一斉に俺の席に近づいてくる。
「ねぇー雛斗君はどこから来たの?」
「雛斗君はなんであんな魔力がすごいの?」
「雛斗君、すごいカッコいい!!」
質問攻めにはあまり慣れてないので軽くあしらうことが多い。
異世界に来る前は学校にあまり行かなかったことや話しかけられてもめんどくさかったのですぐに切り捨てたのもあって、みんな話しかけてこなかった。
それを望んでたので特に不満もなかったが、ここでは未知が多い....そのため出来るだけ味方が欲しいし、敵を作りたくない。
何が起こるか分からないからな。
俺は出来る限りの営業スマイルで女子達(結構レベルの高い)に返答した。
「みんな、ごめんね?あんまり過去の事知られたくないんだ。みんなのこと好きだから逆に俺はみんなのことを知りたいな。」
すると、彼女達のボルテージは頂点に達したらしく狂喜乱舞してしまった。
「雛斗君が私を好きって....えへへへへ~」
「雛斗君が私を知りたいってふふふ」
「雛斗君が....ひなとくんひなとくんヒナトクンヒナトクンヒナトクンヒナトクンヒナトクンうひょおおおおお!!
」
みんなそれぞれ思っていることは違うらしいが、一人危ないやつがいるな....
すると、人混みの中から白い手が伸び俺の手を掴んだと思いきやガッと思い切り引っ張られた。
「おわっ!!」
人混みを抜けるて引っ張った人物を確認するとシロアだった。
「こっちこっち!!」
シロアは手を握ったまま俺を引っ張っていった。
「はぁはぁ」
廊下を走り、階段をかけあがり走り続けていると、ついに屋上に出た。
息が切れているシロアに声をかけた。
「シロア....さん?」
徐々に落ち着いてきたのか息が荒いものから静かなものに変わっていった。
「ここまでくれば、安全です!!」
どうやら、俺を助けてくれたらしい。とりあえず握った手を離して欲しいのでシロアに頼んだ。
「あのさ、そろそろ手....良いかな?」
数秒の空白の時間....突然顔が赤く紅潮し、しどろもどろに答えた。
「はぅぅ!!すみません、今日あったばかりの私がこんな大胆なことを....///もうお嫁に行けません....」
シロアはそう言いながら顔を両手で覆ってしまった。
「いいよいいよ、シロアさん別に気にしてないし、逆に助けてくれて嬉しいよ。」
シロアは両手を少しずつずらしていく。
「本当ですか?」
「本当だよ!!」
顔半分が隠れていても一際目立つその美貌は他の男ならいちころだろう、その上、頬が赤く火照っていて涙目なら落とせない男はいないだろうレベルだ。
「涙を浮かべないで?君に涙は似合わないから....」
ここまで甘い言葉を平然と吐けて尚且つ似合っている男性は彼しかいないだろう。
シロアはよりいっそう頬を赤らめ目元を擦った。
「は、はい!!」
ゴシゴシ
そんな本人は気づかないがはたから見たらイチャイチャとした会話をしていると、突然俺のいた教室の方で爆発音が鳴り響いた。
ドゴォォォォンン
「な、なんだ!!??」
俺は初めてこの世界で恐怖と親近感が混じった不思議な感覚に浸った....。




