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第一話 悠久の眠りを妨げるは




 明くる終末の祝日ホリデイ

 僕は珍しくも緩慢たる午後の睡眠をむさぼっていた。


 今週は、とにかくご機嫌だった。

 ふかふかとしたベッドに体をあずけ、読みかけの『西廻り航海者』という本に心を躍らせ(――むろん、これは夢の中でのことだが)、巷で人気の冒険小説を枕に眠りの中にいた。


 ――ああ、風が心地が良い。

 風ってのはなんて心地良いんだ。例えるなら、そう、銀色の風だった。この国には新緑の春を感じさせる風や、冬を感じさせる白い風、いろんな風があるが、僕は季節を問わずこんな午後の微睡みに吹く風が大好きだった。


 魔導書の呪いから解放された僕は、今までにないほど充実した気持ちになって日々を送っていた。こんな毎日は、今まででなかったのではないか。


 少しばかりの惰眠くらい、許されてもいいだろう。

 なにせ、今日はアストレア国の記念するべき祝日だ。建国記念日だ。巷では売り物を販売する露天商の賑やかな――貴婦人マド・モアゼルをつかまえる声が聞こえてくる。売る側も、買う側も楽しそうである。



 そんな一息の安らぎを壊したのは、またしても使用人のセダンからもたらされた『一階に、電話が届いております』との報告だった。



「…………誰からの電話だい?」


 ページについた粗相のヨダレをごしごし、服の袖で拭いながら、寝ぼけ眼の僕は使用人に問いかけた。


「オリゼ様、と申される可愛らしい声をした女性ミセスでございます」



 …………。


 僕は不機嫌に黙った。


 出ない……わけには、いかないだろう。なにせ例の『魔導書』の件を解決してくれた恩人だ。僕はしぶしぶといった態度を隠さずにベッドより立ちあがると、すぐに彼女が待っているという一階の電話口に向かった。


 彼女からもたらされた一本の電話が、この長い二日間の始まりだった。

 僕は電話を取ると、短く内容を聞き『はぁ』とため息。それから、使用人のセダンに声をかけ、外出着に着替えるのだった。





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