決着 初陣のS.F.F
やべぇ、死ぬ、全身くまなくいてぇ、何が起きた、どうしてこうなった。 "机の牢獄"がいきなり、2つ、両脇から突っ込んできた。 もろに食らっちまった。 "机"持ってたせいでガードもできなかった。 くそが。
「マジ...かよ。 絶対、どっかしら骨...折れてる...内臓が...くそ...逝っちゃってたら...どうすんだよ」
「俺は切り抜けたッッ! 俺の"球質"と"球種"の特技はお前等にも負けねぇ。 "特技"の回転を加えるにはよぉ、ピッチングフォームに則ってなくたっていいんだよぉ!」
そうか、こいつの机を飛ばす"特技"は球質――ボールに与えた回転によって起きるんだ。 衝撃、だとか回転だとかの力で、"衝突球"のように"牢獄の机"を砲弾に変えやがった。
「やるじゃぁねぇか、勝ち誇りやがって...だけどよ、若菜ちゃんにぶっ飛ばされろ」
「そういや、さっきの女はどこへ行ったぁぁ! "牢獄"から気づかれずに移動できる筈がないっ! 隠れやがってぇ!」
「残念でした、うしろっでーすっ」
瞬間、ニコポの体に色とりどりの"縫い物"が巻きつけられ、地面に引き倒されていた。何が起きたのか分からないが、傍には若菜が立っている。
「どおかなー? 手編みのセーターなんて、モテる男の子じゃないと滅多に貰えないよ? まっ、袖ないけどっ、似合ってるね!」
「なんだこれはぁー! 動けない! 千切れない! お前一体何をしたああー!」
「手芸部の部長代理をやっております森崎若菜でっす! 以後ヨロシク!」
「若菜、一体どうやってあの状態からこいつの後ろに...」
「おっ、本日のMVPだねっ! 大丈夫~?」
「この俺が、野球部が、ロシアが、負けただとぉぉ」
「...さて、こんなボロボロになったんだからどういうトリックかくらい聞かせろよ」
「じゃあトオルっちがボコボコにされてたあたり見てみてー」
はいはい、机が散乱していますが、特に何も異常ありません。
「何も変わったことなんかねぇよ」
「じゃあー、次はね、あそこらへんにあるもの全部個数言ってみて!」
「机たくさん、椅子たくさん、掃除ロッカー2本、水槽1つ...」
「それです!」
「水槽がどうかしたわけ?」
「それじゃなーい! あっ後ね、水槽の呼び方は1つじゃなくて1本だから!」
「はい、そうですね。掃除ロッカー...ああ、確かになんで2本もあるんだ? この学校1教室につき1本だろ」
「トオルっち、あたしが最初に言ったこと忘れちゃったとか? この行事で死にたいなら別にいいんだけど」
こいつ俺しか結婚する相手いないとか言ってなかっけ。
「この行事中に"不自然な事"があったらそれは誰かの攻撃だと思え!よ」
「あーあれあれ! 覚えてる! すっげぇ覚えてる!」
「お前等さっさと本題に移れや」
全くもってニコポに突っ込まれるとは思わなかったが、まさにその通りだ。 何者かに引き伸ばし工作だと思われるからな。