初陣のS.F.F 4
「そぉぁぁい!」
「きゃっ」
ガンッ。
飛んできた机を手元の机ではたき落とす。 落とすたびに手が尋常じゃない痺れを起こすけど、直撃するよりはましだ。 そういや、教室で野球をやるなって小学生の頃先生に怒られたけど、これも野球にはいんのか? 随分エクストリームな遊びだが。
地面にでかい音を立てて机が転がる。4発だか5発だか、とりあえずなんとか凌ぎきった。
「はぁはぁ......もう...終わりかよ! 言っとくけど......全然疲れてないぜ!」
ニコポからの返事はない。 くそが、返事がないと余計な奴が会話に入ってくるんだよ! 返事しろ!
「ねぇ、机の風圧でスカートめくれるところだったんだけど! 今日は見せる日じゃないんだぞっ!」
「くそ、やっぱり......てかよぉそろそろお前も真面目にやらないと、俺も怒るぞ?」
「だーいじょっぶい! ねぇねぇ、耳貸して?」
若菜の柔らかな唇が耳に当たる。 ふーってされたらめっちゃ興奮するかもしれねぇが、時と場合を考えろよ?。 お前も。 俺も。
「実はね実はね?――――なんだ。」
「はぁ? 何言ってんだお前」
「んふふー、まぁ見ててよ。 かるーくニコポ捕まえるから、時間稼ぎ、お願いね? 」
「お前等は分かっていない。 この絶望的状況をな」
あら、いつの間にか教室入ってきてるし。
「じゃあ、よろしくねっ」
「女など後回しだ。 まずはお前を殺す」
俺の周りには自分で弾いた机や近くにあったものまで"重なりあって"散乱している。 おまけにここは教室のほとんど隅だ。 ......あ、そうか。 やっと気づいた。 気づいてしまった!
「これは......"机と椅子の牢獄"だああああ!逃がさない為の、最初に投げてきたあの威力のボールを投げる! 防御の上からでも確実にトドメを刺す。 そのためにっ!!」
「俺の投球モーションはぁぁ、クイックで1秒ジャスト!」
「殺されてたまるかぼけええええ」
球が、来る。
ゴィィン。 割と軽めな音を立ててボールは窓の向こうへと転がり落ちていく。 つまり、俺は生きている。
「防いだ! 防いだぞ!、"机の盾として斜めに持つ"、これが、こいつの攻略の鍵だ!」
「こいつぅぅ......やはり侮れんなぁぁ、"追い詰めているのに追い詰められている"この感覚っ! 野球で...いやマウンドで死ぬほど浴びてきたぜ。 思うにこの感覚は、"相手が対応しようとしている"と思うことから始まるんだぁぁ」
やべぇ、ニコポもちょっとやばそうな感じだ。 なんつーかこの世界にはまともな奴はいねーんじゃねえか。
「つまりよぉぉ、初恋の子もろとも、容赦せずに切り抜けろってことだぁぁ! 食らわせるぜ!」
「無駄だ! "机の傾斜"によってお前のボールは、俺を殺れる程の衝撃を食らわせることはできねぇ!」
「......ところでよぉ、知ってるか? 野球の解説者ってのはな、野球選手の出身が多いんだよ。 つまり解説者気取りのお前は俺の"特技"を推し量れねぇ。 現に今、俺が"攻撃を終えている"ことにもきづかねぇんだからなぁ!」
――――え?
「ドッゴォォォン。 ってなとこだぜ」
はい、ドッゴォォンでした。