初陣のS.F.F 3
「ねえってばトオル! さっきから呼んでるでしょうがー! さっきから独り言喋ってる場合じゃないでしょ! いつニコポが仕掛けてくるか分からないのに!」
「考えてんだよ! ニコポのボールは一応避けることができる! それにきっとだがボールを何個も持てるわけじゃねぇ! ここはニコポが全弾使うまで耐えるぞ」
「......ニコポニコポ言いやがって。 俺にはなぁぁぁ、母ちゃんから貰ったニヴェレンコって名前があんだよおおお。 それをどいつもこいつも俺のことニコポとか略しやがってよぉ、決めた。 あいつらは生かさねぇ。 悠長に喋りやがってよぉ、初恋の子に馬鹿にされるってのは怒りMAXだぜ」
入り口の影が消えた。 異常な空気感、来る。
「構えろ!」
「上見て! もう球は放たれてるっ!」
ボールは壁上の換気窓から投げ込まれていた。だが、角度的にも速度的にもまるで問題にならないくらい高く弱い。 あれじゃあ俺たちの所まで届かない。
「あれじゃあ当たらない! ニコポは一球だがボールを損した!」
「...いえ、きっと何か狙いがある! この行事に"備え"をしてきていない生徒なんてトオル以外いないわ!」
飯食いながらテレビ観てた俺を急に呼び出したのはテメーだろうが。 って今はそれどころじゃない。
「ボールが落ちる!」
ボールが落ち、机に当たる。 その時、衝撃か、空気の振動か、"何か"が見えたような気がした。
ゴギッとかいうイヤーな音と、視界が歪む。 くそが、被弾した。
「ちょっと! トオル、しっかりして!」
「い、いでぇ、つ、机、机が飛んでくるなんて聞いてない!」
ボールが触れた途端、机がテポドンよろしくぶっ飛んできた。 自分でも何を言ってるかわからねぇ。
もう腰とか腕とかがとにかくイテェ、マジで。 もうすっごい帰りたい。 が、負けっぱなしってのもムカつくわな。
「若菜ちゃんを心配させやがって。 あいつぶっ殺してやる。」
「キャーッ! トオルっちかっこいい! ステキ! 抱いて!」
「...なぁ、俺のかっこいいシーン台無しにしないでくんねぇ?」
って、余所見してる間にまたボールが降ってきてる。同じ手口でネチネチしてきやがって、こうなったら、目には目を、野球には野球、だろ。