初陣のS.F.F 2
「"何か"を、"不自然な何か"を見たら攻撃と思え! 先輩が教えてくれたの! さっさと立って!」
「まじかよ! エンカウント早過ぎだろ! ってうそぉ! 扉が無くなってる!」
教室のドアは先ほど避けた"何か"に吹っ飛ばされているようで、教室の中ほどにくの字に曲がって鎮座してやがる。 吹っ飛ばされてるのに鎮座っつーのはおかしな表現だがな。 いや、既に"吹っ飛ぶこと"は終わってるから鎮座なのか? しかし、教室のドアって曲がるんだな。 折れる、じゃなく曲がるのか、意外と...
「早く入れっつってんのよ、このど低脳!」
「イタタタタタタ! 襟首掴むな引っ張るな!」
「あんたが死んだらあたしと結婚する人なんかいないのよ! ちょっとは考えなさい!」
「それ冗談だろ? ってかそれどころじゃねぇ、"何"で攻撃されたんだ? 廊下には誰もいなかった! 」
「飛んできたのは、きっとこれね......」
若菜が足元に転がっている"何か"を拾い上げる。教室の電気がついてないせいで、見にくいな。なんだこれ、丸くて、かたそうな...あー、なるほどね。
「若菜、これは野球のボールだ! "敵"は野球のボールを投げ込んできているっ!!」
「うん!私もこの"敵"は野球部だと思うわ!」
「野球部は誰が代表か分かるか? 今は少しでもデータが欲しい!」
「おっけー! ニヴェレンコ・ポルチェルスキ。ロシア人」
「――なげーよ、名前」
「留学生らしいわよ。 トオルっちこの前あたしのこと可愛いって言ってたよね? だからあたし狙われちゃってるのかも...襲われちゃったらどうしよう?!」
「...おい......そんなこたぁ今どおおでもいいんだよおおおお! "補足"されたのなら! さっさと逃げるか戦うかを決めないとやばいだろ!」
「ねぇ、トオルっちって思った以上にノリノリだねっ」
「お前もな」
「その通りだ...しかし、お前達に"対応"する暇は与えない」
入り口から声だ。 え、 声?
「若菜! いつの間にか! 姿はよく見えないがニコポは既に入り口から様子を、戦略を立てているぞおお!」
「トオル、少しでも距離を取って! ニコポの攻撃は多分、速度だとか威力だとか、野球の"投球"に関する特技を使ってる!」
「そう、そうやって教室の反対、黒板より反対に逃げることは分かっていたぞぉぅ。 これで!、1アウト、残り2アウトでゲーームセット!」
何を一人でブツブツ言ってるんだあいつは。 野球の投手ってのはマウンドに上がれば孤独になると言うが、きっとあいつはマウンド外でも孤独だな。