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異能力?部活動バトル!  作者: Kesuke
1日目
34/35

接触とノーバディ・ノウズ 2

「やっぱり誰もいないかな...」


窓から射し込む光を見ながら若菜が呟く。


「よし、行くぞ」

「うん」


窓から射し込む光に反射して、ふわふわ漂う埃、そして奥を見るほどに薄暗くなっていく廊下とのコントラスト。

この空間がある種侵してはならないような別世界に見えてくるから不思議だ。


ゆっくりと、光の柱を抜け、薄暗がりへと足を踏み出す。

図書室へと続く扉は階段から進んだ通路の先には一室だけ小さくぽつんと作られた理科準備室(という名のただの倉庫)がある。

とはいえ、そこには別段の用はない。

ほんのちょっとの用心、とりあえずの確認程度に理科準備室を覗き見て、いつものようにガラクタしかないことを確認する。

薄暗い部屋の中では白骨標本がこちらを向いて鎮座している。 生徒達が悪戯心で置いたのだろうけど、こちらを見てニタニタ笑っている(ように見える)頭蓋骨の置物なんて、今この状況では滑稽なだけだ。


「やっぱり、誰もいない」

「嫌な感じだね...」


若菜は意外とビビりなようで、さっきから俺の制服の裾を握りしめていやがる。 シワになったらどうするんだ。


「んじゃ、そろそろ本命...」


ガァンッ。


部屋の確認もそこそこに、本命の図書室へと向かおうとした時、馬鹿みたいに大きな、嫌な金属音が響く。

音は、階下からだろうか。

階下?

階下にはニコポ達がいたはずだ。


ニコポ達に何をしたのかを確認しに行こうとして、止められた。

あまり重さを感じさせなかった筈の制服を掴んでいた手が、急に漬物石のような強烈な重力を感じさせたせいで、バランスを崩す。


「うわっととと」


行き足がついていたせいか地面と身体が一瞬平行になったものの、なんとかバランスを持ち直す。


「ちょっとマジで危ないって!」


言いつつ振り返ってギョっとした。

若菜がへたり込んで、――半泣きである。


「えーっと......どうした?」

「腰、抜けちゃった...」


そんな、馬鹿な。


「嘘だろ?」

「ホント...」


そこまで言って思い出してきた。

若菜は幽霊だとか学校の怪談だとか言うのが死ぬ程嫌いだったことに。

小学生の頃に友達と一緒に手の込んだ幽霊騒ぎを若菜に仕掛けた時なんて3日間ほど家から出てこなくなったくらいの幽霊嫌いである。

ゾンビだとかスプラッターだとかパニックホラーだとかは平気な癖に、幽霊物、それも和風なものだけが大っ嫌いなのだ。

っていうか、今更ここでかよ。

はぁ、と溜息をつく


「まさかとは思うけど漏らしたりしてないよな?」

「それは流石に...大丈夫...だと思う」

「なら大丈夫。 ちょっと待ってろ、すぐ戻るから」


そう言って再び階段へ向き直る、そして、走る。

――進めない、 一向に。


「だぁぁぁー! 若菜ッ! はなせっ!」

「無理無理無理っ! イヤッ、いっちゃダメっ!」


高校生にもなってぶんぶんと頭を振りつづける若菜を置いていく事もできそうにない。


 「とにかく! 今はそれどころじゃ」

 「無理っ!」


 ああもう、どうしたものか。


 「三上ぃ!! 今の音は気にするな!」


 階下からニコポの声が響く。 良いタイミング、なのだけどここまで聞こえてくるって結構な大声だぞ。 他の生徒に聞かれてたらどうするんだ。


 「...携帯の番号、聞いとけばよかったな」


 ボリボリと頭を掻く。 今更ながらにそんなことを思う。


「で、もう立てるようになった?」


俺の服の裾を掴んだまま、よろよろと立ち上がろうとする若菜の手を取って引っ張ってやる。


「ごめんね、もう大丈夫だから」

「今は幽霊より他の人間の方が怖いけどな、俺は」


嫌味に聞こえたかな 、と言ってからその考えが頭をよぎる。

まぁでも、事実だしな。

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