重厚なメディバル・ウォーフェア 3
「貴方達...味方?」
ポニーテールの女生徒がチラりとこちらを見て言う。 胴当て以外は防具をつけていないようで、結構スタイルがいい。 道着を来た女の子が人気あるのも納得かもな。
それに、あんな騎士から一撃もらうなんてことがあったら、防具があろうとなかろうと関係ない。
「俺の名前を知らねぇのかよ。 ちょっとショックだな、留学してきた天才高校球児なのによ」
「うわー...自分で天才高校球児とか言っちゃってる...」
「若菜、言うだけならただなんだから別に放っておけって...」
「トオルっちは何とも思わないの...?」
「いやそりゃ引くけど、今はそれどころじゃねぇって」
「おいぃ、聞こえてんだよ」
「助けてくれて礼を言うけど...茶道部の部室へ逃げなさい。 ここは私が食い止めるから」
女生徒は、騎士から5メートルほど離れたところで薙刀を構えなおす。 騎士は、立ち上がったきり攻撃してこない。 俺達との思わぬ遭遇にビビっちまったか。 そうだといいけど、びびってるのは俺の方だ。 それに引き換えニコポの奴はなかなか肝が据わってやがる。
「ああ、茶道部に行くのは後ろのこいつらだけだぜ。 3年6組の坂上 彩先輩、だっけか」
「なんで私の名前を...」
「ニコポっちは変態だもんねっ!」
「若菜、お前静かにしてろ」
「...まぁ後で話しますわ。 ひとまず、目の前のアレをやらねぇとな」
全員が構える。 5対1ならなんとかなるだろ。 っていうかちょっと待て、騎士の体から青いオーラみてぇなのが出てる。 こういうのは確か昔漫画で読んだことがあったな。
「なぁ、あの騎士から出てる青い湯気みたいなのってなんだ?」
「はぁ? まだ戦ってもねぇのにもう頭やられちまったのか?」
「いや、あの騎士の技かもしれない。 気を引き締めて」
「トオルっちは頭が悪いだけでおかしくはないよ!」
「ああ、いや、うん、すいません」
どうやらオーラっぽいのが見えるのは俺だけのようだ。 それに、あえて言わなかったけど俺以外の全員、どっかしらからオーラ出してるわ。 ニコポはボールを握った手、若菜と水瀬さんは両手、坂上先輩って人は薙刀から。
もしかしてこいつらの力と関係してんのかな。
「来ないならこっちから行かせてもらうぜ。 おらっ全員行けー!」
ニコポがボールを投げると同時に坂上先輩と若菜が走り出す。 なんでこいつらこんなにタイミング合ってるんだ。 恐るべし協調性。 一拍遅れたけど、俺も飛び出す。
ボールに向かって、騎士が左手を払う。
「そいつは打てねぇよ」
ボールは軌道を斜めに変化させ、弾こうとする左手を避けるように騎士の右足首に当たる。 何気にニコポの制球力は半端じゃない。
一拍置いて、騎士の右足だけが急に"弾かれた"ように浮き上がり、騎士がバランスを大きく崩す。
左手が空を切り、さらに軸足まで崩された騎士に、ほぼ同時に坂上先輩が薙刀を振り下ろす。 おお、ナイスコンビネーションだ。 だが、それでも騎士は大剣で薙刀を受け止めた。
どんだけ修羅場潜ってんだよこいつは。
「くっ! 防がれたっ!」
「トオル! 挟み撃ち!」
「俺何も持ってねぇ!」
攻撃の段階になって、いまさら武器を持ってないことに気がつく。 素手で殴りかかったって全身甲冑で固めてる奴に効くわけがねぇ。 っておお、丁度騎士の背後あたりに消化器があるじゃないか! さすがに鈍器なら、兜にも効くだろ。




