リルカ
少年はゆっくりと天井を見上げていた
先程まで目の前の景色は星空だったはずなのに、と半ば疑問を抱きながら体を起こす
「目が覚めた?」
「!」
それは少女の…【追憶の丘】で会った彼女の声だった
ここは十中八九、彼女の家だ
「まず、謝っておくわ ごめんなさい」
「…どうして?君が僕を運んでくれたんだろ?」
「私、あなたが眠ってる間に『記憶閲覧』で記憶を見ようとしてしまったの」
少年は言ってる意味が理解できない
ただその響きを聞いた時、なにか懐かしい感じがした
「『記憶閲覧』……って何?」
「えっ!?知らないの?」
「親族以外への使用を禁止されてるけど簡単な魔法よ」
「ま…魔法…??」
少年はさらに困惑している
言葉の意味は分かっているが、それ故に「分からない」という感じだ
彼女は少しすると、慌ててしゃべり始めた
「あっ…ごめんなさい!そうよ、あなたの記憶を覗こうとしたら何もなかったわ」
「あなた……記憶喪失…よね?」
記憶喪失
改めてその言葉を言われると何故かまた懐かしい感じがする
これは自分の記憶なのだろうか?
「記憶」がどういうものか、どうやら忘れてしまったようだ
「そう…らしいよ」
「……君の名前は?」
? 予想できない、考えてない言葉が口から放たれた
「私の名前はリルカよ、よろしくね」
「ところでこれからあなたはどこに……あら?」
少女―リルカが少年のほうを見ると少年は窓から出て行った
「………、とにかくこれ以上迷惑をかける訳にはいかない……!」
「街はあっちかな」
少年は街を目指して走っていった
そういえばお礼を言うのを忘れていたけれど…
一方のリルカは少年が出ていき、酷く沈黙した小屋の中に取り残された
―が、
「…いってらっしゃい」
彼女は太陽のような微笑みを浮かべ、静かに彼を見送った