少女とカケラ
その少年は野原に横たわり、頭上には瞬く星空が溢れんばかりに輝いていた
「ここはどこ?」
無愛想な顔をした少年はゆっくりと体を起こした
彼はその後周りを見渡した
彼が横たわっていた場所は随分と高いところで、下をみれば街が広がっていた
街の明かりが目にしみる
と、そこでやっと彼は気が付いたように空を見上げた
彼は空を仰ぎ、問いかける
「僕は誰なの?」
空からは何も返って来ない
しばらく彼が黙ったまま立っていると、下の方から13,4歳だろうか自分と同じぐらいの背丈の女の子が登ってきた
「…あなたは誰?というか何故この場所に居るの?」
不思議そうな顔をしてこちらを見ている
その瞳は怖いほど澄んでいて、純粋そうだ
ただ彼女からの問いに彼は答えることが出来ない
でも、折角話し掛けてくれているのだから、ということで彼はオロオロしながら話し始めた
「えっ…僕はその……ここで眠ってたんだ」
「眠ってた…?ここは立入禁止の【追憶の丘】よ」
立入禁止…【追憶の丘】?成程そういわれると周りにきれいな花が咲いていたり、神々しい雰囲気が漂っている気がする
と、彼は感じた
彼は黙っているが彼女の質問は更に数を増していく
「わたしもそれを破ってここに来ているのだけど……そういえばあなたみない顔だわ」
「どこの家の人?」
「それに着ている服も変わってるわね…どこで買ったの?」
当然、自分の名も分からぬ少年がこんな問いに答えられるはずはない
彼の精神はどんどん追い込まれていった
月が雲間に光を投げていた
月――光……!……
彼の脳裏に一瞬映像が流れた
同じ場所…しかし丘は太陽光に照らされている
花々が囲む中に一人の男が立っていた
それは自分?
男は手をかざす すると周りが凍りつきまるで雪景色に……
『待っていたよ』
えっ…?
その声が頭に響いた瞬間、流れていた映像は消えた
同時に現実の彼が頭を抑えて倒れた
「…―…っ…!!?」
「きゃっ!どうしたの!?大丈……」
少年の意識はどんどん遠のいていく
少女の声は届かない
「僕…は………」
僕は誰だ