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刹那の夢?

あくまでも夢です



「アロウン……」


柄の部分に赤く輝くクリスタルのついた細身の剣に、


黄金の髪ををなびかせた白い鎧を着た女剣士は、別れの痛みを隠しきれない声で呼びかけた。



「アロウン、私は…」


『悲しむな、リアン』



優しいが、強い意思を感じさせる声が、彼女の手にしている剣から発せられた。


だが直径が八メートルを超す巨大なクリスタルの周りに集まった者たちのなかで、誰一人、それを不思議に思うものはいなかった。



¨神代のクリスタル¨と呼ばれるクリスタルには、すでに三本の剣が突き刺さり、共振を始めている。



空中都市¨エアリアル¨のコアである巨大クリスタルを破壊すれば、天を覆い尽くし、今にも世界中の全てを包みこまんとするこの偽りの大地を宇宙に飛ばす事ができる



だがそれは、長い間、共に戦ってきた戦友との永遠の別れを意味していた。



『リアン。お前は強く……とても強くなった。あの天界王を自称する¨アースナル¨を倒すほどに…』



「でもそれは、アロウンが──」


──いてくれたからだよ


そう続けようとした彼女の言葉を遮り


『それは違う』



父が娘を諭すようにアロウンは言った。


まるで顔が見えたら微笑みが浮かんでいるような声音で



『お前が奴を倒せたのは、この私──インテリジェンスソード¨アロウン¨があったからではない。所詮ただの剣だからな。おまえだから──リアン・ハーティリーだから、奴に負けなかったのだ。』



「そんなことない……そんなことないよぉ……」


リアンは、いやいやをする子供のように首を振った。


その様子に、アルファード神殿の司祭服を纏った青髪の青年は、眼鏡の奥に浮かんだ涙を拭い、白髪の少年は目を伏せた。



だが、その二人の間からショートカットの銀髪を揺らしながら、軽装の青年が一歩足を踏み出した。


青年は黒と赤の手袋を握りしめて拳を作ると、それでいきなりリアンの頭を殴った



「リディアさん!」


白髪の少年が、驚きの声を上げて駆け寄ろうとしたが、青髪の青年はそれを無言で止めた。



リディアと呼ばれた青年は、リアンの鎧の首もとをつかみ、彼女の顔を無理矢理上げさせた。



「いい加減にしろよリアン!おまえだけが悲しいと思ってるのか!?俺やラスティやライトは平気だと思ってるのか!?みんな悲しいに決まってるだろ!だけど、それでも、大事な人や守りたい人や大好きな人たちを守るために、それを乗り越えようとしてるんだろ!!それなのに……お前はッ─リアン・ハーティリー!!」


そこで声を上げたリディアにリアンは怯えた。



「お前は……何をしている?お前にも守りたい人が、この世界にいるんだろう?そうじゃないのかリアン!?」



リディア・パーシヴァルは力なく膝をつきながら


どん



とリアンの胸甲を軽く叩いた。



「俺だって……俺だって、できるなら、リリスと別れたくないさ……でもこの下には、俺の大事な家族チビたちがいる!お前との旅で出会った…いや、お前と会う前から出会ったみんなもいる!他にどうしようもないだろ!」



うつむいたリディアの赤い瞳から、ツーと涙が流れた


『ありがとね、リディア』


クリスタルに刺さった片刃の剣……と言うよりも刀というのにふさわしい剣──インテリジェンスソード¨リリス¨が、そう呟いた。



リディアは顔を上げて¨彼女¨に手を伸ばしかけ、それを止めて拳を握りしめるようにした。


そしてその拳の上に、涙が落ちる


『それでいいんだよ。大好きだよ、リディア。私の……愛しい人』



リディアは嗚咽を漏らした顔を¨神代のクリスタル¨から反らした。



これ以上、涙を見られたくないかのように……



『わかってくれ、リアン』


アロウンの声にリアンは顔を上げた。



その瞳が、驚きに大きく見開かれた。



彼女の目は、クリスタルの光に照らされた剣の背後に黒髪の若い青年の幻影を見ていた。


若い青年は、黒い見慣れぬ服を着て、微笑んでいる。


「ア、アロウン……?」



だがそれが見えているのはリアン一人だけなのだろう



他の誰にも同様はなかった。


アロウンは静かに続けた



『リアン、リディアの言う通りだ。ここで¨神代のクリスタル¨を破壊しなければ、全てが無駄になる。私たちの二千年の生を、生きた理由を……無駄なものにさせないでくれ──我が遣い手よ』



「アロウン……」



リアンは剣を握ったままうつむいた。黄金の髪に隠された奥で、クリスタルの光を受けて、涙が光った。



不意に¨エアリアル¨の振動が激しくなり、白髪の少年──ライト・イシュタールの表情が不安に曇り、司祭服の青年──ラスティ・エルリックの顔が険しくなった。


偽りの大地の落下まで、おそらくもう、時間はない。



だが、彼らは長く待つ必要はなかった。再び顔を上げたリアンの表情からは、迷いが消えていた



「……わかったよ、アロウン」


リアンは立ち上がると、剣を持ち直し、切っ先をクリスタルに向けた。傷ひとつない刃が光を受けて美しく輝く。


その光景を周りの人達は神代の女神の様だと錯覚させられるほどに…



『そう、それでいい。やってくれ。そしておまえたちが、クリスタルに代わる、新たな世界を導く光となるんだ──英雄という光に』


柄を握る手に、リアンは力を込めた。



「アロウン……私、絶対に忘れない。あなたのことを。無力だった自分のことを。私は、英雄なんかじゃない。リアン・ハーティリーは、友達を犠牲にしなければ、好きなアロウンを犠牲にしなければ世界を救えなかった、情けないよ。だから──私は、その事を絶対に忘れない。」



『……ありがとう。戦友よ』



まるで目をつむるかのように、アロウンは剣のクリスタルの輝きを小さくした



「うわああああっ!」


リアンは切っ先を¨神代のクリスタル¨に突き立て、一気に押し込んだ。







─────





チュン……チュン




夢?



「………」



なんだ!!今の恥ずかしい夢は!?



厨二か?


厨二なのか!?



あり得ないだろ


なんだよアロウンって!!リディアとか誰だよ



自分で見といてなんだけど恥ずかしいよ!!////




「……刹那〜朝だよ〜お姉ちゃんが起こしにk………」




※只今の刹那の格好は朝からいきなり悶えまくってる人です。=変態?



「ご、ごめんね。お姉ちゃん……なにも見て無いから」




そう言ってドアをしめて帰っていく





ご、誤解だぁぁぁぁあ!!





その日の朝食はとても気まずかった




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