ー第4節 激昂したレイに肩を掴まれ問い詰められるが、ミオはただの数字のパズルを合わせただけだと答える。自分が生み出したものが会社を揺るがす爆弾であることに全くの無自覚だったのだ。
第4節 激昂したレイに肩を掴まれ問い詰められるが、ミオはただの数字のパズルを合わせただけだと答える。自分が生み出したものが会社を揺るがす爆弾であることに全くの無自覚だったのだ。
「待て! どこへ行く気だ!」
「えっ……? ですから、紙の原本を取りに……」
振り返ると、レイ部長は血相を変えて私を睨みつけていた。
その目は、獲物を前にした猛禽類のように鋭く、同時に深い焦燥と混乱が入り混じっていた。
「とぼけるな! 君はいったい誰の指示でこんなものを作った!? どの派閥の差し金だ! このデータが何を意味しているか、わかっていてやっているんだろう!」
「ひっ……い、痛いです、レイ部長……」
肩に食い込む指の力に顔をしかめると、彼はハッとして手を離した。しかし、その鋭い視線は私を射抜いたままだ。
「すまない。だが、答えてくれ。この完璧なデータベース……いや、【真実を暴く神の検索機能】とも呼べる代物。これを、君一人で作ったというのか? 目的は何だ。これを役員会に持ち込んで、現体制を転覆させる気か?」
息もつかせぬ勢いで問い詰められ、私はきょとんとして首を傾げた。
派閥? 体制の転覆?
彼が何をそんなに興奮しているのか、私にはさっぱりわからなかった。
「目的も何も……私はただ、数字のパズルを年代順に合わせただけですが?」
「……は?」
レイ部長が、虚を突かれたように固まった。
「パズル……だと?」
「はい。入力しているうちに、同じような会社名や、不自然に同じ金額が繰り返されていることに気づいたんです。だから、それらがどう繋がっているのか気になって、エクセルの関数で線を引いてみただけで……。いけなかったでしょうか?」
「いけなかった、だと……?」
私が本当に何も理解していないと悟ったのか、レイ部長は呆然と呟いた。
私は純粋に、仕事の効率化のためにデータを整理し、パズルを完成させるような楽しさでマクロを組んでいただけなのだ。そこに悪意も、出世欲も、誰かを貶めようという野心も一切存在していない。
自分が無心で作ったエクセル表が、歴代の監査部が喉から手が出るほど欲しがっていた『会社を揺るがす不正の証拠』であり、爆弾そのものであることに、私は完全に無自覚だった。
「君は……自分がどれほど恐ろしいものを生み出したか、本当にわかっていないのか……」
レイ部長は、まるで信じられない生き物でも見るような目で私を見つめていた。




