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ー第5節 地下資料室は会社の心臓部たる特務情報管理部へ昇格。誰もが能力を崇める中、レイはミオに真摯な愛を告白する。ミオは争いのない穏やかな日常で現世での至高の幸せを生き続ける。

第5節 地下資料室は会社の心臓部たる特務情報管理部へ昇格。誰もが能力を崇める中、レイはミオに真摯な愛を告白する。ミオは争いのない穏やかな日常で現世での至高の幸せを生き続ける。


 大物役員の逮捕から数ヶ月後。

 大都ゼネコンの社内は、かつての泥沼のような派閥争いやマウント合戦が嘘のように浄化され、風通しの良いクリーンな組織へと生まれ変わっていた。

 私が焼け跡から救い出した資料をもとに構築された【神の検索機能】は、今や会社のすべてのプロジェクトを監視し、不正を未然に防ぐための最強のシステムとして正式に導入されている。

 そして、かつて「姥捨山」と揶揄されていた地下資料室は、今や会社の心臓部ともいえる新部署「特務情報管理部」へと異例の昇格を果たしていた。

 新しく用意されたオフィスは、最上階の光が差し込む広く美しいフロアだ。

 そこで私は、相変わらず無心でキーボードを叩き、過去から現在へと繋がる資料の整理を続けていた。

「特務情報管理部長」という肩書きを与えられ、誰もが私の神懸かった情報処理能力を崇め、敬意を払ってくれるようになったが、私の心の中にある『至高の境地』は何も変わっていない。

 地位や名誉への執着がない私にとって、肩書きなどただの飾りに過ぎないのだから。

「ミオ君、少し休憩にしないか」

 お昼時、温かい紅茶のカップを二つ持って、レイ部長――いや、新しく役員に就任したレイさんが私のデスクにやってきた。

「ありがとうございます、レイさん」

 私は笑顔でカップを受け取った。

 紅茶を一口飲むと、あの毛むくじゃらのおつまみが一瞬だけフワリと姿を現し、私の微かな疲労を吸い取って消えていった。もう、私の心に大きな澱が溜まることはない。

 レイさんは隣の椅子に座り、窓の外に広がる青空を眩しそうに見つめた。

「君のおかげで、この会社は救われた。僕自身も、終わりのない権力闘争から解放されたよ。すべては、君が過去の記録を慈しみ、真実を繋ぎ合わせてくれたからだ」

「私はただ、パズルを完成させただけですよ。それに、最後に助けてくれたのはレイさんですから」

 私がそう答えると、彼は真剣な眼差しで私に向き直った。

「ミオ。君は地位も名誉も欲しがらない。ただ他者を想い、日々のささやかな仕事に幸せを見出している。その美しく尊い心を、僕は心から愛している」

 彼はそっと私の手を取り、その大きな手で優しく包み込んだ。

「君のそのささやかな幸せを、どうか生涯、僕に守らせてほしい」

 それは、冷徹なエースとして恐れられていた男の、あまりにも不器用で、真摯な愛の告白だった。

 私の胸の奥に、澱とは違う、温かく甘い感情がじんわりと広がっていく。

「……はい。喜んで」

 私は微笑みながら、深く頷いた。

 出世争いも、理不尽なマウントも、もうここにはない。

 愛する人に守られながら、過去の先人たちが遺した命のバトンを未来へと繋いでいく。日々の穏やかな仕事と、他者を想う温かな心。

 私がたどり着いた『現世での至高の幸せ』は、この明るいオフィスの中で、これからもずっと静かに輝き続けるのだった。

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